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高校生・大学生

「文学を軽視」懸念の声 高校・国語の新学習指導要領

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 高校国語の科目分けを巡り、研究者らが「文学が軽視される」などと懸念の声を上げている。二〇二二年度から本格実施される高校の新学習指導要領で、従来の選択科目にあった現代文と古典を再編し、「論理国語」や「文学国語」などの新しい科目にするためだ。「論理と文学を切り離すのは不可能」と訴えている。

 「国語は、世界の成り立ちを言葉を通して考えていく力を育てる学び。新学習指導要領では『社会に出て役に立つ』が優先され、あまりにも近視眼的だ」

 一日に東京都内で開かれた「国語教育の将来 新学習指導要領を問う」と題したシンポジウム。パネリストを務めた東京大大学院人文社会系研究科の安藤宏教授(61)は、論理国語や文学国語などの科目分けや狙いに疑問を投げかけた。

◆扱う文章を区分け

 新学習指導要領は、各科目で扱う文章を「文学的」「論理的」「実用的」の三つに区分。例えば論理国語には「論理的」で「実用的」な文章が含まれ、「小説、物語、詩などの文学的な文章を除いた文章」を使うように記されている。

 安藤教授は「文学の中にも論理的な文章はある。切り分けることは原理的に不可能」と指摘。夏目漱石の講演をまとめた「現代日本の開化」や小林秀雄の評論「無常という事」、谷崎潤一郎の随筆「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」を例に挙げた。

 日本近代文学会など十六の学会は十日、新学習指導要領に対する見解を発表。「『文学』を狭義の言語芸術に限定し、囲い込んでしまうことで、言葉によって新たな世界観を切り開いていく『人文知』が、今後の中・高等教育において軽視され、衰退しかねない」と懸念を示し、単位認定や教科書検定などで、「人文知」が軽視されないよう、柔軟な運用を訴えている。

高校の教員や大学教授、学生らが参加したシンポジウム=東京都港区の日本学術会議で

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◆論述、読解力が低下

 改定の狙いは何か。文部科学省初等中等教育局の大滝一登・視学官(54)は「各科目を通して、何ができるようになるのか、どのような資質・能力がつくのかを教員らに把握してもらうことに重点を置いている」と説明する。

 背景には、高校生の国語力低下への危機感がある。改定内容を話し合う文科相の諮問機関・中央教育審議会は一六年の答申で、「高校の国語教育は教材の読み取りが中心で、話し合いや論述などの学習が十分にできていない」と指摘した。

 一五年の学習到達度調査(PISA)では、前回より読解力の平均得点が低下。中教審の審議では、会員制交流サイト(SNS)の浸透で、短い文章のやりとりが日常的に行われる中、子どもたちが長文に接する機会が減っていることなどが指摘された。

 大滝さんは「大学側からは『リポートの書き方や論文のまとめ方を指導しないと満足に書けない大学生が多い。本当に国語の学びができているのか』という声を聞く。何を教えるかを意識せず、読書会のようになってしまっている授業もある」と話す。

 本質的な学びが脅かされることを心配する教育関係者と、目に見える力が身につくことを求める文科省。双方の思いはかみ合わないまま、新学習指導要領の本格実施を迎えることになりそうだ。

 (大沢悠)

 <論理国語と文学国語> 論理国語は、社会に必要な国語の知識を身に付け、文章や資料を検討しながら必要な情報を取り出したり、論理的、批判的に考えたりする力を養うことを目指す。説明文や批評文、論文といった論理的な文章のほか、報道や会議、裁判記録などの実用的な文章を使う。一方、文学国語は、近代以降の文学作品や演劇、映画などを扱い、共感したり創造的に考えたりする力を付ける。

 

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