トップ > 特集・連載 > 教育 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

教育

「選択肢狭い」高校生の就活 1人1社制、国が見直し検討

職場で同僚と話す高卒入社2年目の神崎未羽さん(中)=名古屋市東区で

写真

 高校生の就職活動で、高校を通じて応募できる企業は一人一社−。複数社に応募して就職先を選ぶ大学生とは異なる高卒就活では、活動期間を短く抑え、生徒の負担を少なくするなどの利点がある長年の慣行が続く。ただ、生徒の選択肢を狭めているとの指摘もあり、国は見直しに向けて検討を始めた。

 「複数の企業に見学に行った上で応募先を選べたら、初めから選択肢が広がって良かったと思う」。昨春に愛知県内の商業高校を卒業し、システム開発などを手掛けるSYSホールディングス(名古屋市)に入社した神崎未羽(みう)さん(19)。納得のいく就職先を見つけるまで時間をかけた自らの就活をそう振り返った。

 一般的な高校生の就活は、求人票を基に担任との面談や職場見学などを通じて希望の就職先を選び、学校推薦で一社に応募。応募したい生徒が多いと校内選考で調整するため、希望が通らない生徒も出る。高校によって異なるが、職場見学に行けるのは応募予定の一社にとどまる場合も多い。

 神崎さんは別の企業に入るつもりでその一社を見学したが、悩んだ末に応募を見送り。そこから応募先を選び直したため、九月中に就活を終える生徒が多い中、十月下旬までかかった。

 高卒の就職をめぐっては、企業と接触する機会が限られ、大卒と比べて得られる情報も少ないため、早期離職の原因になるとの指摘もある。

 こうした実情を受け、内閣府の規制改革推進会議は六月の答申で、「高校生の就職の機会を保障しようとするあまり、かえって主体性を過度に制限しているのではないかという意見がある」と指摘。見直しを検討するよう求めた。厚生労働省と文部科学省が有識者のワーキングチームで議論し、年内をめどに報告書をまとめる予定だ。

写真

 一人一社制は毎年、都道府県ごとに自治体や経済団体、校長会などの関係者が協議して決める申し合わせ。リクルートワークス研究所の古屋星斗(しょうと)研究員は「学校とつながりのある企業と生徒を結び付ける仕組み。国内の若年失業率が海外と比べて低いのは、このおかげだ」と話す。

 企業にとっては内定辞退のリスクがほとんどなく、短期間で採用に至るためコストも低く抑えられる。

 学校側も見直しには慎重だ。厚労省が昨年五〜六月に高校千八百校を対象に実施したアンケートでは「現行のままがよい」が74・1%を占めた。複数社への応募で生徒の負担が増し、学業への影響が出る懸念などが背景にある。

 愛知県内のある高校では、生徒が七月初めに求人票を見てから約二週間で応募先を固め、職場見学を始める。八月上旬には応募先をほぼ決定する段取りだ。

 日程に余裕がないことや、生徒をサポートする教員の負担増への懸念もある。ある進路指導の担当教員は「早期離職につながるミスマッチを防ごうと、生徒の選択の幅を広げる複数社への見学や応募は教員間でも議論になるが、現状では一人一社の枠組みで進めるのが精いっぱい」と話す。

 同研究所の古屋さんは「産業構造が大きく変革する中、新興のIT企業が高卒人材を積極活用する例も出ており、学校と企業のつながりに頼って一律に縛る手法は時代に合わなくなっている」と指摘する。

 その上で、「大卒のような学校の外部からのサポートや、職業を選ぶ前段階からのキャリア教育を充実させ、生徒が自分の力で企業を選べる仕組みに段階的に変えていくことが必要ではないか」と話している。

 (河原広明)

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索