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「イートイン脱税」横行 申告客任せ、運用に限界

 十月に消費税率が10%に引き上げられてから、二カ月が過ぎた。飲食料品などに適用される軽減税率が初めて導入され、コンビニなどの小売店では持ち帰りが8%、店内飲食が10%と税率が分けられたが、8%分しか支払わずに店内で飲食する事例が相次ぐ。「イートイン脱税」という言葉まで生まれており、業界団体は買い物客に適正な利用を呼び掛ける対応に追われている。

コンビニのイートインスペース。会計時に店内飲食を申告すると、税率10%が適用される=名古屋市西区で

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 JR名古屋駅近くのオフィスビルにあるローソン。店内のイートインコーナーには横長の机と十一席のいすがあり、昼食時には多くの人が利用する。十一月下旬の午後、サンドイッチを食べていたワイシャツ姿の男性(50)は「店内と持ち帰りで税率が違うことは知っている。レジで申告して10%分を支払った」と話した。

 一方で、持ち帰りの税率で利用する人も目立つ。別の男性会社員(47)は「税率の違いは何となく知っているけど、申告はしなかった」とチキンをほおばる。社会人一年目という男性(22)は「店員から何も聞かれなかったので」と話し、8%の税率で購入したアイスクリームを食べていた。

 国税庁の指針によると、コンビニでは買い物客が会計時に「イートインを利用する」と申告した場合に、店内飲食の10%税率を適用する。業務の負担が増えるのを避けるため、店内に申告を呼び掛ける掲示をすれば、店員は客に確認する必要はない、としている。

 日本フランチャイズチェーン協会(JFA)に加盟するコンビニ各社の店内には、業界統一の取り組みとして、イートインコーナーを利用する際にレジで申告するように呼び掛けるチラシが掲示されているが、まだ利用者には十分浸透していないのが現状だ。

 「実感として、店内飲食の申告をしているのは五割ほど」と明かすのは、名古屋市内の別の大手コンビニの男性店主。一日当たり約六百人が利用するイートインコーナーでは、増税直後から比べると申告をする人は増えてはいるものの、店側には注意する義務はなく黙認するしかない。

 「申告漏れ」が多ければ消費者の間で不公平感が強まるため、JFAは新たに店内放送による申告の呼び掛けを始めた。伊藤広幸専務理事は「増税前から国と打ち合わせをして準備を進めてきたが、お客さまへの周知活動については努力不足だった」と語る。

 スーパーもコンビニと同様に利用者からの申告が原則。全店舗のうち六割でイートインコーナーを備えるマックスバリュ東海(浜松市)も各店のレジ近くに申告を促すポップを掲げているが、神尾啓治社長は「すべての利用者に周知が進んでいるとは思っていない」と認める。十一月下旬から各店で店内放送を始め、周知徹底を目指している。

 こうした店側の努力が続くものの、名古屋市の税理士、米津晋次さんは「現状は申告するかどうか、買い物客の『倫理観』に委ねられている」と制度運用の難しさを指摘。「申告することを知らない人も多く、周知が進まなければ正直者がばかを見る状況が続く」と話している。

◆節約志向、食品以外落ち込み 駆け込み反動減、今回も

 今回の消費税増税は、5%から8%に上がった二〇一四年四月の前回に比べ、引き上げ幅が小さいことなどから、駆け込み需要や反動減は少ないと考えられていた。ただ、税率が8%のまま据え置かれた食品以外では増税後の消費の落ち込みがみられ、関係業界は警戒を強めている。

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 市場調査のインテージが全国五万人を対象に実施している「全国消費者パネル調査」によると、「食品・飲料」の増税前後の購入金額は、駆け込みも反動減も少なかった。一方、食品を除く「日用雑貨品」や「化粧品」「アルコール飲料」では駆け込み需要とともに反動減があり、十月〜十一月上旬は節約志向が進んだ一四年四月以降と同じ傾向で推移している。

 特に時計やブランド衣料品など高額商品で駆け込み需要があった百貨店では落ち込みが目立つ。大丸松坂屋百貨店を傘下に置くJ・フロントリテイリング(東京)の十月の百貨店売上高は前年同期比18・7%の大幅減。山本良一社長は「増税後から十一月下旬まで、前回と同じ動きで推移している」と注視する。

 内閣府が各業界からまとめた景気ウオッチャー調査によると、十月の現状判断指数(季節調整値)は、愛知、三重、岐阜、静岡県で三八・〇と、前月から八・六ポイントのマイナス。先行きに関して「必要な物以外は買わない状況が続く」(商店街)と悲観する声がある一方、「年末年始の需要がある」(スーパー)と今後の改善に期待する声もある。

 <軽減税率> 生活必需品の消費税率を一般の商品より低くして家計の負担を抑える制度。欧州などで例があり、10月1日の10%への増税に合わせて国内で初めて導入された。対象は外食・酒類を除く飲食料品や定期購読の新聞で、税率を8%に据え置いた。外食店での持ち帰り(テークアウト)は軽減税率の8%、小売店のイートインコーナーでの食事は10%になった。

(西山輝一)

 

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