トップ > 特集・連載 > 教育 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

教育

担当教員「免許外」が3割 高校「情報科」高度化を控え

プログラミングソフトを使い、多角形を描く際の回転の角度と辺の数の関係性を、生徒に考察させる井手教諭=愛知県豊田市の衣台高で

写真

 2022年度から内容が高度になる高校の教科「情報科」。実は、教科の教員免許を持たずに教える教員も少なくないのが現状だ。研究者のまとめでは、教科になって15年が過ぎた今でも、13道県で、情報科教員の採用試験を一度もしておらず、対応の遅れが懸念されている。

 愛知県豊田市の衣台高校で二月中旬、情報ビジネスコースの一年生が「社会と情報」の授業で、プログラミングを学んでいた。ソフトを使って正多角形を描く課題に取り組んだ。

 指導した井手広康教諭(33)ら、同校には情報科を教える教員が三人いる。いずれも情報科の教員免許を持っている。情報を深く学ぶコースがあるので手厚い。「選択履修の『情報の科学』などは、教える側にもより専門的な知識や技能が必要になる」と話す。

 〇三年、高校に新教科「情報」が導入された。〇〇〜〇二年度には、他教科の教員でも十五日間の講習を受ければ、情報科の免許を得られる特例の制度が設けられた。この方式で約一万四千人が情報科の免許を得た。その後、大学で養成課程の整備が進み、そこで教育を受け免許を取得した人を各県は採用している。井手さんもその一人だ。

 一方、情報科では「免許外教科担任」の仕組みが多用されている。ある教科を教える教員がいない場合に、校長からの申請に基づき一年に限り、免許のない教科を教えられる仕組みだ。文部科学省の調査では、全国の公立高校で情報科を担当する教員は一五年時点で、五千七百三十二人いて、うち免許外教科担任は千五百八十人。28%にあたる。

 一六年度で情報科の教員免許取得者は千四百六十四人いたが、採用数は四十七人。また、授業時間数の割合に比べても、情報科の教員採用数は少ない。

 大阪電気通信大総合情報学部の中野由章客員准教授のまとめでは、北海道や新潟、石川、福井、滋賀各県など、情報科の教員採用試験をしていない道県も十三ある。

 こうした状況を電気通信大大学院情報理工学研究科の中山泰一准教授は「情報科が軽視されているからだ」と憤る。「『パソコンの操作を教える教科』との誤解が残っている。新学習指導要領になる二二年度からは、プログラミングが必修となり、大量のデータから情報や法則を読み取るデータサイエンスを手厚く扱う。専門知識のある教員でないと対応が難しくなる」と指摘する。

 政府は、情報科を「理数系人材育成の基礎となる教科」と位置付け二四年度からの大学入学共通テストに加える方針だ。これを受け対応を見直す県も出始めた。徳島は一九年度実施の採用試験から高校教諭の募集教科に情報科を新設。石川は同年度以降に情報科での採用をするかを検討中だ。

 〇五年度以降、情報科の教員を毎年採用している愛知県は一九年度実施の試験から受験の条件を緩和。従来は他教科も柔軟に教えられるようにと、情報科での受験者に他教科の免許の保有を条件にしていたが、不要にする。「情報社会に向けて広く優秀な人に来てもらいたいから」と県教育委員会の担当者は説明する。

 採用が最も多い大阪府は〇三年度以降、二百人以上を採用している。自治体によるばらつきは大きい。中野客員准教授は「自治体の方針によって、教育の質に差が出ている」と指摘する。

写真

◆「免許外」中部では 

 中部七県ではどうか。文科省が昨年一月、都道府県、政令市の教育委員会に報告を求めた一七年五月の状況から紹介する。

 長野は、情報科を担当する県立高教員百九十二人のうち、約三分の二が免許外教科担任。全国でも有数の割合の高さだ。担当者によると、少子化などで学校が小規模化して教員定数も減り、「免許外」を活用しないと、うまく回らないという。

 滋賀は、県立高の情報科担当教員八十人のうち、免許外が約二割。情報科での教員採用試験はしていない。担当者は「将来的には採用も考えないといけない」と話す。福井は、情報科を受け持つ教員四十三人のうち、免許外はいないが、十八人は三年間限定で県が認める「臨時免許」。情報科教員の採用試験は未実施だ。

 愛知は、県立高の情報科教員四百二十二人のうち約半数が免許外。担当者は「免許外教科担任は、教師が複数で指導するチームティーチングの一員として授業をする。単独で教えることはない」と説明。

 三重は担当教員のうち免許外は一割未満。「他教科と同じ扱いにしているだけ」と担当者は話す。

 (佐橋大)

 <情報科> コンピューターの活用法や情報社会を学ぶ高校の必履修教科。今の学習指導要領では、情報社会を学ぶ「社会と情報」か、情報ネットワークなどを学ぶ「情報の科学」のいずれかの科目を選択して履修する。2022年度から実施の次期学習指導要領では、プログラミングも扱う「情報1」が必履修科目となり、発展的内容の「情報2」が選択科目となる。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索