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教育

<学びの未来> イエナプラン研修の現場から(中)

◆子どもが問い見つけ探究

 子どもの主体性や共生の精神を重視する教育「イエナプラン」。先進地オランダからの現地報告の二回目は、日本でもキーワードになっている「主体的な学び」を促す取り組みについて考える。

 八月末、オランダのイエナプラン校を視察した名古屋市の教員たちが驚いた。小学四〜六年生が学ぶ教室を訪れ、子どもたちからの質問を受けた時のこと。一人がインターネットの翻訳機能を使うことを思い付き、それに倣って子どもたちが次々と質問を寄せた。おとなしそうな子も、おずおずと日本語が書かれたパソコンの画面を見せてきた。

 「この学校をどう思いますか」「学んだことをどう生かしたいですか」「日本でもこのような学校をつくりたいですか」−。

 名古屋市猪子石小学校の小島直輝教諭(35)は「問いの質が高い。自ら問いを見つけ、人との対話を重視する教育が生かされている」と感心した。

◆教員は興味引き出す

 イエナプランでは教員と子どもは輪になって話し合う「サークル対話」を繰り返して信頼関係を築く手法が特徴。子どもは自分で学習の計画を立て、自ら問いを設定して探究する。教員が一方的に子どもに教える従来の教育と違い、教員は一歩引いて子どもを支える立場だ。

 日本の総合的な学習に該当し、イエナプランの中核と位置付けられる「ワールドオリエンテーション」でも同じ。研修の講師ヒュバート・ウィンタースさんは「子どもに面白いと思わせること、興味を引き出すことが重要」と強調する。

 一方、クラスの人数も多く、効率や規律を重視する日本の教育現場では、子どもが主体的に動くタイミングを待ち続けることは難しい。

 研修に参加した南山大の高橋亜希子教授(教育学)が大学の授業でイエナプランを紹介する映像を学生に見せたところ、多くの学生が「こんな学校に通いたかった」と評価した。ただ一方で「名古屋市で導入できるか」と問うと、懐疑的な意見が目立った。

 ある学生は理由をこう説明した。「自分で決めたり、自由にしたりしたことがなく、指示される教育を受けてきた。自由な学校に行ったら、どうすれば良いか分からない」。高橋教授は「日本の教育にも優れた部分はあるが、『自分で決められない』というのは本質的な問題」と指摘する。

◆日本も主体性重視に

 これからの日本の教育も「主体性重視」に変わりつつある。ある推計では、日本で働く人口の半数が就いている職業が、十〜二十年後に人工知能(AI)やロボットなどで代替可能になるという。産業や働き方の変化に加え、世界規模での環境問題や国内の人口減少などの課題もある。与えられた答えを待つのでなく、未知の課題に取り組み、解決策を提案する人材を育てることは時代の要請だ。

 文部科学省は、二〇二〇年度から小学校で全面実施される新しい学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」を掲げた。同省が今年六月にまとめた報告書でも、新時代に求められる教育の方向性として、情報の中で何が重要かを主体的に判断し、問いを立てることが必要と示している。

 イエナプランも参考に、従来型の教育の転換を掲げる名古屋市教委の担当者は「基本的な知識をおろそかにするつもりはないが、教育のスタイルが変わらないまま社会がこれだけ変わってきてしまった。まずは教員全員の意識を底上げしていきたい」と話している。

 (中山梓)

 <ワールドオリエンテーション> 教科を超え、協力しながら探究する学習で、オランダでは1980年代に全小学校の必須科目に取り入れられた。学校全体のテーマに沿い、子どもたちが自ら考えた問いを出発点に、一定期間かけて調べ、考えたことを発表する。たとえば「自由」を題材にした学級では、著名人の言葉を取り上げたり、自分たちの解釈をポスターに表現したりする。

 

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