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高校生・大学生

<スタッフが聞く> 「仕掛学」を提唱、松村真宏・大阪大教授

ブロックでできたアンケート用紙の回収機械。機械がアンケートを吸い込み、紙飛行機を折って回収箱へ飛ばす=大阪府豊中市の大阪大で

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 あれ、こんなところに足跡が…。どこに続いているのだろう。気付かないうちに、いざなわれていることはないだろうか。そんな「仕掛け」を研究する新しい学問分野「仕掛学」を提唱する大阪大の松村真宏教授。そもそも仕掛けって? 仕掛けによって世の中が良くなる? 高校生スタッフが、疑問をぶつけた。

 研究室の扉を開けるとバスケットゴールが付いたごみ箱や、ブロックのおもちゃでできた謎の機械、口を開けたライオンの顔などが目に飛び込む。「研究室じゃないみたい」。スタッフが部屋の中を見回す。

 もともとは人工知能(AI)の研究をしていた松村教授。二十八歳で方向転換を決めた。「AIは万能なイメージだけど、データがなかったら何もできない。道行く人が何を考えて、どこに行くかとかは分からない」。大学・大学院で九年間勉強して得た答えだった。「もともと競争が好きじゃない。誰もやっていないことだったら世界で一番になれる」。AIとは違ったアプローチで人間の行動を考える、新しい学問をつくることが頭に浮かんだ。

 そんな中、遊びに行った大阪市の天王寺動物園で見つけたのが、地上一メートルほどの高さに設けられた望遠鏡のような筒。説明が書いてあるわけでもないのに、自然と子どもたちが筒をのぞき込んでいた。「人間の行動はコンピューターに頼らなくても誘導できる」。社会にあるさまざまな「仕掛け」を探し始めた。

 仕掛学では仕掛けを三つの要件で定義する。「誰も不利益をかぶらない公平性」「行動がいざなわれる誘引性」「仕掛ける側と仕掛けられる側の目的が異なる目的の二重性」。例えば、松村教授が作ったバスケットゴールが付いたごみ箱は、「ごみの収集率を上げるため」に大阪大構内の広場に五週間置いた。学生は「面白そうだから」とごみを投げ入れる。三つの要件を満たした「仕掛け」となる。

 ただ、確かな理論はない。「結果は実験しないと分からない」。なぜなら一人でいる時と友達といる時など状況により人は反応が違う。天気や時間帯などの環境要因によっても変わる。「数式では表せない」

 小学校の先生を目指すスタッフが「教育現場で仕掛けを使うことはできるか」と質問した。小学生の娘を持つ松村教授は「自分は子どもに、問題の解き方を教えてもらう。人に教えるには勉強するから。子どもたちが自分で試験を作って解くとか、仕掛けっぽいかな」と教えてくれた。

 周りに流されず、独自の考えで新しい分野を切り開いてきた。「広く世の中に目を向け、何がはやっているのかな、十年後はどう変わっていくのかなと見るのが大事。長いスパンで考えることは大事」。うなずくスタッフに「人の言うことをうのみにしても良くない。流されないのも大事」とすかさず忠告した。

 仕掛学はどうなっていくだろう。「一般的な知識、教養になっていたらいいなと。今は、問題に対してルールや罰則を作るという外圧で行動を変えさせるアプローチが多い。自発的に行動を変えてもらおうとなった時に、仕掛学のノウハウを使ってもらえれば」。数十年後、仕掛学によるストレスフリーな社会が広がっているかもしれない。

 (構成・大沢悠)

 <まつむら・なおひろ> 1975年、大阪府生まれ。大阪大基礎工学部卒業、東京大大学院工学系研究科博士課程修了。スタンフォード大客員研究員など歴任。2017年から現職。著書に「仕掛学 人を動かすアイデアのつくり方」(東洋経済新報社)など。

バスケットゴールが付いたごみ箱を挟み、松村教授(右)に質問する高校生スタッフ=大阪府豊中市の大阪大で

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◆スタッフ感想

 池内 友音(高3・愛知県半田市) はやっているものは競争率が高く、30年後もはやっているとは限らない。社会の波に乗るのも乗らないのも正解だと自分自身で考えること、先を見ることを忘れないようにと喚起しているように感じた。

 久保 友悟(高2・名古屋市天白区) 「AIが解ける問題はデータがあるものだけ」との言葉に、「パソコンがあれば何でも解決できる」と考えていたのでとても驚いた。AIが解決できない課題を解決するのが仕掛学の魅力だと思った。

 岡田 芹奈(高2・名古屋市緑区) 「ナンバーワンかつオンリーワン」を目指しているように感じた。多くの人が集まるところに目を向けがちだが、先端事業を追いかけることだけが全てではないと知ることができ、とても新鮮だった。

 川本 由樹(高2・静岡県湖西市) 松村先生は20代後半になってから研究分野を変えたと聞き、何歳からでも自分の進みたい道に進めると実感した。私も先生のように自分しかしていないことをしてみたいと思った。

 ※学年は取材当時

 

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