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教育

問題解決、子どもの力で 共同体感覚養うクラス会議

深見太一教諭のイラストを基に作成

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 「クラス会議」が小中学校の教員の間で注目されている。子どもたちがクラスの問題を話し合って全員で共有し、解決策を考える活動だ。少子化の時代、人とつながって生きる力を育むことが、より大事になってきているという。

 クラス会議とは、話し合いによって問題解決の力を高める活動のこと。議題はクラスのトラブルから、学校生活を楽しむアイデアまでさまざまだ。

 三月中旬、愛知県瀬戸市で開かれた教員向けの「はじめてのクラス会議セミナー」を訪ねると、十五人が輪になり、時間の使い方やスマートフォンへの依存、書類の整理術など、順番に悩みを出し合っていた。議題が決まり、出された解決策は十人十色。相談者が採用案を決め、四十分ほどで話し合いはまとまった。始める前は互いによそよそしかったが、全員に発言の番が回って交流するうち気持ちがほぐれて、みな笑顔に。

 セミナーを企画した教育関係者の一人、同県豊田市の小学校教諭深見太一さんが、実践をイラストで紹介している。三年生のクラスで昨年度、特別活動の時間に週一回、行った。司会から議題の提案、話し合いの進行まで児童が担う。低学年もできる。ただ、みんなの前で話せるように練習するなど、慣れるまでは教員の導きがいる。定着には回数を重ねる必要もある。

 深見教諭のクラスでは、児童が「お母さんが、おもちゃを買ってくれない」という個人的な相談をしたことで、「そういう悩みでもいいんだ」と安心して打ち明けられるようになった児童がいた。議題が集まらない場合は、あらかじめ用意した「議題カード」に話し合いたい内容を書いて提案箱に入れてもらうなど、教員が働きかけた。

 地道に続ける成果は大きい。「クラスの諸問題や友達の悩みを自分ごとととらえ、トラブルが小さいうちに解決できるようになった」と深見教諭。「自分たちで考え行動するようになると、行事の企画や運営を進んでやるなど自治能力が付く。教員は子どもに任せられることが増え、本来の仕事に集中できる」と働き方改革にもメリットがあったという。

 背景には、今までのような一斉指導が通用しない児童が増えていることがある。「クラス会議は子どもが互いの関係性の中で過ごすので、居心地がよくなり、安心して過ごせるようになるのではないか」。冒頭のセミナーは昨年九月から愛知県内の九つの市で開かれ、約二百人以上が参加した。

 「クラス会議入門」(明治図書出版)の著者で、上越教育大教職大学院の赤坂真二教授は、人口減少社会を踏まえた意義を示す。「友達とつながり、最適な解決策を見いだすクラス会議は、『共同体感覚』を養う一つの方法になる」

丸くなって座り、議題を出し合って「クラス会議」を体験する教員ら=愛知県瀬戸市の文化センターで

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◆社会に出たときの練習に

 クラス会議で『共同体感覚』が育まれるのか。三重県教育委員会の堀内拓志さんは四日市市教委にいた二〇一三年度、クラス会議の実施前後に小学生にアンケートを取った。

 対象は二カ月間、計八回のクラス会議を開いた四年生三十七人。ありのままでいい「自己受容」▽集団の一員である「所属感」▽他者を信じる「信頼感」▽人の役に立てる「貢献感」−の四観点から調べた。

 回答を「そう思わない」から「とてもそう思う」まで四段階で得点化し平均値を出したところ、四観点とも実施後の値は上昇。例えば、輪になって座ることで全員の顔が見え、発言の機会が平等に回る場の設定が、所属感の要因として考えられた。

 堀内さんは、未知の状況に対応する力の育成を目指す新学習指導要領に触れ、「社会に出て、答えがない課題に向き合ったときに主体的に取り組む練習にもなる」と強調する。

 (福沢英里)

 <クラス会議> 日本で知られるようになったきっかけは2000年、教育心理学者ジェーン・ネルセンさんらが書いた「クラス会議で子どもが変わる」(コスモス・ライブラリー)の出版。精神科医で心理学者のアルフレッド・アドラーが築いた「アドラー心理学」を生かした学級経営の方法として紹介された。

 

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