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知るコレ!

貧困解消へ 就業を支援 グラミン日本

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 新たに仕事(しごと)を始(はじ)めたくても生活が苦(くる)しくて、一歩を踏(ふ)み出せない人に「準備(じゅんび)のためのお金」を貸(か)す団体(だんたい)「グラミン日本」が9月、東京都(とうきょうと)で設立(せつりつ)されました。貧困(ひんこん)の解消(かいしょう)を目指(めざ)す社会的事業(しゃかいてきじぎょう)です。借(か)りたお金を返(かえ)す時に付(つ)く利子(りし)が安(やす)く、万が一返せなくても代(か)わりに差(さ)し出す担保(たんぽ)は必要(ひつよう)ありません。バングラデシュで女性(じょせい)らを支援(しえん)する金融機関(きんゆうきかん)の日本版(ばん)です。仕組みを取材(しゅざい)しました。 (辻紗貴子(つじさきこ))

低所得者に少額を貸し付け

 「グラミン日本」の支援(しえん)は、働(はたら)く意欲(いよく)と力がある低所得者(ていしょとくしゃ)らが対象(たいしょう)です。団体(だんたい)の拠点(きょてん)から1時間圏内(けんない)に住(す)んでいることも条件(じょうけん)です。

 借(か)り手は5人1組の互助(ごじょ)グループをつくり、毎週スタッフを交えたミーティングで報告(ほうこく)や情報交換(じょうほうこうかん)をします。それぞれが目指(めざ)す仕事(しごと)を始(はじ)められるよう、励(はげ)まし合い孤立(こりつ)を防(ふせ)ぐ目的(もくてき)です。

 融資(ゆうし)は初回(しょかい)は1人最大(さいだい)20万円まで。毎週少しずつ返(かえ)し、その状況(じょうきょう)などによって2回目以降(いこう)の内容(ないよう)が決(き)まります。グループで1人が返済(へんさい)できないと他(ほか)の人が借りにくくなる連帯責任(れんたいせきにん)もあります。お金は基金(ききん)や会費(かいひ)、寄付(きふ)などが原資です。

 自分で仕事を創(つく)る「起業(きぎょう)」や経営(けいえい)への助言(じょげん)、協力(きょうりょく)団体を通じた就業(しゅうぎょう)の機会(きかい)などが提供(ていきょう)されます。グラミン日本理事長(りじちょう)の菅正広(かんまさひろ)さん(62)は「小商(こあきな)いをしやすい社会にしたい」と話します。

 バングラデシュの「グラミン銀行(ぎんこう)」は、経済(けいざい)学者のムハマド・ユヌス博士(はかせ)が1983年に設立(せつりつ)した金融機関(きかん)。起業などにより貧困(ひんこん)から抜(ぬ)け出す手助(てだす)けを目的に、信頼(しんらい)に基(もと)づいて少額(しょうがく)のお金を貸(か)し付(つ)ける「マイクロファイナンス」を手掛(てが)けます。既存(きそん)の金融機関からお金を借りられなかった人たちを救(すく)う取(と)り組みで、2006年にノーベル平和賞(へいわしょう)を受賞(じゅしょう)しました。アメリカなどにも進出(しんしゅつ)しています。

 財務省(ざいむしょう)や発展途上国(はってんとじょうこく)の開発(かいはつ)を支援する世界(せかい)銀行で働いた経験(けいけん)がある菅さんは、「貧困は、失業(しつぎょう)や病気(びょうき)、離婚(りこん)などで誰(だれ)にでも起(お)こりうること」と指摘(してき)します。日本でも経済格差(かくさ)は広がり、15年の厚生労働(こうせいろうどう)省の調査(ちょうさ)によると、国民(こくみん)の約(やく)6人に1人にあたる約2000万人が貧困状態(じょうたい)で生活しています。銀行からお金を借りられない低所得の人らが、高金利(こうきんり)の消費(しょうひ)者金融などに頼(たよ)らざるを得(え)ず、さらに貧困から抜け出せなくなる事態(じたい)も起きています。「貧困の解消(かいしょう)へ、マイクロファイナンス機関が日本にも必要(ひつよう)とされています」と訴(うった)えます。

 17年にユヌス博士と日本での団体設立に合意し、賛同(さんどう)する仲間(なかま)も集(あつ)まり、現在(げんざい)は支援を受(う)ける人を募(つの)っています。菅さんは「いずれ貧困のない社会になり、解散(かいさん)することが目標(もくひょう)です」と笑顔(えがお)で話しました。

シングルマザーの選択肢に

 日本の貧困(ひんこん)の特徴(とくちょう)は、1985年以降(いこう)、1人親世帯(せたい)の過半数(かはんすう)が貧困状態(じょうたい)にあるという点です。特(とく)にシングルマザー世帯の割合(わりあい)が高くなっています。女性(じょせい)の賃金(ちんぎん)が男性より低(ひく)い傾向(けいこう)がある上、子育(こそだ)て中であることが就職(しゅうしょく)に不利(ふり)な場合もあるのです。

 日本シングルマザー支援協会(しえんきょうかい)(神奈川県横浜(かながわけんよこはま)市)の代表理事(だいひょうりじ)・江成道子(えなりみちこ)さん(50)は「子育て中は物事(ものごと)が予定通(よていどお)り進(すす)みません。なのに社会や企業側(きぎょうがわ)は理解(りかい)が足りず『社会人として当然(とうぜん)』と要求(ようきゅう)をして、対応(たいおう)できずに自信(じしん)をなくす人もいる。互(たが)いの認識(にんしき)の違(ちが)いを知ることは大切です」と指摘(してき)します。

 では、シングルマザーが起業(きぎょう)するのに、どんな課題(かだい)があるのでしょうか?

 埼玉(さいたま)県に住(す)む杉山真由美(すぎやままゆみ)さん(44)は、長女が2歳(さい)の時に離婚(りこん)し、2007年に広告(こうこく)デザイン関連(かんれん)の会社を設立(せつりつ)。離婚前は夫婦(ふうふ)で飲食店(いんしょくてん)を開(ひら)いていましたが、独身時代(どくしんじだい)の仕事(しごと)の経験(けいけん)を生かそうと考えました。「営業(えいぎょう)や経営(けいえい)を軌道(きどう)に乗(の)せるための知識(ちしき)がなかった」と、当初(とうしょ)の苦労(くろう)を振(ふ)り返(かえ)ります。

 現在(げんざい)はウェブ制作(せいさく)などの会社を経営しています。「残業(ざんぎょう)などが難(むずか)しいシングルマザーにとって、起業は実(じつ)は良(よ)い選択肢(せんたくし)。子どもとの時間を犠牲(ぎせい)にせず、収入(しゅうにゅう)を得(え)られました」と話します。グラミン日本の取(と)り組みに「当時あったら自分も相談(そうだん)したかった。ちょっとした能力(のうりょく)でも、それを生かして起業しやすい社会になれば」と期待(きたい)を寄(よ)せました。

 

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