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命学ぶ「飼育小屋」に逆風 世話の制約多く小学校で減少

「触っても怒らない性格」と紹介されている雄のウサギ「ココナッツ」=愛知県小牧市の米野小学校で

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 ウサギやニワトリなどの飼育小屋が小学校から姿を消しつつある。10年ほど前は9割近かった鳥・哺乳類の割合が半分以下に減少。鳥インフルエンザの影響や児童のアレルギー、教職員の負担軽減が背景にある。全国的な傾向を調べた専門家は「生き物の温かさに触れられる動物飼育を支える方法を模索すべきだ」と訴えている。

 愛知県小牧市の米野小学校。九月末の昼休み、六年生の飼育委員がウサギ小屋の掃除にやって来た。木の板を取り出して洗ったり、ほうきで小屋からふんを取り除いたり。えさがぬれないように、水を置く場所にも気を配る。「ストレスにならないよう、清潔にしています」。委員長の中垣内菜友さんが、ウサギを気にしながら話した。

 五、六年生の飼育委員は毎日、昼休みに世話をする。夏休みなど長期の休みには六年生が担当。担当の谷昌剛教諭は「毎日、様子を見ているので、不調に気付きやすい」と見守る。

飼育小屋の前で木製の板を水洗いする飼育委員の児童=愛知県小牧市の米野小学校で

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 生き物の命に責任を持つ体験を通して、思いやりを育む動物飼育。だが、時代とともに風景は変わりつつある。

 岐阜県本巣市の弾正小学校では、「動物ランド」と呼ばれる施設が敷地内にある。二〇一一年ごろはウサギやモルモットなど七種類の動物を飼っていた。一羽だけ残っていたチャボが二十一日に老衰で死に、二十三日に臨時の全校集会で別れを惜しんだという。

 同校も〇四年に発生した鳥インフルエンザや、ウサギに触れた児童のアレルギー症状などを懸念。堀内寿幸校長は「これまで世話をしてきた子どもたちの思いを大切に、どうするのか考えたい」と対応を検討するという。

 岐阜県獣医師会によると、学校での飼い方を指導する「学校飼育動物サポート事業」の依頼が、〇八年に百八十一校あったのが、一八年は七十三校まで減少したという。

 一方、増えているのが「いのちの授業」だ。同県獣医師会常務理事の柴田真治さんは「学校で動物を飼うにも制約が多く、獣医師らによる授業に取って代わられている」と説明する。

◆教職員の負担、感染症…尽きぬ心配 

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 大手前大(兵庫県西宮市)の中島由佳准教授は、二〇一七〜一八年、全国の小学校の一割にあたる約二千校を対象に動物飼育の有無を調べた。今年七月には、関東と関西、九州の大学生六百七十一人に、小学校時代の動物飼育について質問。小学校の回答と、学生が在籍していた〇三〜一二年の状況を比較した。

 「飼育はしていない」の回答は、学生の6・6%に対し、小学校では14・2%で、近年、増加傾向にあることを示している。飼育する動物については、学生の回答は「鳥・哺乳類等」が86・4%と多かったが、小学校は「魚・両生類・昆虫のみ」が上回った。

 飼育上の困難を小学校に聞くと、「長期休業中の世話」が約29%で最多。「児童への感染症やアレルギー」は11・7%で四番目に多かった。長期休業中の飼育担当は「教職員が当番で世話」が57%で、「児童が当番で世話」の17・9%を上回った。

 現行の学習指導要領は、生活科で、動植物の育つ場所や変化、成長の様子に関心を持つよう促すなど、動物飼育にも触れている。中島准教授は「動物の世話を通して相手の気持ちや欲求に気付き、気遣うことを学ぶ。持ち運びができるケージ飼育など、学校で動物が飼える環境を模索したい」と話す。

 (福沢英里)

 

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