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教育

“起業”通じ生きる力学ぶ 小中のキャリア教育

 2020年度から順次実施される小中学校の新学習指導要領で充実がうたわれるキャリア教育。将来の夢探しや職業体験に終始せず、社会で自立して生きていくために必要な能力や態度を育てる「生き方教育」ととらえられている。児童の意欲を引き出す“起業”体験に取り組む小学校や、地域を巻き込む仕組みを作った商工会議所の先行例を紹介する。

◆地域と協力、特産PR 愛知・佐布里小

クイズ形式で佐布里梅や米にまつわる歴史と文化などを紹介する佐布里小5年生=愛知県知多市の佐布里緑と花のふれあい公園・梅の館ホールで

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 一月十二日、愛知県知多市内の公園で開かれた同市佐布里(そうり)小の学習発表会。五年生が特産の佐布里梅や米について調べた内容を、紙芝居にして紹介した。基にしたのは、星城大(愛知県東海市)や市の資料館など地域の大人と一年かけて作成した、佐布里地区を紹介する冊子。手掛けたのは同小で活動中の模擬会社「U&K5in佐布里」だ。

 社員は全五年生。登記はしていないが、社長や副社長、梅部長、米部長ら役員計十人も投票などで選ぶ。事業の目的は佐布里の梅と米のPRだ。

 活動は総合学習の時間が中心。冊子は書籍やインターネットで情報を調べ、分からないことは専門家に尋ねてまとめた。栄養学専門の大学教授に成分の検査を依頼し、佐布里梅にクエン酸が他種より多く含まれていることも突き止めた。学校にいるだけでは出会わない大人と協力する体験だ。

 冊子は地域の祭り会場や市内の小学校で配られる予定。リーダーの高石咲良さんは「分かりやすい文章にするにはどうしたらいいか班で何度も話し合った」と話し、「人と関わる力がついたかな」とはにかんだ。

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 同小は二〇一六年度、文部科学省の「起業体験推進事業」の研究委託を受け、県や市からの委託もあり起業を軸にしたキャリア教育を全校に拡大。キャリア教育で育てたい能力として国が示す四項目=表=に「郷土への愛着」を加え、「関わる力、やり抜く力、解決する力、えがく力、郷土愛」を「佐布里っ子ファイブ」と名付けて周知に努める。

 起業に力を入れるのは、自分たちで設定した目標に向かって、仲間や大人と試行錯誤し課題を解決していく中で、社会に出てから必要な力が育めると考えたから。教員はあくまでサポート役。学年主任の近藤倫生教諭は「学級委員の経験がない児童も、自ら会社の責任ある立場に就き、仲間をまとめ積極的にコミュニケーションを取る姿が見られた」と成長を喜ぶ。

 意欲向上にもつながった。一七年四月と翌年一月、二〜六年生を対象に実施したアンケートを比べると、「なんでもチャンスだと思ってやってみようと思う」児童の割合が13%上昇した。教務主任の荒尾敏雄教諭は「地域と関わり、地域の人たちに喜んでほしいという気持ちから意欲が引き出された」と意義を話す。

◆学校と企業つなぐ支援 瀬戸商工会議所 

 新学習指導要領に盛り込まれたキーワード「社会に開かれた教育課程」の下、地域との協働がキャリア教育にも求められる。瀬戸商工会議所(愛知県瀬戸市)は全国に先駆け、地域を巻き込んだキャリア教育の仕組みを二〇〇五年度から始めている。子どもたちに、いずれ瀬戸に戻ってきてほしいとの思いという。

 市教育委員会などと「瀬戸キャリア教育推進協議会」を設立し、学校と地域の企業などをつなぐ民間の専門職「キャリア教育コーディネーター」を一人、専任で置いた。小中学校の授業に組み込めるワークショップや年間を通じた起業体験学習などのプログラムを用意。成果発表会など振り返りの支援にも力を入れる。

 同協議会でコーディネーターを務める山田素子さんは「教員の負担にならない支援が必要」と強調。学校のニーズと約二百ある登録事業者の意向をアンケートを通じてくみ取り、調整してきた。「子どもたちには、大人っていいなと感じ、社会で働くイメージを持ちながら学ぶ目的を見つけてほしい」と話す。

 コーディネーターの育成講座を設けるNPO法人アスクネット(名古屋市)の白上昌子代表理事は「学校のカリキュラム作りにも貢献できる専門性を持った人材育成が必要」と指摘する。

 (福沢英里)

 

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