トップ > 特集・連載 > 高校生・大学生 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

高校生・大学生

<スタッフが聞く> 資生堂トップヘアメイクアップアーティスト・計良宏文さん

計良宏文さん

写真

 「資生堂トップヘアメイクアップアーティスト」として、予想を超えた「美」を生み出す計良宏文さん(48)。髪形やメークを自在に操り、資生堂の中でも優れた技術を誇る芸術家は、どのような哲学を持っているのだろうか。高校生スタッフが迫った。

 ニワトリのとさかのように髪を逆立てたかつらを手に、計良さんが話し始めた。「新潟県の佐渡島で過ごした高校時代、こんな髪形で学校に行っていた」。当時はバンドがはやっていて、音楽部に所属。ドラマーとしてビジュアル系バンドの曲を演奏していた。

 「髪の毛うまいね。俺のもやって」。友達から頼まれて髪の毛をセットしてあげると、喜んでもらえた。その反応が、美容の道に進んだ原点だ。兄はファッションデザイナーで、姉は美容師。二人の影響も大きかった。

 高校卒業後、美術大に行くか、服飾を学ぶか、美容関係に進むかで迷った。「服は誰が着るか分からない。だけど、ヘアメークは自分の手から生まれたもので、相手からすぐに反応がある」。そう感じて、美容の道に進むことを決めた。専門学校を出た後、資生堂に入社。付属のサロンで美容師として七年ほど働いた後、ヘアメーキャップアーティストとして活動を始めた。

 ヘアメーキャップアーティストが社員として所属する企業はめずらしく、資生堂には四十人ほどが在籍する。その中でも「トップ」の名が付き、優れた技術を誇る計良さんは、自社商品の広告の撮影の際に、モデルや女優のヘアメークを担当。他社の企業広告でも、指名が入る。

 仕事は広告とファッションショーの裏方が八割ほど。そのほかにも、美容系の雑誌に作品が掲載されたり、アイドルのCDジャケットの撮影時に指名されたり、活動の範囲は幅広い。

 モデルや女優、写真家やスタイリストなどとともに一つの作品を作り上げる仕事。計良さんは「期待を超えたい。関わる人たちが想像しているものの先を行きたい。思いも寄らない、いい結果になるようにしたい」と語る。

資生堂トップヘアメイクアップアーティストの計良宏文さん(中)の話を聞く高校生スタッフ=東京都港区で

写真

 八年前、アイドルグループ「でんぱ組・inc」のヘアメークを担当した時のこと。アニメのキャラクターなどをかたどったフィギュア(人形)のようなファッションに触発され、厚みが二、三センチある発泡スチロールの型の上に人毛を貼り付けたかつらを作った。フィギュアのようにボリュームのある髪形に仕上がった。

 美容関係者から「髪形ではない」との声も上がったが、ロンドンにある欧州最大級の文化施設バービカンセンターに認められた。現在、同センター主催の巡回展で欧州各地を回っている。

 その作品に目を付けた愛知県から、県のPR動画「モノスゴ愛知でマツケン」に出演する俳優の松平健さんがかぶる犬山城のかつらを作るように頼まれた。当時は「先を行き過ぎた」作品が、今の仕事につながっていった。

 ヘアメークによって限りなく変わる外見。「個性って、外見だと思う。外見が変わると内面も変わる」。一人の女性に三十九種類のヘアメークをしたこともある計良さんが振り返って言った。

 「濃いメークをした時、モデルの女性の声が大きくなったり、『ガムかんでいいですか』と言ってきたり、外見に引っ張られて内面が変わってきた。もちろん、内面から外見が変わる場合もある。相互関係でできている。ヘアメークには外見に自信がない子たちの背中を押し出す力がある」

 内面も外見も美しくなるために、高校生がすることは? そう問われた計良さんは「遊びでも何でもがむしゃらに一生懸命やって、何か打ち込めることを見つけてほしい」とアドバイスした。

 (構成・大沢悠)

 <けら・ひろふみ> 1971年、新潟県佐渡市生まれ。資生堂美容技術専門学校を卒業後、92年、資生堂に入社。ヘアケアブランド「TSUBAKI」などの広告や、ニューヨークやパリ、東京でファッションブランドのショーを手がける。ヘアメーキャップアーティストとして日本で初めて公立美術館(埼玉県立近代美術館)で個展を開催。25日に女性モード社から初の書籍を発売予定。

◆スタッフ感想

 堀 詩(高1・名古屋市熱田区) 期待を超える。計良さんの信念であるこの言葉を聞いたとき、思わず心が震えた。期待、想像の一歩先を超えようとする姿勢が、計良さんの独自性あふれるヘアメークに影響しているのだと思った。

 足立 周(高2・名古屋市中村区) 自分の表現ばかりを主張するのではなく、人々の期待に沿った、でもちょっとだけ期待を超えるような作品を作ろうとするところが、アーティストとして生きていくために必要なことなのだと教えてもらった。

 坂部 有里(高2・三重県川越町) 取材を通して感じたことは、「周りの人を喜ばせたい」という思い。高校時代、友人の髪をアレンジした経験がその思いの原点になっているのだと知り、私の「今」も将来の何かに深くつながっていくのだろうかとわくわくした。

 長谷部 美優(高2・愛知県岩倉市) 理想に固執して独創力に頼って極めていくというイメージだったが、新しさなどを追求し、「人々の想像の少し先を狙う」という話が印象的だった。また、計良さんの作品から、自分という存在は案外簡単に変えられるものだと痛感した。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索