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知るコレ!

日本の研究力 年々低下 広がる危機感

「研究力(けんきゅうりょく)を上げるには研究の裾野(すその)を広げることが大切」と語る大隅良典(おおすみよしのり)さん=神奈川県横浜(かながわけんよこはま)市緑区(みどりく)の東京工業(とうきょうこうぎょう)大で

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 今年のノーベル賞(しょう)は、京都(きょうと)大特別教授(とくべつきょうじゅ)の本庶佑(ほんじょたすく)さん(76)が、がんの治療法(ちりょうほう)である免疫(めんえき)療法を確立(かくりつ)した業績(ぎょうせき)で医学(いがく)生理学賞に決(き)まりました。最近(さいきん)は化学(かがく)や物理(ぶつり)学賞も含(ふく)め日本人の科学者(かがくしゃ)の受賞(じゅしょう)が多いですが、今後は減(へ)ると予測(よそく)されています。理由(りゆう)は日本の研究力(けんきゅうりょく)の低下(ていか)。データを見ながら課題(かだい)も探(さぐ)りました。 (芦原千晶(あしはらちあき))

 日本人でノーベル賞(しょう)を受(う)けたのは26人。自然科学系(しぜんかがくけい)は23人で、18人が2000年以降(いこう)の受賞(じゅしょう)。快進撃(かいしんげき)が続(つづ)いています。

 10月1日、ノーベル賞が決(き)まった時の会見で本庶(ほんじょ)さんは語りました。「生命(せいめい)科学はほとんど何も分かっていない。もっともっとたくさんの人にチャンスを与(あた)えるべきだ」。まだまだ多くの発見(はっけん)が生まれそう、と思った人もいたでしょう。

 けれども実際(じっさい)には、日本の研究力(けんきゅうりょく)の低下(ていか)を示(しめ)すデータがこの夏に発表(はっぴょう)され、危機感(ききかん)が広がっています。

 国の科学技術(ぎじゅつ)・学術政策(せいさく)研究所(じょ)が出した「科学技術指標(しひょう)2018」によると、研究の成果(せいか)を発表する自然科学系の論文(ろんぶん)の数がこの10年で減(へ)り、国別(くにべつ)の順位(じゅんい)も中国(ちゅうごく)やドイツに抜(ぬ)かれ、2位から4位に下がりました。注目度(ちゅうもくど)の高さで上位10%に入る論文に限(かぎ)ると、順位は4位から9位へさらに落(お)ち込(こ)んでいます。

 また、研究者(しゃ)になる人の多くは大学を出て大学院(だいがくいん)に進(すす)み、研究や勉強(べんきょう)を重(かさ)ねて博士号(はくしごう)を取(と)ります。国内の博士号取得(しゅとく)者の数は14年度で約(やく)1万5000人ですが、06年度をピークに減少傾向(げんしょうけいこう)です。人口100万人あたりの取得者数は14年度が118人で、08年度より13人減。アメリカやイギリス、中国、韓国(かんこく)などで、この6年に増(ふ)えているのとは対照的(たいしょうてき)です。

 原因(げんいん)は何でしょうか。

 指摘(してき)されているのは、日本の研究(けんきゅう)を引っ張(ぱ)ってきた国立大に、国が配(くば)る運営費交付金(うんえいひこうふきん)が減(へ)っていること。2004年から毎年1%ずつ減り、この14年で1割以上(わりいじょう)減りました。そのため大学は人件(じんけん)費を削(けず)らざるを得(え)ず、研究者(しゃ)は数が減り、任期付(にんきつ)きという不安定(ふあんてい)な雇(やと)われ方も増(ふ)え、研究者を目指(めざ)す人が減ったといいます。国は研究者が成果(せいか)やアイデアを競(きそ)い、審査(しんさ)に通れば配られるお金を増やしてきましたが、研究者は申請(しんせい)や報告(ほうこく)などの仕事(しごと)に追(お)われ、じっくり研究する時間が減ったことも一因とされます。

 国立大学協会(きょうかい)の山極寿一(やまぎわじゅいち)会長は今月、「国は交付金を減らしながら研究力を上げようとしてきたが、落(お)ちた。この間違(まちが)いを認(みと)めないのはおかしい」と憤(いきどお)り、今後はさらに研究力が低下(ていか)すると危(あや)ぶみました。

 「このままではノーベル賞受賞(しょうじゅしょう)者は出なくなる」。16年に医学(いがく)生理学賞を受(う)けた東京工業(とうきょうこうぎょう)大栄誉教授(えいよきょうじゅ)の大隅良典(おおすみよしのり)さん(73)も言います。約(やく)30年前、多額(たがく)ではないけれど継続的(けいぞくてき)な研究費があったおかげで、ノーベル賞につながる基礎(きそ)的な研究が始(はじ)められたそうです。「研究力を上げるには多様(たよう)な研究者にそこそこの研究費を渡(わた)し、研究の裾野(すその)を広げることが大切。今は長期(ちょうき)的な課題(かだい)に取(と)り組みづらく、研究を楽しめなくなっている」と憂(うれ)えます。

 「そもそも、研究者は不思議(ふしぎ)だな、面白(おもしろ)いなと思うテーマを好(す)きなだけ追究(ついきゅう)でき、こんなに楽しいことはない。世(よ)の中には分からないことがたくさんある。分からないことが分かるって素晴(すば)らしいこと」とも。研究者を志(こころざ)す子どもたちに助言(じょげん)もくれました。

 「興味(きょうみ)のあることを大切に。どうして花が赤いのかなとか疑問(ぎもん)を持(も)った時、ネットで知識(ちしき)を得るのでなく、問(と)いを大事(だいじ)に持ち続(つづ)けて考えることが、研究力を身(み)に付けることにつながります」

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