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教育

東海地方ゼロ「夜間中学」 外国人増えニーズ高く

中学夜間学級で地球儀を使った地理の授業に臨む外国籍の生徒ら=名古屋市の愛知県教育会館で

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 日本語がつたない外国人も、不登校の子どもも、希望すれば受け入れられる公立の「夜間中学」。設置を後押しする教育機会確保法が三年前にでき、先月、二十二年ぶりに埼玉、千葉県で開設された。それでも全国で九都府県に三十三校しかなく、東海地方にはゼロ。未設置の地域では、民間などが運営する学習支援の場が受け皿だが、外国人の増加に追いつかず、学びの機会や質の保障は不十分だ。

 夜間中学のない愛知県では、名古屋市で、一九七三年に県などが独自に設置した教室「中学夜間学級」が週三日、夜に開かれている。夕方六時すぎ、教室に入ると地理の授業中。生徒は七割が外国籍で、韓国や中国、ブラジルなど国際色豊か。十代から六十代までと年齢も幅広い。

 「地球儀の使い方」の学習のためグループをつくって地球儀を囲み、「東京から真っすぐ東へ進むと通過する大陸を順番に書いてください」といった教員からの課題に取り組む。「緯度」「経度」など日常会話にはない用語に戸惑い、教員に助けを求める姿も。最前列にいたフィリピン国籍のアリヤナさん(17)は「日本語は大体分かるけど、授業になると難しい日本語もある」と打ち明けた。

 中学夜間学級は、市立中三年に編入する形で千八十こまを二年かけて学ぶ。中学の卒業資格を得られるが、夜間中学とは違って、希望者すべてが入学できるわけではない。一定の日本語力が求められ、出願時に小学校卒業程度の学力をみる国語と算数のテストがある。

 教員も、夜間中学は専任だが、中学夜間学級では名古屋市から派遣された計十二人が、昼間の学校と兼務する。

 これまで九百人以上に学びの場を提供してきたが、最近、外国人が増え、対応が難しくなっている。この数年は応募者が定員に達するようになり、二〇一九年度は二十人程度の募集に二十六人が応募。「ニーズは高まっているが、日本語の問題などで受け入れを断らざるを得ない外国籍の方もいる」と運営する県教育・スポーツ振興財団の岡崎正和課長補佐。

 教育の質にも課題がある。「今は全日制高校進学を希望する生徒はおらず、入試科目の少ない定時制の希望が多い。一律ではない生徒のニーズに今後どう対応するか」と岡崎課長補佐。今年から、日本語のレベルや学力など生徒に応じた指導を教員に依頼したが、スタッフ数に限りがあり限界があるという。ただ、県は夜間中学の設置を予定していない。「中学夜間学級がある」というのが理由だ。

      ◇

 夜間中学は週五日授業があり、三年かけて卒業するのが一般的。昼間の学校と同じように、始・終業式や体育祭などの行事もある。来日したばかりで日本語がまったくできない外国人や帰国者も入学できる。

 東京都内の夜間中学で三十六年間教員を務めた関本保孝さんによると、都内に夜間中学は八校あり、一五年度に卒業した百二十七人のうち外国人が七割を占め、卒業生の半数以上が高校に進学した。五校に日本語学級が併設され、一年かけて日本語の基礎を固め、残りの二年で九教科を学ぶ。

 関本さんは「進学の道が開け、就労支援にもつながるように、日本語の学習や日本の教育課程に基づいた指導ができる夜間中学の増設を訴えたい」と強調する。

 (福沢英里)

 <夜間中学> 公立中学で夜間に授業を行う学級。戦後の混乱期、貧困家庭の子の学びやとして開設された。2015年の文部科学省通知により、中学を卒業したものの不登校などで十分に学べなかった既卒者も受け入れ可能に。翌年制定された教育機会確保法に、自治体は義務教育を終えていない人に夜間中学などの方法で、学ぶ機会を提供する義務を負うと明記され、17年3月、国は「全都道府県に少なくとも1校」との方針を打ち出した。札幌市や徳島県、茨城県常総市などが設置を決め、静岡県でも設置の検討を始める。

 

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