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<学びの未来> イエナプラン公立小、広島県が開校へ

集会では平川理恵教育長(中央)が教員や保護者らと積極的に対話した=広島市の広島県庁の講堂で

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 いじめなど学校の諸問題の解決のため、画一的な教育から転換を目指す動きが全国に広がっている。オランダで普及する先進教育「イエナプラン」の手法を取り入れた公立小学校を全国に先駆けて開校する広島県もその一つ。「脱画一」をテーマに対話が行われた集会を取材した。

 九月、広島県庁の講堂に約百人の教育関係者と二十人の保護者が集まり、教育哲学者の苫野一徳さんを囲んだ。画一一斉教育からの脱却と探究を核とした学習を提唱する苫野さんの著書「『学校』をつくり直す」を読んだ参加者らによる対話集会だ。

 「テストをせずに、どう成績をつければいいのか」「探究型の学習で学力を身に付けられるのか」−。ぶつけられる疑問に、苫野さんや平川理恵・県教育長が答えた。「内申点をなくす学校もあり、高校入試も過渡期にある」などと説明した苫野さんは「こういう対話を重ねることによって、学校を取り巻く状況は変わっていく」と歓迎した。

 集会は、県教委に本年度から新設された「個別最適な学び担当」が企画。県内では、二〇二二年度に福山市が日本初となる公立イエナプラン校の開校を予定するなど、脱画一教育の導入を進めている。

 脱画一教育とは、みんなで同じことを同じペースで一斉に学ぶ方法を見直し、子どもの個性や学力、関心に応じた学びを目指す考え方。オランダで発展したイエナプランは、そうした教育の象徴的な存在だ。

 「脱画一」と並んで使われる言葉が「個別最適化」。文部科学省も昨年、個別最適化された学びや、異年齢の子ども同士が学び合う活動などを、取り組むべき施策として発表。全国の自治体でタブレットなどICTを利用した「個別最適化」の導入が進んでいる。

 広島県は一四年に「『学びの変革』アクション・プラン」を策定。グローバル社会に対応できる人材育成を目的に教育改革を行ってきた。しかし、小学五年と中学二年を対象にしたアンケートで、改革に関する十五項目の質問のうち十二項目で「主体的に学べていない」などの否定的な回答をした生徒が約一割に上った。

 この一割に目を配り、すべての子どもが自分に合った学び方をできるようにすることが「個別最適な学び担当」の使命だ。中谷一志担当課長は「子どもの多様性に対応した教育をするにはどうしたらよいか。それを研究し、学校に発信していく」と説明する。

 ただ、イエナプランの一律導入は考えていない。「目指すのは、いろんな学びの選択肢を提供すること」。その方法の一つが、学校選択制だ。

 日本では学区制が原則だが、広島県では以前から縛りが緩やか。尾道市では〇四年度から小中学校の学区外入学を認めており、福山市のイエナプラン校でも市内全域から児童を受け入れるなど、「受けたい教育」を選べる環境を整え始めている。

 集会後、ある小学校に勤める五十代の男性教諭は「この二十年間、教員は社会の期待に応えられず、無力感が大きかったが、この改革には希望がある」。県北部の三次市から来た四人の子どもを育てる女性は「自分の市の教育を変えられる気がする」と話した。

 脱画一教育に着目した改革は、少しずつ、広がりを見せている。生徒のいじめ自殺をきっかけに動きだした名古屋市は、東区の矢田小学校をモデル校に指定し、米国発の課題解決型といわれる学習方法に取り組んでいる。私立では今年四月、日本初のイエナプラン校として、長野県佐久穂町に大日向小学校が開校。来年度には浜松市や長野県軽井沢町に脱画一を掲げた小学校や義務教育学校が開校予定だ。

 (宮崎厚志)

 

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