トップ > 特集・連載 > 高校生・大学生 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

高校生・大学生

愛知の安本さんが島根の高校へ県外留学 町のPR動画を発案、作成

昼休みに弁当を食べながら友達とおしゃべりする安本さん(左)。高校の周りには豊かな自然が広がる=島根県津和野町の津和野高校で

写真

 親元を離れ、見知らぬ土地の高校へ−。なじみのない街での経験や住民との交流を通し、主体性を育む「県外留学」が注目されている。橋渡しをする運営団体は、偏差値や学歴の枠を超えた、社会に出てから必要になる力の育成を狙う。

 島根県津和野町にある津和野高校三年生の教室。「あ、味玉が入ってる」。昼休み、いつものように友達とおしゃべりをしながら箸を進める安本沙羅さん(18)は、愛知県みよし市から来た「留学生」だ。

 城下町の面影を残す津和野町は、山にかかる朝霧ややぶさめ神事などで知られる観光地。安本さんには縁もゆかりもなかったが、中学三年の夏、父親から島根県の高校が県外から生徒を募っていると聞き、説明会に足を運んだ。

 中学校は授業と部活の日々。受け身の毎日に物足りなさを感じていた。「高校では何か違うことをしてみたいと思った」と関心を強め、現地の学校を見て回った。

 初めて訪れた津和野では、知らない大人たちがあいさつをしてくれた。「住民との距離が近いな」。地元とは違う雰囲気が決め手になった。両親も「視野を広げたほうがいい」と背中を押してくれた。

 入学当初は実家に帰りたいと思うこともあったが、地元の人と話をしたり、ご飯を食べたりするうちに、愛着が増していった。

安本さん(左)らが作った津和野町と津和野高校をPRする動画「エンジョイ!津和野リュウ学!」の1シーン

写真

 地元の同級生は「山しかない」と言う。だけど、安本さんには「きれいな自然や町並みもあり、住んでいる人もいい」と映った。その思いが、活動の柱になった。「津和野のことを、もっと知ってもらいたい」。一年の冬、町や高校をPRする動画を作り始めた。

 休み時間や休日を使い、同じ県外留学生の友達と一緒に踊りと歌を考えた。撮影場所の許可を取り、地元の人たちの協力を得て、半年ほどかけて五分弱の動画「エンジョイ!津和野リュウ学!」を完成させた。動画は反響を呼び、地域のPRを考える広島県の高校生が話を聞きに来たこともあった。

 二年の時は、地元の酒蔵を英語で紹介するパンフレットを作成。地元の和菓子を英語でPRするポップ広告も作った。

 将来は、観光客と地元の人の交流拠点となる飲食店を津和野で開きたいと考えている。そのため、大学では「食」を学ぶつもりだ。

 「中学までは、みんなと同じがいいと思っていた。やりたいことがあっても『人に何か言われるからやらないでおこう』と消極的な部分があった」と振り返る安本さんは今、自分の中に大きな変化を感じている。

 「思ったことを口に出してみよう、って。そうすると、一緒になって熱くなってくれる大人がいる。自分ができることに挑戦しようと思えるようになった。多くの人と出会えた充実した時間だった」

 (大沢悠)

◆全国55校で留学生受け入れ

写真

 県外留学制度「地域みらい留学」を営む松江市の一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームによると、県外の留学生を受け入れている高校は全国二十六道県に五十五校。中部地方は長野、静岡、三重、滋賀の各県に一校ずつある。寮があり、地域の特色を生かした授業をしていることなどが要件になっている。

 東京や名古屋などで開く説明会「地域みらい留学フェスタ」は、初開催の昨年の参加者が千百七十三人。今年は倍近い二千百人ほどが会場に訪れた。

 水谷智之代表理事(55)は「社会に出たら、答えのある勉強だけでは通じない。自分がどうしたいかという意志が必要。自分でやると決めたものに対し、人はエネルギーが出る。いろいろな出会いや体験をして、自分が何に心が震えるかを知ること。そこから意志が育つ。社会への感度が上がる高校時代に、経験を積むことが大事」と力を込める。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索