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母国語のアシスタント職員採用 愛知・碧南の全7小学校

算数の授業で掛け算を習うブラジル国籍の児童に寄り添い、サポートする外国人スクールアシスタントの宮本カミラさん(中)=愛知県碧南市の日進小で

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 増え続ける外国人児童を支援しようと、愛知県碧南市は十月から、外国人の「スクールアシスタント(SA)」を七つある市内の小学校に一人ずつ配置した。言葉が通じないことで生じる問題を防ぎ、安心して学べる共生の場をつくるのが狙い。単なる通訳にとどまらず、学校での生活をサポートする点で、全国でも珍しいという。

◆文化の違い埋める

 同市日進小学校に今年転入したアイカさんとアユミさんは、ブラジル国籍の二年生。算数の授業で九九を唱える傍らには、同じブラジル国籍のSA、宮本カミラさん(31)が教科書を指で示しながら、ポルトガル語で説明した。同小の外国人児童は全児童の一割にあたる三十五人。うち六人がこのクラスに集まる。

 カミラさんは四人の子を持つ母親で、二十年以上を日本で過ごしてきた。今は一日五時間、低学年の授業を順に回り、児童が学習に集中できるよう気を配る。

 例えば、掛け算。ブラジルでは「五かける一は五、五かける二は十」とそのまま覚える。一方、日本は「ごいちがご(五一が五)、ごにじゅう(五二十)」…。外国人にはすぐに理解できない独特の言い回しに聞こえ、掛け算を学んでいると気付きにくい。

 食文化の違いも、戸惑いを生む。パサパサしたブラジルの米と違い、粘り気の多い日本の米に抵抗を感じ、慣れるのに時間がかかる児童もいる。そんな時にカミラさんは「自分のペースで食べればいいよ」と伝えるなど、文化や習慣の違いを埋める役割を担う。

 担任の多田一恵教諭(54)は「外国籍児童の自信につながり、落ち着くことで教員の負担が減る。クラス全体の授業の理解度も上がっている」と行き届いたサポートに信頼を寄せる。

◆親とも意思疎通

 同市によると、市内の外国籍児童は今年四月時点で、前年より二十六人多い二百五十七人。全体の6%超を占め、年々増えている。学校現場では言葉の壁によるトラブルに加え、授業中に教室から飛び出す子、勝手に帰宅する子らの対応で教職員の負担が増大。発達障害の可能性のある外国人児童には、保護者も含めた支援も求められている。

 SAは時給千円の臨時職員として雇用される。多くはカミラさんのような日本で子育て中か、子育てが一段落した女性たちが担う。

 日進小の長谷川和美校長(60)は「学校の思いが外国籍児童の保護者にうまく伝わっていない部分があった。カミラさんのおかげで先生や学級の真意を正しく理解してもらえるようになっている」と効果を実感する。

 導入の直接的なきっかけとなったのも、保護者とのトラブルだ。別の小学校の低学年児童が暴れ、ベテランの女性教諭が押さえ付けるようにして自制を求めたところ、その身体的接触が保護者の不信感につながったからだ。同市の生田弘幸教育長は「この地域で、自動車産業の好況を支える外国人労働者とその家族をサポートするのは大事なこと。(SAも)やりがいをもってやってくれている。来年以降も継続します」と話している。

◆画期的取り組み 「心の通訳者」に

 <外国籍の子どもの教育支援に詳しい小島祥美・愛知淑徳大准教授の話> ボランティアで一時的に関わる取り組みはあるが、職員として採用したのは画期的だ。子どもだけでなく保護者のサポートも重要視している点が評価できる。「心の通訳者」として力を発揮してほしい。臨時採用から安定雇用にすることで、SAのやる気も引き出せ、質の確保にもつながる。同様の問題を抱える自治体には大いに参考になるだろう。

 (碧南通信局・福沢和義)

 

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