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知るコレ!

多様な文化 対応に議論 タトゥー

 「タトゥー(入れ墨(ずみ))」は、皮膚(ひふ)に傷(きず)を付(つ)けて色素(しきそ)を入れ、文様(もんよう)や図柄(ずがら)を描(えが)くことです。古くから存在(そんざい)していましたが、日本では良(よ)くない印象(いんしょう)を持(も)たれることが多く、一方で、最近(さいきん)は外国人らが肌(はだ)に施(ほどこ)しているのを目にする機会(きかい)も増(ふ)えています。抵抗感(ていこうかん)の背景(はいけい)や共存(きょうぞん)への取(と)り組みを取材(しゅざい)しました。 (辻紗貴子(つじさきこ))

抵抗強い日本 海外は広がり

 現在(げんざい)の日本では、タトゥーは暴力団関係者(ぼうりょくだんかんけいしゃ)と関連(かんれん)づけて考えられることが多く、抵抗感(ていこうかん)を抱(いだ)く人もいます。来年日本で開催(かいさい)されるラグビーワールドカップに向(む)け、競技(きょうぎ)の国際統括団体(こくさいとうかつだんたい)は参加選手(さんかせんしゅ)らに、公共(こうきょう)のジムなどではタトゥーを隠(かく)すよう求(もと)めました。

 歴史的(れきしてき)には、どう受(う)け止められてきたでしょう。「イレズミと日本人」の著者(ちょしゃ)で都留文科(つるぶんか)大教授(きょうじゅ)の山本芳美(やまもとよしみ)さん(50)によると、江戸時代(えどじだい)に入れ墨(ずみ)は刑罰(けいばつ)の一つとして行われましたが、一方で、職人(しょくにん)らの間では流行(りゅうこう)しました。粋(いき)でかっこよかったのです。一転(いってん)、明治(めいじ)に入り鎖国(さこく)を終(お)えて多くの外国人がやってくると、「文明国」としての体面(たいめん)を保(たも)とうと、政府(せいふ)は公共の場で裸(はだか)になることや、入れ墨の彫師(ほりし)、客(きゃく)らを取(と)り締(し)まりました。それで良(よ)くない印象(いんしょう)が強くなったといいます。

 しかし「タトゥーが『暴力団』につながるイメージは比較(ひかく)的新しく、一九六三年から約(やく)十年間続(つづ)いた任侠映画(にんきょうえいが)ブームの影響(えいきょう)が大きい」と山本さんは指摘(してき)します。「やくざ者(もの)」を視覚(しかく)的に表現(ひょうげん)する記号(きごう)として入れ墨が使(つか)われたのです。九二年の暴力団対策法施行以降(たいさくほうしこういこう)、入浴施設(にゅうよくしせつ)などでタトゥーのある人の入場を規制(きせい)する動(うご)きが広がります。ファッションなどでタトゥーを入れる若者(わかもの)らも増(ふ)えましたが、入浴施設などで周(まわ)りの客(きゃく)から苦情(くじょう)が出ることも。「嫌(きら)い、怖(こわ)いという感覚(かんかく)だけで排除(はいじょ)しても良いという空気になっている」と警鐘(けいしょう)を鳴らします。

 海外の状況(じょうきょう)はどうでしょうか。アメリカの調査(ちょうさ)会社ハリスポール社による、二〇一五年の成人(せいじん)二千二百二十五人を対象(たいしょう)にした統計(とうけい)では、十人中三人がタトゥーを一つは入れているという結果(けっか)が出ています。

 また、タトゥーの伝統(でんとう)があるニュージーランドの先住民族(せんじゅうみんぞく)マオリは「自分たちの文化(ぶんか)を取り戻(もど)す」という意識(いしき)でしている人もいるそうです。

 ただ、未成年(みせいねん)者には日本の多くの自治体(じちたい)が条例(じょうれい)などで禁止(きんし)しています。「簡単(かんたん)には消(け)せませんし、現状では不利益(ふりえき)も被(こうむ)ります」。その上で、二〇年の東京五輪(とうきょうごりん)を控(ひか)え海外との交流(こうりゅう)も深(ふか)まる今、「タトゥーとの関(かか)わりを、しっかり話し合い対応(たいおう)する時では」と山本さんは提言(ていげん)します。

入浴施設規制 見直す動きも

カプセルホテルの入り口付近(ふきん)にある看板(かんばん)。タトゥーがある人も利用(りよう)できると示(しめ)し、暴力団関係者(ぼうりょくだんかんけいしゃ)らの利用は禁(きん)じる=東京都杉並区(とうきょうとすぎなみく)の安心(あんしん)お宿(やど)プレミア荻窪店(おぎくぼてん)で(同社提供(ていきょう)) 

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 「タトゥー(入れ墨(ずみ))お断(ことわ)り」と規制(きせい)している入浴施設(にゅうよくしせつ)は多く、その対応(たいおう)が議論(ぎろん)を呼(よ)んでいます。タトゥーのある外国人客(きゃく)が日本観光(かんこう)の目玉でもあるお風呂(ふろ)の利用(りよう)を断られることもあるのです。こうした行き違(ちが)いをなくそうと作られたのが、タトゥーがある人も受(う)け入れる入浴施設などの検索(けんさく)サイト「Tattoo(タトゥー) Friendly(フレンドリー)」です。運営(うんえい)する川崎美穂(かわさきみほ)さん(45)によると、規則(きそく)があるのは一般公衆浴場(いっぱんこうしゅうよくじょう)に分類(ぶんるい)される銭湯(せんとう)ではなく、民間(みんかん)の日帰り温泉(おんせん)などです。「多様(たよう)な人が住(す)む社会のあり方を見直すきっかけになれば」と願(ねが)います。

 訪日(ほうにち)外国人客を目的(もくてき)に「タトゥーOK(オーケー)」と打(う)ち出したのは、共同(きょうどう)浴場を併設(へいせつ)するカプセルホテル「安心(あんしん)お宿(やど)」。入り口付近(ふきん)に、タトゥーがある人も利用できると伝(つた)える看板(かんばん)があります。運営会社の松田一宏(まつだかずひろ)さん(45)によると、二〇一六年に荻窪店(おぎくぼてん)(東京都(とうきょうと))から始(はじ)め、現在(げんざい)は都内四店舗(てんぽ)と京都(きょうと)の店舗でも実施(じっし)し、今までトラブルや苦情(くじょう)などはないそうです。「タトゥーの有無(うむ)や国籍(こくせき)を問(と)わず良(よ)いサービスを提供(ていきょう)していきたい」

 「CAXEL(カクセル)」=静岡県藤枝(しずおかけんふじえだ)市=は、医療(いりょう)用の素材(そざい)を使(つか)い、衛生面(えいせいめん)などを考慮(こうりょ)したタトゥー隠(かく)し専用(せんよう)シール・フィルムを製造(せいぞう)しています。開発(かいはつ)のきっかけは、代表(だいひょう)の赤堀宏(あかほりひろし)さん(41)が美容師(びようし)をしていた時に、タトゥーのあるお客さんから「子どもと一緒(いっしょ)にプールに入れない」と聞いたこと。専用シールで隠せば利用できる施設もあるため、「共有(きょうゆう)する場でお互(たが)い配慮(はいりょ)するためのつなぎ役(やく)になれば」と話しました。

タトゥーを隠(かく)すフィルム(CAXEL(カクセル)提供)

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