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教育

消費者教育「当事者」目線で 18歳成人に向け高校で授業

「社会への扉」を教材に使い、班ごとにクレジットカード使用の賛否を話し合う高校生=愛知県碧南市の碧南高校で

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 民法に定められた成人年齢が二〇二二年四月から十八歳に引き下げられ、十八、十九歳で親の同意なしにローンを組んで高額な商品を買ったり、借金をしたりといった「契約」が結べるようになる。高校では、生徒に当事者意識を持ってもらえるよう、限られた授業時間の中、より実践的な消費者教育に知恵を絞る。

 「十八歳からクレジットカードが使えることについて賛成か反対か、五者の立場で考えよう」。今月初め、愛知県立碧南高校三年生の文系クラスに所属する生徒たちが消費者、販売店、クレジットカード会社、政府、消費生活センターの五者別に班に分かれ、メリットとデメリットをホワイトボードに書き出した。

 「賛成。より高い物が買えるから便利になる」と歓迎する消費者班。政府班も「カードを作る人が増えて商品が売れるから景気が良くなり物価も上がる」と賛成の立場だ。一方、消費生活センターとして「反対」と書いた班は「センターの知名度は上がるが、被害の相談が増える」と訴えた。発表を聞いていた地歴・公民科の関谷雅樹先生は「『使い過ぎに注意すれば』などと条件付きの賛成も目立つ。便利さだけでなく責任も伴うことを理解していれば現時点では合格」と評価した。参加した野崎茉与さんは「早い段階から社会を知ることができるのはいいが、慎重に行動しなければならないと思った」と怖さも感じたようだった。

 授業で活用したのは消費者庁が高校生向けに作った「社会への扉」という冊子教材。希望する高校に無償で配布している。最初の見開きページで「店で商品を買ったが、使う前に不要になった。解約できる?」など、身近な十二の実例がクイズ形式で書かれ、中面でトラブルの実態が分かりやすく解説されている。「いったん結んだ契約はなぜ守らねばならないのか、消費者、事業者の立場で考えよう」などグループで討議するテーマも盛り込まれている。

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 通常、高校は消費者教育に公民科や家庭科の時間を充て、契約や多重債務といった内容に割ける時間は年に一、二時間程度。二十歳以上でトラブルが増える現状=グラフ=を踏まえ、「将来的には十八歳でカードローン破産もありうる」と危機感を抱く関谷先生は不十分とみる。

 そこで公民科だけでなく総合的な学習の時間も使って二時間分を確保。内容は「消費者保護と自立支援」「多重債務」の二点に絞った。二二年度開始の新しい学習指導要領は消費者保護だけでなく、自立した消費者を育てる重要性にも触れている。関谷先生は「消費者トラブルにあったとき、あなたならどうする?」の問いをグループで考えさせ、消費生活センターへの相談や事業者に知らせることなどが解決の糸口になり、より安全な社会をつくるとクラス全体で確認した。

◆消費者庁の冊子を活用 外部講師の授業増加も

 消費者庁は二〇年度には、「社会への扉」を活用した授業が全国の高校で行われることを目指す。徳島県では昨年度、全域の高校で先行実施されたが中部地方はこれからだ。愛知県は二〇年度から順次進め、来年度からは県弁護士会などの協力で外部講師を活用した授業も増やす。岐阜県では二十年ほど前から独自の副読本「おっと!落とし穴」を高校一年生向けに作成しており、内容を見直すという。三重県も消費生活相談員などを各校に派遣する「青少年消費生活講座」の中身を充実させていく予定だ。

 高校生が自身の問題と考えられるように、机上の知識にとどまらない授業を求める声もある。消費者庁の消費者教育推進会議会長を務める東珠実・椙山女学園大教授は「例えばクレジットカードの功罪を話し合い、A4一枚のリーフレットにまとめ、自分たちが実際に啓発者になってみる。だまされてはいけないという意識の向上につながる」と提案する。

 (福沢英里)

 

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