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幼稚園教育要領どう変わった? 小中高との連動が明確化

 幼稚園で、小中高校の学習指導要領にあたる「幼稚園教育要領」が改定され、本年度から新要領が始まっている。思考力や判断力、表現力など小学校以降で育成が期待される力の基礎を、幼稚園で身に付けるよう明確に示し徹底させたのが特徴だ。そうした力が遊びを通して育まれる教育を、幼稚園側は再確認している。

「かき氷屋さんごっこ」をして遊ぶ園児たち=名古屋市東区の愛知教育大付属幼稚園で

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 名古屋市東区にある愛知教育大付属幼稚園。四歳児の部屋では、園児たちが、それぞれに、したい遊びをしていた。トイレットペーパーの芯に折り紙を巻いてバッタを作るのに夢中な子、かき氷屋さんごっこで店員になりきる子。先生は、子どもたちの求めに応じてお客さん役をして、想像の世界を広げる手助けをする。「先生たちは、子どもたちが『自らやってみたい』と思えるような、教材や環境作り、声かけを工夫しています」と中山恵子副園長は話す。

 古新聞や水性、油性のペン、のり、はさみ…。教室には、子どもたちの年齢に合った工作の材料が並んでいて、いつでも自由に創作活動ができる。遊戯室では、ボールとかごを使った遊びに興じていた五歳児たちが、自分たちがもっと楽しめるように、遊びのやり方やルールを仲間同士で工夫していた。

 幼児教育の研究場所でもある同園は、遊びを通じた学びに力を入れてきた。新教育要領が実施された四月以降もそれは変わっていないという。「遊びの中でこそ、子どもは意思の伝え方を学び、数や文字への関心や、人と関わる力を高めることができます」

      ◇ 

 幼稚園での遊びなどの体験が、小学校以降の学びに結び付いているのか−。今年七月に行われた教育研究集会(全国国立大学付属学校連盟幼稚園部会主催)では、甲府市にある山梨大教育学部付属幼稚園の野田多佳子教諭が、トンボの幼虫のヤゴの飼育を通して、園児が知的欲求を膨らませていったことを報告した。

 同園では十年ほど前、池で飼っていたザリガニが夏に死んだ。休み明けの池にいたのがヤゴだった。「ホタルの幼虫だ」と言う子もいたが、教諭らは、あえて修正せず、絵本を通じて正しい情報に触れさせた。次のアクシデントはヤゴの共食い。頭のないヤゴの死骸を見た園児は驚いたが、えさの必要性に気付くことになった。

幼稚園での実践が報告された教育研究集会=名古屋市内で

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 十二月には池が凍った。「ヤゴも凍っちゃう」と心配した園児たちは、教諭の言葉を頼りに、大学の専門家に助言を求めることに。その助言を基に、どう環境を整備するか、園児同士で話し合い、結論を出した。「安易に答えを出さずに、関わりを広げることを心掛けた」と野田教諭は話す。下級生向けにヤゴを観察、記録した「図鑑」や、ヤゴについての紙芝居を作るなど、園児たちの創造は、どんどん広がった。野田教諭は、こうした取り組みが、小学校の学習指導要領で実現を掲げる「主体的・対話的で深い学び」につながっていると指摘した。

◆幼児期に育む力、具体的に

 幼稚園教育要領は約十年に一度、改定される。教育研究集会で講演した河合優子・文部科学省幼児教育課幼児教育調査官によると、今回の改定のポイントは、小中学校などと一体的に、幼稚園で育みたい資質、能力を明確化したことだ。

 具体的には「知識および技能の基礎」「思考力、判断力、表現力などの基礎」「学びに向かう力、人間性など」の三本柱だ。小中学校、高校で育成を目指す「知識、技能」「思考力、判断力、表現力など」「学びに向かう力、人間性など」に対応している。

 河合調査官は、幼稚園では、これらの力を「個別に取り出して身に付けさせるのではなく、遊びを通して総合的な指導を行う中で一体的に育んでいくことが重要だ」と説明。「環境を整え、主体的な学びを促すこと」が、幼稚園教育の本質だと説いた。

 育みたい資質・能力を具体化したものとして、十項目の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」も初めて示した。「思考力の芽生え」や「自立心」「道徳性・規範意識の芽生え」「豊かな感性と表現」などだ。河合調査官は「『姿』は到達目標ではなく、幼稚園での指導や小学校への接続の際に着目してほしいポイント」と説明した。

 (佐橋大)

 

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