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知るコレ!

「新しい食品」で注目 食用昆虫の産業化

食用昆虫(こんちゅう)を専門(せんもん)で扱(あつか)う「TAKEO(たけお)」の店舗(てんぽ)=東京都台東区(とうきょうとたいとうく)で

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 食べるための虫「食用昆虫(こんちゅう)」を扱(あつか)う企業(きぎょう)が国内で生まれています。インターネットや店頭で、料理(りょうり)の材料(ざいりょう)となる粉末(ふんまつ)や、菓子(かし)などが手軽(てがる)に手に入るようになりました。原料となる昆虫は主(おも)に海外で養殖(ようしょく)されていますが、国内でも養殖に挑戦(ちょうせん)する人たちが出てきています。食用昆虫の産業化(さんぎょうか)は進(すす)むのでしょうか。 (大沢悠(おおさわはるか))

 ガラス張(ば)りの引き戸を開(あ)けると、白を基調(きちょう)にした8畳(じょう)ほどの空間に間接照明(かんせつしょうめい)の光がこぼれます。木製(もくせい)の棚(たな)にはコオロギのパスタやバッタのスナック、タランチュラの缶詰(かんづめ)などがずらり。東京都台東区(とうきょうとたいとうく)にある食用昆虫(こんちゅう)を扱(あつか)う「TAKEO(たけお)」の店舗(てんぽ)です。「『想像(そうぞう)していた店構(みせがま)えと違(ちが)う。意外(いがい)』と言われます」と店長の三浦(みうら)みち子さんは笑(わら)います。

 同社は、代表(だいひょう)の斎藤健生(さいとうたけお)さん(33)が2014年に昆虫食専門(せんもん)の通販(つうはん)ショップとして立ち上げました。虫を食べるという「わくわく感(かん)や人を笑顔(えがお)にする魅力(みりょく)」に着目(ちゃくもく)したといいます。売れ行きが好調(こうちょう)だったため、今年4月、実際(じっさい)の店舗を開店(かいてん)。店を訪(おとず)れていた栃木県(とちぎけん)の大学3年の男性(だんせい)(20)は「友達(ともだち)にプレゼントします」とカイコのスナックを購入(こうにゅう)しました。原料(げんりょう)となる昆虫は、虫を食べる文化(ぶんか)があるタイなど主(おも)に海外で養殖(ようしょく)されています。三浦さんは「自社で養殖をする考えもあるけれど、まずは市場開拓(かいたく)から」と説明(せつめい)します。

 「牛や豚(ぶた)の市場は数兆(ちょう)円規模(きぼ)。昆虫が一部(いちぶ)を代用できれば、潜在的(せんざいてき)に1兆円規模の市場がある」と、大阪(おおさか)府和泉(ふいずみ)市にある「昆虫食のentomo(えんとも)」社長の松井崇(まついたかし)さん(38)は需要(じゅよう)の高まりを見据(みす)えます。17年、食用昆虫の輸入(ゆにゅう)や製造(せいぞう)販売をする同社をつくりました。

 背景(はいけい)にあるのは世界(せかい)的な人口増加(ぞうか)と食料対策(たいさく)です。国連食糧農業機関(こくれんしょくりょうのうぎょうきかん)(FAO(エフエーオー))は13年にまとめた報告書(ほうこくしょ)で、牛や豚などの家畜(かちく)の代(か)わりの食べ物(もの)として昆虫を推奨(すいしょう)し、注目(ちゅうもく)を集(あつ)めたのです。牛や豚を食べて人間が得(え)ている動物性(どうぶつせい)タンパク質(しつ)は、昆虫にも多く含(ふく)まれます。現在(げんざい)も主にアジア、アフリカ、南(みなみ)アメリカの少なくとも20億(おく)人が昆虫を食べ、その種類(しゅるい)はコガネムシなどの甲虫(こうちゅう)類や毛虫・芋虫(いもむし)類など1900以上(いじょう)です。

 松井さんは、今はカナダなどにある企業(きぎょう)が養殖した昆虫を輸入していますが、ゆくゆくは国内で生産(せいさん)から加工(かこう)までを手掛(てが)ける構想(こうそう)を描(えが)きます。

 昆虫(こんちゅう)に注目(ちゅうもく)するのは企業(きぎょう)だけではありません。人口が減(へ)る日本でも、「健康(けんこう)に役立(やくだ)つことが証明(しょうめい)されれば、新たな市場が生まれる可能性(かのうせい)がある」という徳島(とくしま)大生物資源産業学部(せいぶつしげんさんぎょうがくぶ)の三戸太郎准教授(みとたろうじゅんきょうじゅ)(46)らは、実験(じっけん)用に飼(か)っていたコオロギが食用になると知り、飼育装置(しいくそうち)を開発(かいはつ)。糖尿病(とうにょうびょう)との関係(かんけい)など効能(こうのう)にも着目(ちゃくもく)します。埼玉(さいたま)大の長嶺拓夫(ながみねたくお)教授(54)は今春からトノサマバッタの養殖(ようしょく)を始(はじ)めました。専門(せんもん)は機械力学(きかいりきがく)。「大量生産(たいりょうせいさん)となれば機械の出番もあるかも」と話します。

 牛や豚(ぶた)などの家畜(かちく)に比(くら)べ、少ない飼料(しりょう)で養殖できるのが利点(りてん)です。肉1キロを生産するのに必要(ひつよう)な飼料は、昆虫の肉なら2キロですが、牛肉は8キロと4倍(ばい)です。三戸准教授は「牛などの家畜より、昆虫は養殖の空間もコストも減らせる」と説明(せつめい)。消費者(しょうひしゃ)に受(う)け入れられ、生産体制(たいせい)も整(ととの)えば、今は低(ひく)い日本の食料自給率(じきゅうりつ)を上げられるのではと期待(きたい)します。

 ヨーロッパではフランスやオランダなどで、昆虫養殖業者らによる団体(だんたい)が生まれました。欧州連合(おうしゅうれんごう)(EU(イーユー))は1月、「新しい食品(しょくひん)」として食用昆虫の域内(いきない)での取引(とりひき)の自由化(じゆうか)に踏(ふ)み切り、今後ますます食用昆虫は世界(せかい)に広がりそうです。一方で、アレルギーなど人間の健康面(めん)への影響(えいきょう)の有無(うむ)が懸念(けねん)されます。FAO(エフエーオー)は、消費者の信頼(しんらい)を得(え)るための衛生的(えいせいてき)な生産加工方法(かこうほうほう)や、品質管理基準(ひんしつかんりきじゅん)を設(もう)けるなどの課題(かだい)も指摘(してき)します。

 とはいえ、気になるのは味(あじ)。昆虫料理研究家(けんきゅうか)の内山昭一(うちやましょういち)さん(67)は「日本は昔(むかし)から虫を食べる文化があります。旬(しゅん)の虫は滋味深(じみぶか)いごちそう」と太鼓判(たいこばん)を押(お)します。一口いかがでしょう。

カイコや甲虫(こうちゅう)の幼虫(ようちゅう)が原料(げんりょう)のスナック菓子(がし)

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