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<西濃あるある> 関ケ原・野上 地下水集める「マンボ」

◆横井戸 まるで坑道? 農業遺産「残していきたい」

 垂井町には、江戸時代に農業用水の取水施設として掘られた「マンボ」が今でも残っています。(垂井町、50代女性)

 マンボ? ラテン音楽のマンボなら知らなくはないけれど、農業用水の取水施設ときた。一体どんなものなのか。名前の由来は何なのか−。そんな折、情報があった垂井町の隣、関ケ原町野上自治会から「マンボの勉強会があります」との案内。カメラを抱え、車を走らせた。(芝野享平)

かつて使われていたマンボの出口に立つ河合さん。マンボは出口から掘り進めたという=関ケ原町野上で

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 向かった先は、野上地区を東西に走る国道21号関ケ原バイパスとJR東海道線の間。マンボはこれらにほぼ並行して掘られているという。最大で長さが一キロとのことだが、どこにあるのかさっぱり分からない。

 「ここからマンボがのぞけます」。案内役の西本悦夫さん(76)らが鉄板を横にずらす。深さ六メートルほどに掘られた縦穴が姿を現した。石積み構造のようだ。

 手渡された資料によると、マンボの仕組みはこう。

 地下数メートルに緩やかな傾斜のある直径七十センチほどの横穴を掘り、地表からの浸透水を集めて水田に流す−。

 いわば横井戸。縦穴は、横穴を手作業で掘った際の土を取り出したり、空気を取り込んだりするために、所々に設けられたという。

 では、なぜ、この地にマンボが造られたのか。

 どうも、垂井、関ケ原両町の地勢が背景にあるようだ。扇状地の扇央部に位置する両町は、水が地下に浸透して伏流しやすく、元来、飲料水や農業用水の確保が難しかった。江戸末期になって、同じような地勢の伊勢や越前からマンボを掘る技術が伝わると、昭和初期にかけ、長さ二十メートルから一キロの規模まで、百五十本ほどが造られたそうだ。

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 野上地区のマンボは、明治時代末期から大正時代にかけて掘られたといい、雨が少ない時季など地下水が少ないときも流れが絶えないように、近くの相川やため池からの取水口も備えられている。今も現役で、水田十ヘクタールを潤している。

 地元農家に話を聞くと、先人が手掛けた工事は相当過酷だったようだ。

 「手作業だったので、一日に二、三メートル掘るのが限界。一キロ掘るのに八年かかった」「素掘りなので、土が崩れ始めたらすぐに外に出ないと、生き埋めになってしまった」

 それからおよそ百年。野上地区のように現役バリバリなのは少数派。多くは水道の普及や農地の減少とともに役目を終えていった。

 なるほど、仕組みや歴史は、少しずつ分かってきたが、名前の由来を突き止めないと、すっきりしない。

 「間府(まぶ)、からきていると言われています」とは野上自治会長の河合弘さん(71)。間府とは、鉱山の坑道のこと。形が似ていることから「マブ」がやがて「マンボ」となったのだそうだ。正直、少し拍子抜けした。

     ◇

 今回の勉強会に参加したのは、森林環境を研究する学生や、垂井町で地域資源を活用したまちづくりに取り組むNPO法人「泉京(せんと)・垂井」。意見交換会では「関ケ原の戦いに負けない歴史のある施設」「周辺には貴重な生物もいるはず。さらに調査したい」などの声が上がった。

 県森林文化アカデミー(美濃市曽代)で森林環境教育を研究する菊池拓也さん(28)は「長さ一キロの横井戸をたった一メートルの勾配で造った技術や、地震などを乗り越えて今も残っていることに驚いた。農業用水として以外にも周辺の自然環境への影響なども調べて残していくべきだ」と話した。

 勉強会で解説役を務め、マンボの水で米や野菜を育てている高木人見さん(83)は「マンボへの町外の人の意見が聞けて良かった。水は生きていく上で何よりも必要なもの。きれいな水を与えてくれる農業遺産を残していきたい」と願った。

 水に乏しい土地の下を脈々とたどり、絶え間なく田畑を潤すマンボの水。地域の農業を支えてきたその力強さは、きっとラテン音楽の情熱的なリズムにも負けていない。

    ◇

 西濃では当たり前でも、他の地域では知られていない常識や文化・習慣、街の情報、あるいは故郷の自慢といったトリビア「西濃あるある」を読者の皆さんに募ったところ、インターネットの「中日ボイス」やメール、はがきで計八十二件の情報が寄せられました。

 今回の「マンボ」に続き、今後も記者が現場へ赴き、由来などを調べ、随時、紙面で紹介していきます。

 「西濃あるある」に採用された方には、図書カード(千円分)をプレゼントします。応募は、住所、名前、連絡先を明記し、〒503 0893 大垣市藤江町6の82の4 中日新聞大垣支局へ。ファクス0584(74)6460、メール(oogaki@chunichi.co.jp)でも受け付けます。

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