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教育

性の多様性、小学校で啓発 正しい知識で偏見防ぐ試み

性的少数者らの話を聞く児童たち=愛知県岡崎市の羽根小で

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 LGBTに代表される性の多様性について、子どもたちが学ぶ取り組みが、一部の小学校で始まっている。正しい知識の不足から来る性的少数者への偏見やいじめを防ぐ試み。同時に、性的少数者の児童が抱きがちな孤独感を和らげる取り組みでもある。

 愛知県岡崎市の羽根小学校では六月、保健に関する学習行事「学校保健委員会」で、四〜六年生約三百四十人と保護者約百人が、LGBTの人の話を聞いた。

 当事者の話から、性の多様性を知り、人々の多様性に理解を広げて、自分らしさを大切にする心や、違いを認め合う心を育むのが狙い。学校の依頼を受け、LGBTの啓発活動をするNPO法人「ASTA(アスタ)」(名古屋市)が当事者らを派遣した。

 体と心の性が違う人がいることや、その人たちの抱える悩みを聞いた。児童の感想では「『自分の好みは、自分で決めていいんだ』と聞いて、心がすっきりした」「LGBTの人が悩んでいたり、困っていたりしたら助けたい」といった声が寄せられた。

 児童たちが今後、いろいろな人に出会ったときに、お互いが本音を言い、認め合えるようにしたいとの養護教諭の内田都恵さんらの考えを基に企画した。

 三重県などでLGBTの啓発活動をする一般社団法人「ELLY(エリー)」(同県伊勢市)の山口颯一代表(28)は、小学生向けに三年前から出前授業をしている。子どもたちに教えるため訪れる小学校は年間十数校。子どものころ女性であることに違和感を抱き、悩んだ経験を伝えている。「LGBTが特別な存在ではないことを感じてもらえたら」と山口さん。子どもたちは、LGBTをやゆする言葉で傷つく人がいると知り、憤りを山口さんに伝えてくれる。「子どもたちが変われば社会が変わる」と山口さんは力を込める。

       ◇

多様な性を学ぶため、小学校5、6年生向けにReBitが作った教材

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 「多様な性的指向、性自認の理解を広げることは、学校がやらなければいけないこと。文部科学省の通知ですから」。千葉大教育学部の片岡洋子教授は九月、LGBT支援のNPO法人「ReBit(リビット)」が都内で開いたイベントで、多様な性の存在を小学生にも積極的に伝えるべきだと指摘した。

 根拠の一つは、いじめ防止対策の重点対象として性的少数者を記した昨年三月の文科省通知。性的少数者へのいじめや差別は、無理解から来ているとし、正しい知識を伝える取り組みが、いじめを防ぎ、当事者の人権を守ることになる。また、二年後から全面実施の小学校学習指導要領には、学校は多様な価値観を持つ人と協働する人を育てる旨の文言があり、これも根拠になりうるという。

 指導要領では、三、四年の体育で、思春期の心と体の変化を教えるとしていて、多様な性の記述はない。片岡教授は「学習指導要領には、最低これを教えなさいということが書いてあるだけ」とし、記述がなくても多様な性の授業はできると強調。心と体の性が一致しない人の過半数が、小学校入学前から性別に違和感を持っていたとの調査を引用し、「小学校低学年で始めて早すぎることはない。性的少数者も『自分は異常じゃない』と思える」と語った。特別に時間を設けなくても、子どもたちから、LGBTをからかう発言が出たときに介入するだけでもいいとした。

 ReBitは、当事者を呼ばなくても、相互理解や寛容の姿勢を学べる小学五、六年生向けの「道徳」の教材を、九月末から提供し始めた。来年四月に導入される中学校の道徳の教科書には、八社中四社で性的少数者の記述があり、道徳で性的少数者を扱うことは特別ではない。

 教材は、当事者の体験談をまとめた十五分の映像教材や指導案から成る。「人の性のあり方は、体の性だけで決まるわけではないんだね」との説明を入れるなど、昨年作った中学生向けの教材より平易な言葉を使っている。小学校教員には無料、それ以外には有料で提供。希望者はホームページ(「ReBit」で検索)から申し込む。

 (佐橋大)

 <LGBT> レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(体と心の性が一致しない人)の頭文字をとった総称。性的少数者は他に、性愛や性欲を感じない「アセクシュアル」の人なども含む、さらに広い概念。

 

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