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<NIE> 図書館が新聞記事「日めくり展示」

新聞記事と記事を紹介するポスター、関連本を一緒に並べる日めくり展示のコーナー=愛知県安城市の市図書情報館で

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 愛知県安城市の市図書情報館は毎日、朝刊から一本の記事と関連する本を選び、手書きのポスターで利用者に伝える「日めくり展示」に取り組んでいる。限られた時間で記事の要旨を読み取る力が養われるそうだ。埼玉県などでは学校司書向けに勉強会が開かれている。学校で取り組む参考にポイントを聞いた。

 目を引く言葉にイラスト、その上には新聞記事がある。キャスター付きワゴンに、本と一緒に収まる「日めくり展示」だ。取材した日は、同館スタッフの前田惟子さんが中日新聞朝刊から「がんゲノム医療」用検査について、公的医療保険の適用が決まったことを報じる記事を切り抜いた。

 「難しそうな記事でも関連書籍が多い話題なら採用します」という視点は図書館職員ならでは。ゲノム医療の本となると少ないが、がんをテーマにした本なら冊数も増える。幅広い年齢層の読者を想定し、子ども向けの解説本や、親ががんになったときに読む本など、複数の視点からとっておきの十冊を選んだ。

 続いてポスター作り。言葉は、利用者に何を考えてほしいのかを伝える重要な要素。がん治療の選択肢が増えるニュアンスを伝えようと「保険適用」とまず書いた。記事にあった遺伝子のイラストも添え、イメージを伝える。「端的な言葉で記事との関連性が分かるようにしています」と丁寧にペンを動かした。

 展示は二年前のオープン直後から始め、十六人の職員が交代で、午前九時の開館と同時に記事選びに取り掛かる。一時間以内に仕上げるのがルールで、午前十時には来館者が多く通る階段下にワゴンを置く。司書の市川祐子さんは「本だけでは最新情報を入手できないが、新聞記事があればそのタイムラグを補ってくれる」と両者の相乗効果に期待を寄せる。

 過去の展示を見せてもらった。ヒアリ発見の記事には、「そんなのアリ!?」の文言で注意を促し、カキツバタの見ごろを伝える地元の話題には「癒(いや)しのカキツバタ」の文字とカキツバタのイラストで華を添えた。ポスターは見やすいようにと、あえてモノクロで書かれ、文字の大小やイラストによって個性がにじむ。展示はツイッターに投稿、図書館に来ない人にも毎日、情報を発信している。

      ◇

 新聞記事を使った展示の手法は、図書館コミュニケーションデザイナーの押樋良樹(おおといりょうき)さん(73)=千葉県市川市=が発案。十年以上前から、埼玉県内の中学校や高校の学校司書向けの勉強会で指導してきた。かつては授業の一環で生徒が取り組んだ中学校もあったが、現在は司書を中心に広がっている。押樋さんを招き、大学図書館の職員を対象に講座を開いた、愛知県立大長久手キャンパス図書館の松森隆一郎図書情報課長は「選ぶ記事が人によって異なるだけでなく、紹介する関連本も違う。その多様さが面白い」と意義を強調する。

 記事から短時間で展示の文言を考えるトレーニングで、どんな力が身に付くのだろうか。押樋さんは「記事の中から相手に何を伝えるかを意識的に考えることで、文章の要旨をつかむ力がつく」と話す。「『記事に書かれていることは本当なのか』と疑問を持つことも大事。複数の新聞を読み比べたり、本で深く調べたりすることにつながる」と多角的にニュースをとらえる視点も育つという。

 (福沢英里)

 

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