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10年保管、返却はわずか 無縁遺骨

引き取り手がない無縁遺骨が納められている東山霊安殿に設けられた供養塔=名古屋市天白区で

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 名古屋市天白区の八事霊園の一角に設けられた納骨堂「東山霊安殿」には、行き場を失った無縁仏の遺骨が引き取り手を待ち続けている。窓のないコンクリートの壁に囲まれた薄暗い約40平方メートルの室内には、5列の整理棚に隙間なく並べられた桐箱(きりばこ)が、天井近くまで積み上げられていた。

 9月26日午後、霊安殿で3カ月に1度の定期法要が営まれた。施設を管理する市社会福祉協議会の職員3人が、出入り口近くに設けられた祭壇に手を合わせた。お経を上げ、法要は10分ほどで終了。市社協では定期法要に加え、年1回の慰霊祭を営んでいる。

 昨年度に市を通じて引き取った無縁遺骨は785体。増加傾向が続く中で、統計が残る1993年度以降、最多を更新した。担当の川隅友紀雄主事は「今後も増えていくだろう」と話す。

 近年目立つのが、経済的に余裕があっても、頼れる親族や縁者がいなくて孤独死し、遺骨の引き渡しができないケースだ。市社協によると、霊安殿に納骨されたうち、生前に生活保護を受け取っておらず、自宅や病院で亡くなった例は、90年代には年間で5件前後にとどまっていた。しかし、ここ10年で急増しており、昨年度は89件もあった。

 市社協は、保管場所を確保する目的もあり、預かってから10年を迎える無縁遺骨について、市を通じてあらためて遺族に引き取りを打診したり、官報で公告したりしている。「一度は拒んだ遺族であっても、10年という時間を経て、気持ちが変わることもある」。ただ、返却できるのはごく少数にとどまり、昨年度で27体。一方で、引き取られないまま無縁墓に合葬されたのは、690体に上った。

◆契約で身元保証、死後事務

 高齢単身世帯の増加を背景に、身元保証や安否の見守り、遺品の整理などのサポート事業を担う事業者が増えている。病院や施設に入る際の身元保証人や亡くなった時の遺体の引き取り手が見つからない高齢者の受け皿となっているが、契約を巡るトラブルも発覚。厚生労働省は利用者向けの手引書を作成して注意を呼び掛けている。

 厚労省によると、事業は「日常生活支援」「身元保証」「死後事務」の三つに分かれる。事業者は全国に数十〜100団体あるとみられるが、提供するサービスや地域は異なる。規模や料金設定もばらばらで、会費とは別に必要経費として「預託金」を求めるところもある。

 2016年1月には、東京都港区の公益財団法人「日本ライフ協会」が、預託金から2億7000万円を人件費などに流用、1億7000万円を不正に融資していたことが発覚。公益財団法人の認定を取り消された末に破産し、会員の一部に預託金が戻らないトラブルが起きた。死亡した会員から譲り受けた遺産を巡る脱税で摘発された業者もあった。

 こうした事案を受け、厚労省は17年度に業者の実態などを調査。今年8月、「『身元保証』や『お亡くなりになられた後』を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ」と題した手引書を作った。

 身元保証と死後事務の基礎知識や、起こりがちなトラブルの例を列挙。「何をしてほしいか明確化する」「何の契約をしているのか書面に残し、分かりやすいところに保管する」などのチェックポイントを箇条書きでまとめた。

 相談窓口として、地域包括支援センターや消費生活センターを紹介。消費者庁のホームページでも公開している。

 高齢者サポート事業に対し、行政による指導や監督を求める声もある。ただ厚労省の担当者は「特別な資格が必要な業種ではないため、届け出制度を設けると、かえって職業の自由を制限してしまう恐れがある」と説明。所管する官庁はなく、「現状では消費者側の意識を高めて被害を防ぐしかない」と話している。

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