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規定厳格化めぐり平行線 いじめ防止法改正、難航 

記者会見でいじめ防止対策推進法の座長試案に反対を訴える遺族ら=東京・霞が関の文科省記者クラブで

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 全国各地でいじめを苦にした子どもの自殺が相次ぐ中、いじめ防止対策推進法の改正作業が難航している。超党派の国会議員による勉強会がまとめた当初の改正案では、学校が取り組むべき対策などを細かく規定したが、教育関係団体が反発。四月に新たに勉強会の座長が示した試案では多くの項目が削られ、今度はいじめ被害者側が批判を強めており、成立の見通しは立っていない。

 「これでは子どもの命を守れず、同じことが繰り返されてしまう」。二〇一一年にいじめを苦に自殺した大津市の中学二年男子生徒の父親は、座長試案を手にため息をついた。当時、いじめと自殺の因果関係を認めなかった学校の体質や、教員の意識を変えなければならないという強い危機感から法改正を望んでいる。

 同法は大津の事件を契機に、一三年に成立。いじめの防止と事案への対処などについて学校の責務を規定した。だが、文部科学省の調査によると、一四〜一七年度の四年間に少なくとも三十四人の小中高生がいじめに絡んで自殺した。教育委員会や学校の対応に遺族が不満を抱くケースは後を絶たない。

 一五年に茨城県取手市の中学三年女子生徒が自殺した問題では、市教委がいじめを否定。後に、「不適切な対応」と認め、遺族に謝罪した。一六年に神戸市の中学三年の女子生徒が自殺した事案では、市教委が同級生らから聞き取ったメモを隠していたことが発覚した。

 総務省は昨年、「いじめの定義を限定的に解釈している学校がある」「組織的な対応ができていないケースがある」と文科省に勧告し、改善を求めた。

 これを受け、国会議員らが勉強会を立ち上げて改正作業に着手した。同十二月に事務局案をまとめ、「いじめの定義を限定して解釈してはならない」と明記。学校いじめ対策委員会の役割やいじめ防止プログラムの内容、教職員研修の実施などを具体的に規定した。

 策定に関わった小西洋之参院議員は「『これがなされていれば自殺は防げた』と指摘されている国の基本方針の中核事項ばかり」と説明する。

 しかし、公立学校の校長会などは「規定が細かすぎ、学校現場の柔軟性を損ねる」と反発。愛知県内のある教諭は「法律に書いたり、研修をしたりしても、教員の目が増えるわけじゃない。余裕がないのが現実で、締め付けても萎縮するだけだ」と教員を増員する必要性を訴える。

 勉強会座長の馳浩・元文部科学相は今年四月に座長試案を提示。教育関係団体の声を反映させ、事務局案が新設した多くの条文を削った。

 これに、いじめを苦に自殺した生徒の遺族らが猛反対し、連名で勉強会に意見書を提出。長女を亡くしたNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」理事の小森美登里さん(62)は「優先すべきは子どもの命。いじめの防止には教員が法の趣旨を理解し、スキルアップすることが欠かせない」と話す。

 小森さんは学校などで千五百回以上の講演を重ねてきた。参加した教員からは「いじめに対する自分の考え方は間違いだったかもしれないと感じた」、「『しばらく様子を見ます』というのは教師の逃げだと実感した」と、多くの「気づき」が寄せられるという。

 教育評論家の尾木直樹さんは「子どもの命と教員の労働時間をてんびんにかけるべきではない。法を守らない学校がある中で尊い命が失われている現実に歯止めをかける必要がある」と指摘。学校の責務を明確にした事務局案をベースに取りまとめるよう求める。

 (北島忠輔)

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