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高校生・大学生

膨らむ国への不信感 今年の高校教育の話題を振り返る

 二〇二〇年度から始まる大学入学共通テストで目玉とされていた英語民間検定試験の活用と国語・数学の記述式の導入が、いずれも延期となった一九年。新しい学習指導要領に盛り込まれた高校国語の科目再編も話題となった。高校教育に関わる二つのニュースを振り返る。

◆英語民間試験導入延期 共通テスト目的見えず

大学入学共通テストの国語・数学の記述式問題と英語民間試験の導入に抗議する高校生ら=東京・霞が関の文科省前で

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 萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言が引き金となり、導入が延期された英語の民間試験。東京大で教育学部長や高大接続研究開発センター長などを歴任した南風原朝和(はえばらともかず)・同大名誉教授は「予想された結果。そもそも入学時にスピーキングの評価も必要という大学が、どれほどあったのか」と振り返る。

 高校教育、大学教育、入試制度を一体的に見直す文科省の「高大接続システム改革会議」で委員を務めた南風原名誉教授。二日に開かれた日本記者クラブでの記者会見では「英語は大学に入ってから鍛えればいい。入学時点でどの程度の英語力が必要かは各大学で考えること」と強調。大学で多様な英語教育のプログラムを提供することが望ましいとの見解を示した。

 民間試験の導入延期を決めた文科省は、新たに検討会議を設置して、英語入試の仕組みを考える方針。南風原名誉教授は「大事なことは共通テストの目的。まずは大学の学部や学科ごとに、個別試験で測る内容も考慮して、共通テストで評価すべきものは何かを検討するのが先だ」と訴える。

 英語の民間検定試験に続き、十七日には、共通テストで実施予定だった国語・数学の記述式問題の導入も延期が発表された。共通テストの二本柱がなくなった状況に、高校の教員からは、国が主導する改革に対する疑問の声が上がる。

 愛知県内の私立高校教諭は「振り回されている受験生や家族も、『結局何を求めているのか』と行政への不信感を高めている」。入試改革を通して英語力を高めようという文科省の狙いについて、「教育改革は試験の内容を変えて現場を縛ることではないはず。現場の創意工夫を促す方向で進めてほしい」と注文を付けた。

◆大学側対応分かれる

 大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入見送りを受け、各大学が対応を明らかにしている。出願資格に用いる予定だった名古屋大、共通テストの英語に加点するとしていた名古屋工業大など、国立大の多くが活用しない方針を示した。

 私大は大学によって対応が分かれている。立教大は一部を除いて大学独自の英語試験は行わず、2年以内に受けた民間試験の成績を提出してもらい、民間試験か共通テストの英語試験のいずれかを合否判定に使う。当初は民間試験だけで評価する予定だったが、国の導入見送りを受けて共通テストの英語による受験も可能とした。

 これまでもセンター試験を利用した入試で民間試験を活用してきた愛知大。さらに来年度は一部の入試で、民間試験の成績が指定の基準を上回っていれば、大学独自の英語試験に加点する。民間試験は2018年4月以降に取得した成績を対象とする。

◆実用性重視の国語再編 「文学を軽視」識者ら懸念

新学習指導要領などこれからの国語教育について話す紅野教授=名古屋市千種区で

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 今年、研究者らの間で注目されたのが、二二年度から本格実施される高校の新学習指導要領で科目が再編される国語だ。

 発端の一つは、一五年に実施された高校一年を対象とした学習到達度調査(PISA)。参加国・地域中で日本の読解力の順位が四位から八位に下がったことなどから、文科省は「論理的な文章」や「実用的な文章」の読み書きに重点を置いた改革を進めた。

 今月三日に公表された一八年実施のPISAの読解力は十五位で、さらに順位を落とした。萩生田文科相は「判断の根拠や理由を明確にしながら自分の考えを述べることなどについて、引き続き、課題が見られる」とコメント。「課題に対応した新学習指導要領を着実に実施する」と方針を示した。

 新学習指導要領では、必修科目だった「国語総合」が、「現代の国語」と「言語文化」になり、選択科目に「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」が新設される。議事録や企画書、法令文などの「実用的な文章」を扱うことで、情報処理能力と論理的な考え方を育むことが重視される一方、単位数や入試対策の関係から、文学や古典を扱う機会が減るとみられている。

 これに対し、日本大文理学部の紅野謙介教授(63)は「法律や予算の申請方法などを教材としても、読解力は育たない」と指摘する。「読むことは表面上の意味をたどることじゃなく、背後にある論理を見抜くために想像力や思考力を活用すること。評論や小説やエッセーなど人の心を捉える言葉に触れることが重要だ」

 東京大大学院人文社会系研究科の安藤宏教授(61)は、今回のPISAの結果を踏まえ、「情報処理能力がない、という問題じゃない。読解力の根本が崩壊しつつある。相手が何を考えているかを考える力は、文学を読むことで培われる。今こそ、じっくりと文学と向き合う時だ」と話す。

 (大沢悠、諏訪慧)

 

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