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教育

新聞使い「生き方」考える 中学の「道徳」教材に活用

 中学校でも4月から教科となる道徳。身近な問題を「自分ごと」と受け止めて生き方を考える教材として新聞記事を活用する学校がある。記事を通して生徒にどんな学びがあるのか、愛知県内の中学校2校を訪ねた。

◆愛知・大口中 身近な話題、共感招く

新聞記事を読み「自分の考え」をグループで共有する3年生=愛知県大口町の大口中で

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 大口町の大口中学校三年三組。新任教員の指導も兼ねて、松野卓郎教諭が今月一日、道徳の教壇に立った。「すごい」と思うクラスメートとその理由を挙げて隣同士で共有させた後、授業の題材となる新聞記事を配った。身近な人から記事に出てくる見知らぬ人へと対象を移し、どこをどうすごいと思ったのか自分の考えをまとめる。そこから「よりよく生きる喜び」を全体で考える狙いだ。

 記事は、血液の難病で十歳まで生きられないと幼少期に告げられた女性歌手が成人式を迎えたという内容で、一月十三日付の中日新聞朝刊に掲載された。生徒たちは、すごいと思ったり、心に残ったりした一カ所を選び、赤ペンでなぞる。

 冒頭に書かれた「難病と闘う人たちを勇気づけたい」のくだりに線を引いた男子生徒は「難病で苦しんでいるのに、少しでも助けようと思う気持ちがすごい」と素直な思いを述べた。一方、記事に登場した母親の「成人式の振り袖姿なんて、想像もできなかった」に着目した女子生徒は、「成人式は当たり前に存在すると思っていた。同じ物事でも感じ方が違うんだ」。

 道徳の教科化により、文部科学省の検定教科書を使って授業を行うのが四月以降の主な変更点。年三十五こまの授業を通じ、学習指導要領で定められた「向上心、個性の伸長」「思いやり、感謝」など二十二の項目を学ぶ。「よりよく生きる喜び」もその一つだ。

ギターの弾き語りでエールを送る松野卓郎教諭=愛知県大口町の大口中で

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 副読本中心だった道徳で松野教諭が新聞記事を使うのは「生き方を考えさせる教材として効果的」と考えたから。「教科書の偉人は時代も違い、『この人すごい』で終わってしまう。一般市民なら、その生き方を通して自分は何ができていないのか、簡単に諦めていないだろうか、などと自分に引き付けて考えられる」と卒業を間近に控えた三年生の教材に選んだ。

 若槻来夢さんは、配られたワークシートに自分の考えをびっしり書き込んだ。「十歳まで生きられないと言われた二十歳の女性というだけで親近感がわいて一気に読めた。こんな女性がいるんだって発見もある」

 メリットは教員にも。指導書が付いている教科書と違い、記事を使えば一から授業を組み立てる力が付く。「愛知子どもと楽しむ道徳授業研究会」の代表を務める松野教諭は生徒に感想を書かせる間、歌手の松山千春さんの曲「凡庸」をギターで弾き語りした。「授業で学んだことが生徒の心に残ってくれたら」。そんな願いをのせたメロディーが、鉛筆を走らせる生徒たちを包み込んだ。

◆愛知・章南中 学年ごとに目標設定

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 豊橋市の章南中学校では、発達段階に応じた新聞活用の目標がある。1年生は記事を読み思ったことをまとめる▼2年生は友達と比べ、自分の考えを深められるよう意見を交換▼3年生は一歩進み、記事に書かれた問題点を見つけ、解決策を考える、という内容だ。

 2018年度は2年生を中心に新聞学習を実施。道徳では、身近な環境問題に目を向けてほしいとの狙いから、地元のごみ焼却炉の故障を報じた記事を使い、ごみ減量に向けた解決策などを話し合った。

 同校は豊橋、田原両市にまたがる汐川(しおかわ)干潟の環境保全活動にも取り組む。「新聞には地域の話題が載る。自分たちの活動と結び付け、問題意識を持って仲間と意見をぶつけ合おうとするなど、主体的に学べる」と白井希知教諭は強調する。

 ただ、新聞を日常的に読む生徒は少ない。廊下の掲示板=写真=に教員が記事を張り、生徒が付箋に感想を書いて貼るという地道な取り組みも続ける。

 (福沢英里)

 

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