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高校生・大学生

<スタッフが聞く> ラッパー・環ROYさん

環ROYさん

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 ビートに合わせ、語るように歌うラップ音楽。今回、高校生スタッフらが話を聞いたのは、軟らかい日本語の歌詞が特徴のラッパー、環ROYさん。表現の枠を広げるため、日々、どのように言葉と向き合っているのだろうか。

 環さんがラップに出合ったのは十五歳の時。ラジオから流れてきた。最初の印象は「なんだこれ。かっこいい」。今まで聞いていた音楽とは全然違う。「むき出しになった表現が生々しいな、と」

 一九七〇年代にアメリカのニューヨークで生まれた、言葉をリズムに乗せる音楽のスタイル。ダンスやファッションとともにヒップホップの文化に含まれる。

 中学時代から、社会に対する怒りや不満があったという環さん。友達はいたが、常に心の中では「何かちげえな」という違和感を抱いていた。「どこへ行っても浮いていた。同調圧力に対し、あらがうことにエネルギーを使っていた」。とがった若者の心のよりどころになったのが、ラップだった。

 「思いを口にすればなくしてしまいそう 言葉はただの記録」「記憶をまとい散る無数の花びら」

 軟らかい日本語が印象に残る歌詞。どのように作っているのだろうか。スタッフが「メッセージを伝えるために言葉を選んでいるのですか」と尋ねると、環さんは鋭く切り返した。

 「メッセージって何? 質問をもっと掘り下げて。自分が何を聞きたいのか考えて」。相手が分かってくれると思って投げた言葉は、容赦なくはね返された。

環ROYさん(中)にインタビューする高校生スタッフら=中日新聞社で

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 凍り付く高校生をよそに環さんは言葉を継ぐ。「ぼくの仕事は混乱させること。演者やパフォーマーの役割って、世俗と異界を接続させることだから」

 話をする時、「どう言えば一番伝わるのかな」とひとりごちながら、一つ一つ言葉を選ぶ環さん。当たり前に使っている言葉の定義や、言葉で分類される物事は、一見、全ての人々の共通認識のように見える。だが環さんには「当たり前なんて一つもない」という強烈な信念がある。

 「『あなたのやっていることはラップですね』って共通認識があるから、人は速度を上げてコミュニケーションを取ることができる。もともとは何の境界もなかったものを言葉で分けることで、大多数の人の日々の暮らしは便利になる。だけど、それが便利じゃない人も少数いる。その少数を無視する暴力は、少なからずある。それを常に意識して世界と向かい合っていきたい」

 進路を決めることをせかす学校に不満があるというスタッフが、環さんの「社会に対する不満」について質問した。「今の社会は」と環さんは早口にまくし立てた。「早く働いて、どんどん生産して消費してってことを推奨するシステム。そのシステムは人の欲望で動いている。つまり俺らのこと」

 クリック一つで物が手に入る世の中。より早く成果を出すことが評価につながる社会。それを求めているのは社会を構成する私たち自身。でも、それは本当に自分たちが望む社会なのか。「自分たちの欲望をコントロールできていないことを、みんなで議論した方がいいんじゃないかって不満はあるかも。不満を生み出している源流まで行って、そこで向き合って出てくる言葉を歌詞にしたい」

 リズムに乗せる言葉に強いこだわりを見せた環さんに、スタッフの一人が再び、切り込んだ。「メッセージとは、人に思いを伝えることだと思います。最後に高校生へのメッセージをお願いします」

 環さんは少し考えてから、答えた。「場所や時代が変わるだけで物事の価値観は変わる。何かに失敗してもそんなに落ち込まないで」。言葉に対し真剣に向き合う姿は、一つの見方にとらわれずに考える大切さをスタッフたちに教えてくれた。

 (構成・大沢悠)

 <たまき・ろい> 1981年、仙台市生まれ。「なぎ」など5枚のアルバムを発表。国内外の音楽イベントに出演している。2014年には金沢市の金沢21世紀美術館で、パフォーマンス作品「いくつもの一緒」を発表。鎮座DOPENESSさんとラップグループ「KAKATO」を結成し、NHK・Eテレ「デザインあ」の歌を担当、8月にはラップ絵本「まいにちたのしい」(ブロンズ新社)を発表した。

◆スタッフ感想

 亀山 祥華(高1・岐阜市) 環さんの話を聞き、大多数の共通認識が少数に伝わらない時、そこで壁を作るのではなく、互いに調和できる着地点を探していくべきだと思った。

 中根 彩嘉(高1・名古屋市千種区) いろいろな方向から物事を見なくてはいけない。物事に対しての選択肢は二択ではない。この二つの言葉が特に心に残っている。環さんの生き方、考え方を参考にして暮らしたい。

 馬場 遥香(高2・愛知県一宮市) 環さんが、ラップを含めて何かをすることは「元々ある世界の中で少しずつ自分の知る領域を増やすことだ」と言っていたことが印象に残った。

 砂沢 祐太(高専4年・愛知県東郷町) 価値観は常に変化していて、自分が常識だと思っていることも、どこか別の場所や数年後には非常識かもしれない。大切なのは、いろんな角度から物事を考える力だと学んだ。

 

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