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続「共同親権の展望」(下)海外の厳しい目 早川昌幸(読者センター)

 フランスの人権派弁護士ジェシカ・フィナーリさんの法律事務所(パリ)は今年八月、国連の人権理事会(HRC)に対し、「日本の“実子誘拐”が重大な人権侵害に当たる」と申し立て、受理された、と発表した。

◆実子連れ去りを非難

 フィナーリ弁護士らは、NPO法人「絆・チャイルド・ペアレント・リユニオン」(東京)の推計データを基に「毎年十五万人の子どもたちが、片方の親によって不法に連れ去られ、子どもの最善の利益という基本的人権が尊重されていない」と非難した。九月二十日には、同じ事務所のフランソワ・ジムレ弁護士(元人権担当フランス大使)が、フランス人で当事者の一人、ビンセント・フィショーさんとともに参院法務委員会のメンバーを訪ね、連れ去りの“被害”を訴えた。

 フィショーさんは一年前、東京・世田谷の自宅に帰ってくると、日本人の妻と三歳の息子、十一カ月の娘が姿を消していた。フィショーさんによると、「離婚の示唆」はしたが、具体的な話し合いは何も進んでいなかった、という。

 ことし六月、来日中のマクロン大統領がフランス大使館で日本国内の当事者と面会。親としての悲痛な思いを共有し、後日、夕食を共にした安倍晋三首相にこの問題について述べた。今回の一行の国会訪問は、それを踏まえての行動という。

 欧米で主流の「共同親権」は、離婚後も父母の双方が養育・監護に責任を持つことが、子どもの利益につながるとの考えに基づく。日本は二〇一四年、国際結婚の破綻時に子どもの連れ去りを防ぐハーグ条約に加盟したが、面会交流の実情は先進国の標準とはほど遠い。その元凶が「単独親権」とみられているのだ。自らの意見を表明できない幼子の場合、誰かが代弁しなければならないという「世界の常識」をあらためて国内でも共有する必要があるだろう。

 愛知県内の大手メーカー社員の男性(43)は「試行的面会交流」でたった三十分間、四歳の長女と〇歳の長男と触れ合ったきり、会えない状況が続く。

 父親側の弁護士によると、家裁調査官から裁判官あてに「父子交流の機会を設けることが相当と考える」との調査報告書が出たが、妻側の代理人弁護士は裁判所で「面会交流はしない。離婚したら会わせる」との一点張りだった。その主張に裁判官も疑問を投げ掛けているという。男性にとって救いになった娘からの手紙には、こうつづられている。「みんなでいたいよ」「かくれて ごめんね」「パパ だいすきだよう」

 米国の事情に詳しい棚瀬孝雄弁護士(76)によると、カリフォルニア州では「離婚または別居後も、両方の親が子育ての責任と権限を共有することが州の公共政策である」と宣言。面会交流について「頻回かつ定期的」と踏み込んだ内容を規定している。改正民法七六六条は面会交流の取り決めを定めたが、明示的な指針は与えられていない。

 一六年三月、千葉家裁松戸支部が夫を親権者とした「松戸判決」。後に、高裁で同居親を重視する従来の「継続性の原則」を踏襲し、妻が逆転勝訴し、最高裁も夫の上告を受理しなかったが、面会交流を相手方に幅広く認めた方を親権者とする「寛容性の原則」を適用した一審は、日本では「異例」と注目を集めた。

 一審家裁支部は「(親権者になった場合)妻に娘を年間百日会わせる」「その約束を破った場合は親権者変更に応じる」との夫の提案を評価し、夫を親権者とする判決を下したのに対し、二審東京高裁は「面会の重要性は高くない。年間百日の面会は近所の友達との交流などに支障が生ずる恐れがあり、子の利益になるとは限らない。子は妻との同居で順調に成長しており、妻が親権者として適当」と判示した。その後、妻は娘を夫に面会させることもなく、娘は父親と九年以上会えないでいるという。

 離婚後単独親権違憲訴訟の原告代理人・作花知志(さっかともし)弁護士は、再婚相手からの児童虐待事件を例に「親権者が一人に減ることで、侵害される子どもたちの基本的人権をどう守っていくのか」と問題提起し、「共同親権の導入後を見据え、子どもを守る諸施策の議論は、もう始めていなければならない」と訴える。

◆両方の親で見守りを

 外国特派員協会での会見をきっかけに、関心を持ったという米有力紙ワシントン・ポストのサイモン・デニヤ東京支局長は、日本の現状をこう危惧する。「子どもには両方の親に見守られる権利があるし、(危険な状態が生じないという前提で)片方の親がそれを拒む権利はないと思う。すべての西洋人の考えを代弁することは、もちろんできないが、多くの人が日本の問題点を同じように感じているのではないか」

 

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