トップ > 特集・連載 > 教育 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

教育

<学びの未来> イエナプラン研修の現場から(下)

オランダの先進教育「イエナプラン」について学ぶ研修の参加者ら=オランダ・エヒテンの研修所で

写真

 子どもの自主性と対話を重んじるオランダの先進教育「イエナプラン」。八月末に行われた教員向けの研修に同行した記者による現地リポートの最終回は、イエナプランを表現する時に使われる「自由」について考える。

 研修の最終盤、日本からの教員ら三十四人の参加者に講師陣から質問が投げ掛けられた。「オランダにもイエナプランを『自由放任』と思っている人はいます。イエナプランは自由すぎると思いますか」

 イエナプランの学校では子どもが自ら計画を立て、学習を進める。ヘッドホンをしている子もいれば、教室の外で勉強する子もいた。子どもたちが先生の方を向いて学ぶ一斉授業との違いは一目瞭然だった。

 講師の問い掛けに、日本の教員から「一斉型の授業でも把握しきれない子がいるのに、子どもたちが自由に動きだしたら行き届いた指導ができるのだろうか」と疑問の声が上がった。

◆コントロール失わず

 では、視察した学校は「自由すぎた」のか。名古屋市大曽根中学校の清原良太教諭(34)は「自由放任ではなく、教員のコントロール下にあるように感じた」と振り返る。子どもたちの行動に統一性はないのに、教室内は静かに秩序が保たれ、学習に集中しているようだった。

 教員は子どもとの話し合いを繰り返して信頼関係を築きながら、一人一人をよく見て、個々に必要な課題を与える。一斉授業と異なり、自分に合った課題に取り組ませることで学習意欲を高める狙いだ。

 さらに、体を動かす、勉強する、対話するなど、動きの緩急が交互に訪れるような時間割をつくり、集中力を保つ工夫もしている。

 研修の講師ヒュバート・ウィンタースさんは「教員は子どもたちが責任を持って進めていくことに対して責任を持つ」と説明する。

 一定の枠組みの中で自由が認められるのは、国と学校の関係も同じだ。オランダの学校は子どもたちの発達状況を客観的な指標で示すことが義務付けられ、子どもたちは半年に一度学力テストを受ける。

 研修中、視察に訪れたオーファーアイセル州ズウォレのイエナプラン小学校では、学力に問題があったため国の監督機関から指導を受け、臨時の校長の下で改善に取り組んでいた。

◆監督機関がチェック

 この学校は教員間で目指すビジョンを共有し、一人一人の子について何が足りていないかを話し合った結果、監督機関が驚くほどの改善ができたという。臨時校長のイルセ・ファンハル氏は「イエナプランでも国が求めていることができることを示し、責任を持たなくてはいけない」と話す。

 子どもの学力が伸びていないなどの結果が出れば、監督機関が基礎学力を保つように指導する。オランダの公教育は教育の自由を保障する代わりに、基礎学力に関しては強い指導権限を持っていると言えそうだ。

 小学校修了時の到達目標を定めているオランダに対し、日本では学習指導要領で学年ごとの目標と学習内容が細かく決められている。全国どこでも同じ水準の教育が受けられるようにする制度だが、自由度は低い。またオランダは自由に学校を選べるが、日本は原則、住んでいる場所によって通う学校が決まる学区制度があり、既存の公立校への導入はハードルが高い。

 研修に同行した名古屋市教育委員会指導室の笹口真・主任指導主事は「イエナプランを取り入れる場合は日本に合わせたスタイルにする必要があるだろう」とみている。

 (中山梓)

 <オランダの教育> 憲法で教育の自由が保障されており、一定の生徒が確保できたら市民が学校を設立できる自由や教育方法の自由、理念の自由が認められている。学区制度はなく、子どもたちは自分に合った学校を選べる。国が費用を支給するため、私立も公立も学費は無償。小学校入学は4歳からで、義務教育は5歳から。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索