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不登校に罪悪感は無用 奈良女子大研究院・伊藤美奈子教授に聞く 

伊藤美奈子教授

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 文部科学省の二〇一八年度調査で、不登校の小中学生が過去最多となった。夏休み後の九〜十月は、学校に行けなくなる児童生徒が増えるとされる時期。どう向き合えばいいのか。不登校の子どもたちのカウンセリングに長年携わる奈良女子大研究院の伊藤美奈子教授は、子どもが自分を責める必要はなく、保護者ら「支える人」も支えられることが大切だと説く。

 −長期の休み明けに学校に行けなくなるケースが多いと聞きます。

 確かに休み明けは多い印象があります。学校が嫌だという子にとって、また学校が始まるのはすごく重荷です。九〜十月は運動会や文化祭など行事が重なり、練習や準備でしんどくなる子もいます。それだけが原因というより、もともと人間関係が苦手だったり、勉強のつまずきがあったりする上に、さらに疲れることが重なったというケースが多いように思います。

 −どう向き合えばいいでしょうか。

 不登校はどの子にも起こりうるし、その子が悪いわけではありません。学校に行っていないことに罪悪感を抱き、自分を責め、自信をなくす子もいます。そんなふうに考える必要はなく、保護者も不登校を恥ずかしい、申し訳ないと思う必要はまったくありません。

 本人に悩む力があり、待つことが必要なケースがある一方、いじめや虐待など事態が悪化する前に周りが介入しないといけないケースもあります。保護者や教員、カウンセラーなどがチームで対応することが望ましいと思います。

 −保護者は不登校の理由を知りたい。

 私も不登校の子との面接で、最初は「学校でしんどいことあるの?」と聞きます。多くの子は「うーん」って黙るんですね。

 −そんな時、どうすればいいですか。

 ある子は「何度も聞かれると、理由を言わないと許されないような、悪いことをしているかのように思わされる」と語ってくれました。学校に行けないことをOKと思っている子は、あまりいない。それなのに「なぜ?」と何度も聞かれると、しかられたり、非難されたりしているように感じて、しんどくなります。

 面接では、理由を言えるなら聞き、黙り込んでつらそうなら聞きません。まだ言葉にならないんだな、思い出すのも嫌なんだなと分かりますから。過去ではなく、今のことを聞いていきます。学校の先生でもカウンセラーでも兄弟姉妹でも、その子が安心して話せる人がいれば任せるのもいいでしょう。

 −子どもはどんな声掛けを求めていますか。

 大きな集団ではしんどくても、小さな集団の中で成功体験を積んで「ここにいていいんだ」という感覚が持てると楽になります。家庭でも「今のままのあなた、学校に行けないあなたも大好きだよ」というメッセージが伝わると安心しますし、風呂掃除などのお手伝いをしてもらうのもいいかもしれません。

 不登校の女子高校生が、こんな話をしてくれました。冬の寒い時期に外から家に戻ると、母親が温かいうどんを作って「うどん食べや」と声を掛けてくれた。そのさりげない言葉がうれしかった、と。特別なことではないんですね。でも、それが案外難しいんです。

 −そこで「子どもを支える人」も支えることが大切だと説かれています。

 保護者が切羽詰まっていたら、子どもに優しくなれないですよね。どこかで吐き出すことができれば、優しい言葉も掛けやすい。「子どものため」ではなく「自分のため」に、カウンセリングを受けるとか、おいしいものを食べるとか、何でもいいので、保護者が肩の力を抜いて楽になることで、子どもにもいい効果が波及すると思います。

 (河原広明)

 <いとう・みなこ> 京都大大学院教育学研究科博士課程修了、教育学博士。南山大講師、慶応大教授などを経て現職。文科省の「不登校に関する調査研究協力者会議」委員。専門は臨床心理学。

 

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