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夢か友情か、葛藤通し「考える道徳」 議論し自分なりの正解探る

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「こまったプレゼント」を飾るか、意見を述べる児童(手前左)ら=愛知県あま市の七宝小で

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 夢に突き進むか、友情を取るか。悩ましい問いを児童に投げかけ、葛藤を通して考えさせる道徳の授業をしている小学校がある。教科書を読み取らせるような従来の手法とは異なり、「自分だったらどうするか」と考えることで、誠実さや友情、相互理解などの道徳的な価値を学ぶ取り組みとして広がっている。

 「さあ、どうする?」

 愛知県あま市七宝小学校で、五年生三十五人に鈴木賢一教諭(39)が問い掛けた。授業のタイトルは「こまったプレゼント」だ。

 夢がかなってケーキ店を開いた男性に、親友が「お店が繁盛するように、これを壁に飾って」と手作りのてんぐのお面を持ってきた。店の雰囲気には合わないが、断ると角が立つ。そのはざまで男性は悩む。

 動画で物語を見た児童らは、自分の名前を書いたマグネットを黒板に張り付けていく。「飾る」に九人、「飾らない」に二人、残りの二十四人は「その他」を選んだ。

 「じゃあ、自由に話し合ってみよう。意見の違う人と話した後に変えてもいいよ」。鈴木教諭が促すと、「飾る」が二十五人に増え、「飾らない」と「その他」が五人ずつに。

 ある児童が「飾らないのは友として恥」と言うと、別の児童は「親友の願いは飾ることより、店が繁盛すること。思いをくんで努力することが大切」と自分の考えを述べた。

 鈴木教諭は「親友の気持ちを受け止めて、より一層がんばる。相手を大事にし、自分の夢も大切にすることになるね。これからも考え続け、自分なりの答えを導きだそう」と語りかけ、授業を終えた。

「誠実」をテーマに意見を交わす児童ら=名古屋市緑区の戸笠小で

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 二〇一八年から教科になった道徳。副読本を読んで感想を述べる「読み物道徳」から「考え、議論する道徳」への転換が進む。関心が高まっているのが、友情と正直さ、自己実現と他者への信頼など、道徳的価値が対立する物語を教材とする「モラルジレンマ」と呼ばれる授業だ。

 立命館大教職大学院の荒木寿友教授(道徳教育)は「結論よりも、なぜそのように考えるのかという部分が重要。葛藤の中で道徳的価値の理解を深めて、筋の通った理由付けを考えていくことが、道徳性の発達に大きく関わっていく」と効果を解説する。

 名古屋市戸笠小でも五日、六年の道徳でモラルジレンマの手法を応用した授業が行われた。教材は「手品師」。大劇場での公演を夢見る手品師がある日、貧しい少年に手品を披露し、大喜びされた。「明日も来て」と頼まれて約束したが、その夜に友人から「明日、大劇場に出られる人を探している」との話が舞い込んだ、という設定だ。

 児童らは手品師になりきって、授業のテーマである「誠実」であるとはどういうことかを考えた。「自分のために夢を追うべきだ」、「少年を元気にするという目的が大切」−。そんな対話を経て、最後に複数のグループが「自分が正しいと思ったことをする」という考えを発表した。

 辻昌希教諭(35)は「正解は一つではない。違う意見に触れながら、自分の考えを再構築できるような学習の場にしたい」と授業のねらいを説明した。

 (北島忠輔)

 

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