トップ > 特集・連載 > 教育 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

教育

法に沿った「いじめ対応」効果 香川の中学校

写真

 全国の小中学校や高校などで二〇一八年度に認知されたいじめが過去最多の五十四万三千件に達した。一三年に成立した、いじめ防止対策推進法が現場に浸透していないと指摘される中、法に沿った取り組みで効果をあげている中学校があると聞き、香川県善通寺市を訪ねた。

 善通寺市は香川県西北部にあり、人口三万二千人。東中学校は市内に二つある市立中学校の一つだ。全校生徒は四百十八人。赴任して六年目の安藤孝泰校長は「当たり前のことを当たり前にやっているだけですよ」と話す。

 いじめに関する情報を素早く学校で共有し、対応につなげるのが特徴だ。教員が生徒や保護者から相談の打診を受けると、すぐに「今から事情を聴く」と学年主任に伝え、主任は校長や教頭に連絡。ここまで十分かかるかどうか。どんなに小さいと思える事案でも報告するよう徹底している。

 一報から間を置かずに校長や教頭、担任、養護教諭らでつくる校内の「いじめ対策委員会」を開き、教員が一人で抱え込むのを防ぐ。必要に応じて一日に何度も開き、関係する生徒への聞き取りやアンケート実施を検討。いじめと認知するかどうかや生徒への指導内容などを決める。ほとんどの場合、一連の対応を当日中に終え、この間、逐一、市教委に報告する。

 必要があれば、時間割も組み替える。相談への対応などで授業ができない教員がいると、代役が教室に走る。ある昼休み、生徒から相談を受けた教員が「放課後に聴くね」と応じたら、午後の授業の間に生徒がいじめに遭ってしまった苦い教訓もある。

授業時間中、廊下の机で作業する教員ら=香川県善通寺市で

写真

 教員らは授業のない時間帯は各教室の廊下に置いた机で作業。休み時間にはトイレの前にも立ち、生徒を見守る。市教委とも緊密に連携し、加害側の生徒には段階的に指導を重ね、出席停止や訓告などの対応も辞さない。安藤校長は「いじめは命にかかわる。最優先で対応する。法律を読み解けば、やるべきことは全部書いてある」と強調する。

 こうした姿勢は、生徒や保護者が相談しやすい環境につながっているようだ。本年度にいじめと認知した七十七件(十月末現在)の発見のきっかけは、生徒や保護者からの情報が計64%で、全国の中学校(一八年度)の46%を大きく上回る。学年別の認知件数はこの数年、一年生で年間六十件ほどだが、二〜三年生では数件に減るという。

 教員の負担について、徳山恵教頭は「授業のカバーなどで一時的に忙しくなるが、何とか対応できる。一人で抱え込んで悩む重圧の方が深刻だ」と話す。いじめへの対処を当日中に終えることで、保護者対応などで教員が夜遅くまで居残るケースはほとんどなくなったという。

◆研究者「現場への周知必要」

 いじめ防止対策推進法や、文部科学省の「いじめの防止等のための基本的な方針」などに必要な対応は細かく示されている。だが、学校が法に沿った対応をせず事態の深刻化を招くケースが後を絶たない。総務省は一八年に「いじめの定義を限定解釈している例がある」「組織的な対応ができていないケースがある」などと文科省に改善勧告した。「こども六法」の著者で、教育研究者の山崎聡一郎さんは「現場の教員は多忙で読む時間がない。法律通りに対応すると負担は減り、いじめも軽くなることを周知する必要があるのではないか」と話す。

 同法を改正する動きがあるが、規定の厳格化を巡っていじめ被害者側と教育関係団体で議論が分かれ、難航している。

 (河原広明)

◆尾木直樹さん「生徒の主体性も育てて」

 <教育評論家の尾木直樹さんの話> いじめへの対応を最優先にする姿勢を示すことで、生徒や保護者は「いじめはとんでもないことなんだ」という強いメッセージを受け取る。それが大事だ。学年が上がるにつれて認知件数が激減していることも大きい。いじめへの生徒の理解が進むからだろう。教員とともにいじめ防止にどう取り組むか、生徒の主体性も育てることができれば盤石だろう。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索