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知るコレ!

身近なもので心身鍛錬 パルクール

 フランス発祥(はっしょう)の心身(しんしん)を鍛(きた)える訓練(くんれん)「パルクール」を知っていますか? 体一つで壁(かべ)をよじ登(のぼ)ったり、高い場所(ばしょ)から、体を回転(かいてん)させながら飛(と)び降(お)りたり、まるで忍者(にんじゃ)のようです。昨年(さくねん)、2020年東京五輪(とうきょうごりん)の新種目(しんしゅもく)の候補(こうほ)に名が挙(あ)がりました。パルクールとは一体…? (大沢悠(おおさわはるか))

 滑(すべ)り台のような斜面(しゃめん)を駆(か)け上がったり、大人の腰(こし)ほどの高さの障害物(しょうがいぶつ)を走って跳(と)び越(こ)えたり。

 東京都内(とうきょうとない)のパルクール専用(せんよう)ジム「MISSION(ミッション) PARKOUR(パルクール) PARK(パーク) TOKYO(トウキョウ)」では、小中学生の男の子や社会人の女性(じょせい)が、体の動(うご)く限界(げんかい)を少しでも広げようと汗(あせ)を流(なが)していました。

 「身(み)の回りにあるものを使(つか)って自分の心や体を鍛(きた)えるトレーニングの文化(ぶんか)です」と、日本で先駆(さきが)けて普及活動(ふきゅうかつどう)をしてきた荒本英世(あらもとひでよ)さん(32)=広島(ひろしま)市=は説明(せつめい)します。自分や他人(たにん)の体を傷(きず)つける行為(こうい)は認(みと)められていませんが、それ以外(いがい)のきまりはありません。鍛錬(たんれん)によってより早く、より遠くへ、より高く、体を動かせるようになれば、自由(じゆう)を得(え)られるというのです。

 荒本さんが「文化」と言っているのは、動きだけでなく、精神性(せいしんせい)を含(ふく)めて考えられているからです。鍛えた心と体は周(まわ)りの人の幸(しあわ)せに役立(やくだ)てる「利他(りた)の精神」で臨(のぞ)むという哲学(てつがく)があります。「考えが伴(ともな)っていない、自分のためだけにやるものはパルクールとはいえません」と指摘(してき)します。

 フランス軍(ぐん)の訓練(くんれん)が起源(きげん)とされます。訓練方法(ほうほう)が世代(せだい)を超(こ)えて受(う)け継(つ)がれ、1980年代後半から90年代半ばにかけ、身体能力(しんたいのうりょく)が高まる充実感(じゅうじつかん)や考え方が支持(しじ)され、若者(わかもの)たちを中心に、広くストリート文化として根付(ねづ)きました。自信(じしん)を持(も)ち自己肯定感(じここうていかん)を養(やしな)う機会(きかい)にもなるとして、少年院(しょうねんいん)などで自立を学ぶプログラムにも取(と)り入れられているそうです。インターネットの普及(ふきゅう)で動画(どうが)が見られるようになり、今ではイギリス、アメリカなど各地(かくち)に広がっています。

 日本で広く知られるようになったのは2000年代初(はじ)め。実在(じつざい)するパルクールを実践(じっせん)する集団(しゅうだん)を題材(だいざい)にしたフランス映画(えいが)「YAMAKASI(やまかし)」が公開(こうかい)されたのがきっかけです。映画では、YAMAKASIと呼(よ)ばれる集団が、高層(こうそう)ビルをよじ登(のぼ)ったり、ビルとビルの間を跳んで渡(わた)ったりして街(まち)を駆(か)け巡(めぐ)ります。

 とはいっても、初心者(しょしんしゃ)にはいきなりできません。荒本さんは「身の丈(たけ)を超えたことをしてスリルを楽しむものではありません」と強調(きょうちょう)します。段階的(だんかいてき)なトレーニングが必要(ひつよう)です。海外では死亡事故(しぼうじこ)や後遺症(こういしょう)の残(のこ)るけがの例(れい)もあり、正しく教わる場が求(もと)められます。

 国内では2017年に全(ぜん)日本パルクール連盟(れんめい)ができました。東京(とうきょう)や東海(とうかい)、中国(ちゅうごく)地方など7カ所(しょ)に拠点(きょてん)を置(お)き、正しい実践(じっせん)の普及(ふきゅう)に務(つと)めています。日本パルクール協会(きょうかい)(JPA(ジェイピーエー))のアンケートなどから、日常的(にちじょうてき)に2000人程度(ていど)が取(と)り組んでいると考えられています。

(1)棒(ぼう)を使(つか)って勢(いきお)いをつけ、手を放(はな)す (2)空中で回転姿勢(かいてんしせい)をとる (3)空中で横(よこ)回転する=いずれも東京都江戸川区(とうきょうとえどがわく)で

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 プロとして活躍(かつやく)する人もいます。「パルクールアスリート」のZEN(ゼン)さん(25)は、映画(えいが)やミュージックビデオなどにも出演(しゅつえん)しています。取材(しゅざい)では、勢(いきお)いをつけて壁(かべ)を走る技(わざ)や、棒(ぼう)を使(つか)った回転(かいてん)技を披露(ひろう)してくれました)。ZENさんは「自分には何ができて何ができないかが分かるようになる。子どもたちが危険(きけん)を回避(かいひ)することを学ぶ機会(きかい)になる」と、教育(きょういく)に通じる一面(いちめん)があると話します。

 本来は得点(とくてん)や順位(じゅんい)を付(つ)けるものではありませんが、スポーツ競技(きょうぎ)として推(お)す動(うご)きもあります。国際体操(こくさいたいそう)連盟(FIG(エフアイジー))は昨年(さくねん)、東京五輪(ごりん)の新種目(しんしゅもく)競技に提案(ていあん)しました。採用(さいよう)はされませんでしたが、24年パリ五輪に向(む)けた提案も考えています。ZENさんは「競技として注目(ちゅうもく)されれば、結果(けっか)として文化(ぶんか)としてのパルクールも知ってもらえる」とさらなる広がりに期待(きたい)を寄(よ)せます。

 

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