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主権者教育、多角的に授業 地域の課題は自分の問題

主張の根拠にするごみの処理量をインターネットで調べる生徒たち=愛知県知立市の知立東高で

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 選挙権年齢が18歳に引き下げられ、身近になった主権者教育。仮想の選挙をして有権者を疑似体験する様子がよく伝えられるが、模擬投票だけに頼らずに、主権者として必要な力を付ける工夫もある。どんな取り組みなのか。

 十月下旬、愛知県の主権者教育の研究指定校である知立東高校(同県知立市)では総合学習の時間に、二、三年生が、地元・知立市の課題を解決する政策について意見を出し合っていた。市の未来を市職員と共に議論するシンポジウムを翌月に控え、その準備だ。

 廊下に置かれたパソコンで、生徒たちが主張の裏付けとなるデータを検索していた。例えばごみ処理に関連する政策なら、ごみの量や処理コストなどで同規模の市と比べる。「普段から公民科の授業で『その根拠は何?』という問い掛けを意識的にしている」と、主権者教育の研究責任者の増井強志教諭は説明する。

 同校の研究は三年目。生徒が主権者の意識を持ち、地域社会の問題に主体的に関われるようになることが狙いだ。公民科を中心に展開している。

 一年目は「主権者に必要な資質・能力」を教員が考え、「知識を生かし、根拠に基づいて、さまざまな地域の問題を考える力」と結論づけた。根拠の問い掛けは、力を付ける仕掛けの一つだ。

 学んだ知識を生かして生徒が地域の課題を考える機会も設けた。三年の倫理の授業では町内会長に来てもらい、町内会のあり方を話し合った。三年間で模擬投票を実施したのは昨年七月の一度だけだ。

 十一月二十日のシンポジウムでは、生徒の代表七人が、歴史を生かしたスタンプラリーや、空き店舗を使った振興策を、期待する効果と課題を挙げて提案。市職員の質問に反論も交えて答えた。発表した生徒たちは「知立市のことを多く学べた」「具体的な根拠を深く調べて発表できて良かった」と話していた。

 主権者教育に詳しい桑原敏典・岡山大教育学部教授は「主権者教育は、若者に、政治や社会に関心を持たせ、その問題を考え、判断する力を付ける教育」と指摘。「選挙の重要性を伝え、参加を呼びかけるだけでは限界がある。選挙を通じて自分たちの意思を反映させたいと若者自身が思うことが重要。根拠を示して意見を述べることは、支持を求め、他者を説得するのに必要なスキルだ」と話す。

◆有権者像学ぶ模擬選挙も 違う立場演じ投票

候補者の政策を分析し、比較する今須中と柏原中の生徒たち=岐阜県関ケ原町の今須中で

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 模擬投票も進化している。岐阜県関ケ原町今須中学校の藤井健太郎教諭は昨年から、さまざまな有権者の立場で考える仕掛けをし、生徒たちに投票させている。先月あった社会科の授業では、隣接する滋賀県米原市柏原中学校の生徒も加わり、三年生が架空の市長選を題材に意見を交わした。

 まずは、与えられた資料から市の現状を読み取り、班ごとに四人の候補者の政策を分析。争点は工場の跡地利用で、新しいごみ処理施設建設を訴える候補と、公園建設を目指す候補に支持が分かれた。「ごみ処理施設を造れば、今の施設より維持費も排出する二酸化炭素(CO2)も削減でき持続可能な社会のためになる」「公園の建設費が一番少ない」など理由も付けた。

 投票前に、藤井教諭は、生徒たちにくじを引かせた。くじには「五十代女性、主婦、子ども三人」「八十代女性、一人暮らし、毎日畑仕事をする」などと有権者像が書かれ、その人物になりきり投票した。その結果、介護施設と保育所を併設する「総合福祉センター」建設を訴える候補が当選。生徒たちは「立場が変われば、見え方が大きく変わる」と確認した。

 (佐橋大)

 

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