トップ > 特集・連載 > 教育 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

教育

教員の労働時間、一歩ずつ短縮へ タイムカードなど活用

学習会で見直し「理想の1日の過ごし方」をシートに書き込み、互いの生活スタイルを確認し合う教員たち=名古屋市港区の東築地小で

写真

 タイムカードなどを活用して教員の勤務時間を管理する小中学校、高校が増えている。仕事内容の見直しも必要だ。名古屋市港区の東築地小学校では、専門の委員会をつくって労働時間の削減効果を数字で示し、教員の意識改革と業務改善をセットで進めている。働き過ぎる教員にどう働きかけるかが課題だ。

 午前八時十五分。東築地小の職員室で、教務主任が「朝の打ち合わせを始めます」と教員に呼び掛けた。連絡事項を共有し、一分ほどで終了。教員はそれぞれの教室へ向かった。毎日あった打ち合わせを週三回に、周知したい内容はメモに書いて事前に配ることで、かかる時間を十分ほど短縮した。教員の事務作業の時間を確保しようと今年から始めた業務改善の一つで、始業時間も早まった。

 名古屋市では昨年度から小中学校でタイムカードを導入、教員の勤務実態を把握できるようになった。昨年四月、同小に赴任した中村浩二教頭が調べると、一般に過労死ラインとされる「時間外労働月八十時間」を超える教員が、二十八人中九人、運動会があった五月は十人と、それぞれ三割を超えていた。同時期、文部科学省が公表した「教員勤務実態調査」の結果とほぼ同じ割合。疲れきった顔をした教員、「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」と頭を下げて帰るママ教員の姿も気になった。

 中村教頭はまず意識改革が必要と考え、昨年十一月から不定期に「教頭だより」を発行。なぜ今、働き方改革なのか、長時間労働を見直すにはどうしたらいいか、などを発信。教員に「理想の一日の過ごし方」を考えてもらう校内学習会も開いた。二十四時間を円グラフで表し、最初に必要な睡眠時間を書き込む。理想とする夕食や退校の時間を書くと、学校にいられる時間には限りがあることが分かる。子どもの送迎や介護など、各自が抱える事情も知ることができる。結果、「部活指導で遅くまで残る先生がいるのに帰りづらい」と遠慮がちだったママ教員も学校を出やすくなった。

 こういった意識改革を基に、朝の会議時間の短縮や、下校時刻を二十五分早める日課表の変更、部活動を週三日、一時間半とする制限、十八時以降の留守番電話導入などの業務改善も進めた。教員にアンケートを取ると、約八割が「事務処理の時間を確保できた」。昨春に三割を超えていた月八十時間以上の時間外労働者も今春は一割台に減った。

 とはいえ、生み出された時間を新たな業務に回してしまう教員もいる。働き過ぎる教員にはベテランや先輩ママ教員から退校を促すさりげない声掛けをし、学校行事の取り組み方も見直すなど試行錯誤は続く。

 中村教頭は二年後に迫る新学習指導要領の完全実施を挙げ、「教える内容も学び方も変わり、外国語の授業時間も増える。先生が学ぶ時間を確保するためにも、学校が担うべきことを今のうちに精選する必要がある」と指摘。市内でも教員の働き方の見直しは始まったばかり。日本教育経営学会に所属し自ら改革法を学ぶ中村教頭は、他県で講演する機会が増えている。

◆「働き方改革、現場の意識次第」

 教員の時間管理の意識が希薄だった学校現場も変わりつつある。文科省は今年二月、「タイムカードなどにより勤務時間を客観的に把握し、集計するシステムを直ちに構築するよう努めること」などと各地の教育委員会に通知した。同省の調査によると、四月時点で「情報通信技術(ICT)の活用やタイムカードなどで勤務時間を客観的に把握している」と答えた教委は十八都道府県、九政令市、六百九十六市区町村で、いずれも昨年同期に比べて増えた。

 専用サイトにスマートフォンからアクセスすることで、出先からでも出退勤を申告できるようにしたのは岐阜県教育委員会。今月から、高校と特別支援学校の教員を対象に始めた。勤務時間の記録を習慣付けることなどがねらい。

 教員からは「申告しやすくなった」との声が上がる一方、県立高校の三十代男性教諭は不十分とみる。「まずは自分が定時で帰る努力をしながら、後輩の先生方に早く帰ることを促し、日ごろから働き方について話すことを心掛けている。結局は管理職はじめ教員の意識を変えないと、今のままでは限界を感じる」

 (福沢英里)

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索