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知るコレ!

計算で決める新方式に 重さの定義

計算で決める新方式に

 重(おも)さの単位(たんい)「キログラム」の定義(ていぎ)が来年5月、130年ぶりに変(か)わりそうです。今は、フランスで保管(ほかん)されている金属(きんぞく)の塊(かたまり)「国際(こくさい)キログラム原器(げんき)」を基準(きじゅん)にして、世界中(せかいじゅう)のはかりが調整(ちょうせい)されていますが、肝心(かんじん)の原器の重さに不確(ふたし)かさが確認(かくにん)されているのです。より確かな単位にするため、世界中の機関(きかん)が研究(けんきゅう)を重(かさ)ねてきました。今年11月の国際会議(かいぎ)で、新しい定義への移行(いこう)が正式(せいしき)に決(き)まる見通しです。 (佐橋大(さはしひろし))

 メートルやキログラムは、18世紀末(せいきまつ)、地球(ちきゅう)の大きさを基(もと)に作られました。1メートルは、北極(ほっきょく)と南極を結(むす)ぶ地球の周(しゅう)の長さの4000万分の1.1キログラムは一辺(ぺん)0.1メートルの立方体の水の重(おも)さです。それを変化(へんか)しにくい金属(きんぞく)で表(あらわ)したのが「国際(こくさい)メートル原器(げんき)」や「国際キログラム原器」です。1889年、国際社会の取(と)り決(き)めで、1メートル、1キログラムをそれぞれ国際原器の長さ、重さと定(さだ)めました。

 その後、1メートルは、より変(か)わらない定義(ていぎ)にするため、真空中(しんくうちゅう)をわずかな時間で光が進(すす)む距離(きょり)と定め直されましたが、重さの定義はそのままです。世界中(せかいじゅう)の国は、フランスにある「国際キログラム原器」のコピーを各国(かっこく)の原器として保管(ほかん)し、はかりの基準(きじゅん)にしています。

 人が作った物(もの)は、壊(こわ)れたり、変化したりします。変わりにくいように厳重(げんじゅう)に保管されている国際キログラム原器でも、重さが変化している可能性(かのうせい)が30年ほど前に分かりました。

 国際キログラム原器は約(やく)30年ごとに、各国の原器などと同じ重さであることを確(たし)かめる作業(さぎょう)をします。この際に、わずかな重さの違(ちが)いが認(みと)められたのです。その差(さ)は最大(さいだい)約50マイクログラム(マイクロは100万分の1)。どちらの重さが変わったのか、今の科学では突(つ)き止められません。原器でも、汚(よご)れの付着(ふちゃく)や洗浄(せんじょう)でごくわずかに重さが変わります。ずれは、指紋(しもん)1個(こ)の油脂(ゆし)の重さ程度(ていど)ですが、放置(ほうち)すれば、科学技術(ぎじゅつ)が進歩(しんぽ)した今の社会では、影響(えいきょう)が出かねません。原器に代(か)わる定義探(さが)しが始(はじ)まりました。

 科学者(かがくしゃ)たちは、変(か)わらない物(もの)として、物質(ぶっしつ)を構成(こうせい)する炭素(たんそ)などの原子の重(おも)さや数、それに関連(かんれん)する物理(ぶつり)の定数(ていすう)に着目(ちゃくもく)しました。最終的(さいしゅうてき)には、光のエネルギーや電子の重さに関(かか)わる物理の定数「プランク定数」を正確(せいかく)に割(わ)り出し、これを基(もと)に計算して1キログラムを定義(ていぎ)することにしました。

中を真空(しんくう)にして、物(もの)の重(おも)さを正確(せいかく)に量(はか)る装置(そうち)=茨城県(いばらきけん)つくば市の産業技術総合研究所(さんぎょうぎじゅつそうごうけんきゅうじょ)で

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 この定数を決(き)めるのに大きな貢献(こうけん)をしたのが、茨城県(いばらきけん)つくば市にある産業技術総合研究所(さんぎょうぎじゅつそうごうけんきゅうじょ)(産総研)。新たに1キログラムをどう定(さだ)めるかに取(と)り組んできた研究機関(きかん)の一つです。純度(じゅんど)の高いシリコンの結晶(けっしょう)で球体(きゅうたい)を作り、そこから原子と電子の重さを割り出して、プランク定数を高い精度(せいど)で計算したのです。

 まずは厳密(げんみつ)な測定(そくてい)です。球体の大きさはレーザー光を使(つか)った装置(そうち)で測(はか)り、そこに含(ふく)まれる膨大(ぼうだい)なシリコン原子の数を計算。球体の重さは、わずかに働(はたら)く空気の浮力(ふりょく)も排除(はいじょ)できるよう、真空(しんくう)の状態(じょうたい)で重さを量(はか)るてんびんで計測しました。

 球体の重さを原子の数で割れば、原子1個(こ)の重さが分かります。原子と電子の重さの比(ひ)は分かっているので、電子1個の重さも導(みちび)き出せました。

 各国(かっこく)が協力(きょうりょく)して定数を定めるのに使われた8つのデータのうち、4つに産総研が関わりました。

 新しい定義になると、国際原器(こくさいげんき)が不要(ふよう)になります。技術力のある国は、新しい定義を基に、自力で1キログラムの基準(きじゅん)になる物を何度でも作ることができます。新しい定義は、国際原器とずれないように決められるので、定義が変わっても、生活に影響(えいきょう)はないそうです。産総研の臼田孝(うすだたかし)・計量標準(けいりょうひょうじゅん)総合センター長は「これまでよりも計量の精度が高まります。それに伴(ともな)って、新たな技術やビジネスが誕生(たんじょう)するかもしれません」と話します。

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