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教育

<学びの未来> イエナプラン研修の現場から(上)

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◆異年齢集い教え合う

 教員が知識を伝え、子どもたちが一斉に習う−。そうした教育のあり方を見直そうという動きが各地で広がっている。モデルとして注目されるのがオランダで普及する「イエナプラン」。子どもが自分のペースで学習する一方、異年齢が集う学級で教え合うことを学ぶのが特色だ。画一的な教育からの転換を目指す名古屋市の教員が参加したオランダでのイエナプラン研修に同行した記者が、実情や導入に向けた課題をリポートする。

 研修では、専門家の講義や実践校の視察があり、名古屋市の八人を含め、東北から九州までの教員ら三十四人が参加。研修を終えた八月三十日、ある教員が語ったひと言が耳に残った。「子どもの目が輝いていた」。確かに、どの子も明るい表情で自らの課題に取り組んでいるように見えた。

 イエナプランの特徴の一つは、全体の進度についていけない「落ちこぼれ」が原則、存在しないこと。いつ、何を学ぶかは自分で計画して決め、教員がアドバイスする。一人一人進度が違って当たり前という考え方だ。

イエナプランを実施する小学校の教室。子どもたちは時には話し合いながら、それぞれのペースで学習を進めていた=オランダ・フローニンゲン州ヌイスで

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 視察先の低学年教室では、子どもたちがタブレット端末で計算に取り組んでいた。ある男の子は「9−7」と一桁の引き算。隣の男の子は「800×30」と三桁の掛け算。難易度は明らかに違った。

 分からない子には、教員だけでなく年上の子が教える。「教える側」だった子は高学年に進むと、今度は「教えられる側」に。双方の立場を順に経験し、「できない子」も尊重できるようになるという。

◆「落ちこぼれ」なくす

 こうした教育法が普及するきっかけとなったのが、一九六九年に発表された国の報告書「落ちこぼれへの抵抗」だった。

 それまでは、日本と同じような画一教育が主流で、留年者の多さが問題になっていた。学年ごとの必修課題が一科目でもクリアできなければ一年間やり直し。報告書では、イエナプランは留年者が少ないと紹介された。

 その後、学年ごとの必修課題をなくし、小学校修了時の到達目標を設定した制度改定もあり、発達に応じた教育が可能になった。現在、イエナプラン校は全小学校約六千のうち約二百校にのぼり、自由に学校を選ぶことができる。

 報告書の指摘は現代の日本にも通じる。例えば小学二年生の算数で習う九九。同じ教室に既に暗唱できる子と初めて学ぶ子が混在する。できる子は全体のペースに合わせて足踏みし、できない子は一度のつまずきで置いてきぼりにされる。

 研修に参加した名古屋市八事東小の前田麻紀教諭(41)は「できないのは酷。自己肯定感が下がってしまう」と話す。

 インターネット上では、人工知能(AI)が個々の進度に合った最適な教材を瞬時に提供する時代。「みんな一緒に」が原則の公教育の意義も揺らいでいる。

 教員が個々の課題を考えるイエナプランは、教員の負担が過大ではないかと疑問も残ったが、研修の講師を務めたヒュバート・ウィンタースさんは「もし採点に時間がかかるなら、子どもに手伝ってもらえばいい」と語り、工夫次第でできることを力説した。

 名古屋市では教員が持ち場へ戻り、現行制度内でどんな要素を持ち込めるか模索を始めている。

 (中山梓)

 <イエナプラン> 1920年代にドイツ・イエナ大のペーター・ペーターゼン教授が創始。オランダでは、60年代に初めて学校が設立された。子どもが自ら問いを設定して探究する「ワールドオリエンテーション」などに特徴がある。

 

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