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教育

名古屋市選管が18歳選挙権の啓発講座 中学生対象に

投票用紙を1人ずつ配布する社会科係の女子生徒ら=名古屋市緑区の千鳥丘中学校で

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 三年前の参院選から始まった十八歳選挙権。十代の投票率を上げようと各地の選挙管理委員会が啓発に力を入れる中、名古屋市選管は「考えて一票を投じる主権者を育てたい」と学校で行う出張講座の見直しを始めた。研究者と検討を重ねた教材で試験的に実施した中学校の授業でも、考えるための仕掛けがちりばめられていた。

 教室の後ろに投票所の記載台が置かれ、模擬投票の準備が整った名古屋市の千鳥丘中学校。これまで各区の選管が行ってきた出前講座と風景は変わらないが、教壇には国の主権者教育アドバイザーで、名古屋経済大の高橋勝也准教授が立ち、授業を始めた。

 まず、政治と選挙の役割を考える足掛かりとして、国民の半分が年収九百万円で残りは百万円のスミス王国か、全員が年収三百万円のマルクス王国か、どちらがいいかを生徒に質問。「年収が低く苦しい思いをするなら平等の方がいい」「マルクス王国じゃつまらない」など、さまざまな意見が出た。

 続く題材は誕生日ケーキ。ホールケーキを家族四人で分けようとしたら、弟が一部を食べてしまっていた。残りを弟を含む四人で分けるか、それとも弟には配らないか、どちらが公正かをグループで議論すると、さらに各自の主張がぶつかり合った。

 「正しいと思うことは一人一人違う」「家族ですら意見が食い違う」と実感した生徒たち。「みんなが正しいと思うことを主張すると争いが起きる。利害や対立を調整するのが政治であり、調整する方法が投票や選挙」と高橋准教授は説明した。

 後半は名古屋市長選挙に四人の候補が立候補したと仮定し、模擬投票へ。争点には、スミス王国のような自由主義かマルクス王国の平等主義のどちらを重視するか、などが掲げられた。「どの候補者に投票するかを考えることは、どんな自分になろうかなと考えること」と高橋准教授からメッセージを聞いた女子生徒は「これからの未来をつくっていくのは私たち。投票する時はしっかり考えなくちゃと思った」と話した。

      ◇

 名古屋市選管は二〇〇六年度から中学、高校向けに模擬投票を含む「選挙出前トーク」を開始。一一年度は小学校にも広げた。十八歳選挙権が導入された一六年度は最多の五十七校から依頼があったが、その後は減る一方だ。

 選挙制度や投票の仕方を説明する講義形式ではなく「児童、生徒が主体的に参加できる内容にしたい」と今年九月から高橋准教授と検討を重ねてきた。本年度内に高校と小学校でも試験的に授業を行い、二一年度以降、各区の選管職員が出前トークをできるようにする計画だ。緑区選管の田中伸幸係長は「ただ投票するのではなく、考えて投票に行く人を増やしたい」と話す。

◆公民の副読本を見直し

 考えて投票する主権者を育てる方針は、20年ぶりに改訂された副読本にも表れている。名古屋市教育委員会は社会科の「公民」で地方政治を学ぶ中学3年生向けの「いちご(15)のあした」の内容を見直し、今年9月、市内の中学校3年生に配布した。

 選挙権を得た高校生や、中学生のイラストと写真を用い、課題の導入部分にはクイズも取り入れた。「投票率が低いとどうなるのか」などの課題を設定し、生徒が自ら考え、自分の考えを記入できるよう、ワークシート形式になっている。

 編集委員長を務めた同市鎌倉台中学校の戸田佳孝校長は「選挙に行こうと思う生徒が1人でも増えてくれたらうれしい」と主権者意識の高揚を狙う。

 (福沢英里)

 

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