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MONDAY経済

「五輪後遺症」心配しすぎ? 1984〜2016年開催地比較

◆ギリシャでGDP成長率急落、成熟国ではリスク限定的か 

 東京五輪・パラリンピック終了後は、景気が大幅に後退する−。そんな不安がささやかれている。確かに巨大イベントに向けた投資がなくなることは、景気への悪材料ともなりかねない。そこで、過去に夏季五輪を開催した国々の状況を振り返りながら、五輪の終了によって日本経済は打撃を受けるのか見通してみた。 (中野祐紀)

 「そろそろ景気と不動産価格は限界だろう? マンションを売って利益確定したい」。東京都を中心に投資用物件の売買を手掛ける不動産会社には昨秋ごろから、そんな電話が相次いでいるという。営業担当者はため息をつく。「五輪後に景気が崩れ、不動産価格も下落すると心配する人が多い。そんな空気に押されて、早くも価格が落ち始めた物件もあります」

 大会終了後、選手村の四千戸超をマンションとして販売するという計画も、顧客に「首都圏でマンションは供給過多」という不安を抱かせる一因になっているとみる。

 不安説の根拠の一つに挙げられるのが、二〇〇四年アテネ大会後のギリシャの財政危機だ。競技場や各種インフラの大規模整備が収束した開催翌年、実質国内総生産(GDP)成長率が急落。国際通貨基金(IMF)のまとめによると、〇八〜一三年にはマイナス成長に陥り、IMFから金融支援を受けるに至った。

▽過去の開催国 

 こうした「五輪後遺症」は、他の開催国でもあったのだろうか。五輪の商業化、大規模化が進んだとされる一九八四年米ロサンゼルス大会から、二〇一六年のブラジル・リオデジャネイロ大会までの米国(二回)、韓国、スペイン、オーストラリア、ギリシャ、中国、英国、ブラジルの八カ国を見てみよう=表。

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 大会翌年のGDP成長率は、スペインもマイナスだった。しかし、みずほ総合研究所の宮嶋貴之主任エコノミストは「一九九二年に英国のポンド暴落をきっかけに欧州通貨危機が発生し、主要国が一斉に金融引き締めを図った結果」と分析。「主因は『五輪ロス』ではない」と言い切る。

 その他の開催翌年に成長が鈍った国も、オーストラリアはITバブル崩壊、中国はリーマン・ショックなどと、五輪とは別の明確な理由がある。宮嶋氏は「経済は国際情勢などとの連動が相当に強く、五輪が大きく影響することはほとんどない」と言う。

▽山も谷も小さい

 となると、東京大会後の日本経済はどうだろうか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの中塚伸幸調査部長は「六四年の前回に比べて、今回は山が小さく、谷も小さい」とみる。前回はギリシャ同様に経済成長の途上にあったため、新幹線や高速道路網の整備などの巨額な投資があり、翌年の成長率は前年比3・3ポイント悪化の6・2%。「昭和四十年不況」といわれた。しかし、経済が成熟し、社会基盤が既に整っている状況下での今回は、前回ほどには五輪の影響を受けにくい。実際、日本同様に成熟国の英国は、開催前後三年間の成長率が1・6%から2・0%の間で推移し、大きな上振れも下振れもなかった。

 東京五輪で期待されることに、インバウンド(外国人訪日客)消費がある。東京都の試算では、国内外の参加者や観戦者らの五輪にまつわる消費額は約六千億円だ。しかし、政府の統計によると、二〇一七年の国内の家計消費支出は二百九十七兆円に上り、五輪関連で期待される六千億円は、その五百分の一にすぎない。中塚氏は「米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱の行方、消費税増税などの方が、はるかに大きなリスク」と見通す。

▽中部への影響 

 こうみると、中部経済への好影響もそれほど期待できないように思える。しかし、中京大経済学部の山田光男教授は「経済効果の大半は首都圏のもの」と断りながらも、「五輪は、ものづくり中部の技術のショーウインドーとなり得る」と指摘する。

 大会中は、トヨタ自動車の自動運転車両「e−Palette(イーパレット)」や燃料電池バス「SORA(ソラ)」など、さまざまな最先端技術が詰まった乗り物が都内で活躍しそうだ。ここに、山田教授は可能性を見いだす。「五輪は世界への窓。外国人へのアピールが成功すれば、輸出が増え、ひいては中部経済の長期的な発展につながる」と力を込めた。

東京五輪・パラリンピックで選手や大会関係者を送迎する「e−Palette」

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