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高校生・大学生

<by学生スタッフ> 子どもの貧困どう考える

あすのば代表の小河光治さん(中)の話を聞く学生スタッフ=東京都港区で

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 日本では、十八歳未満の七人に一人が貧困状態にあるといわれ、進学を諦めるケースも多い。公益財団法人「あすのば」(東京都港区)は、そうした子どもたちをさまざまな形で支援している。私たちはどう向き合えばいいのか、本当に必要な支援は何か。代表の小河(おがわ)光治さん(53)に学生スタッフが取材した。

 「本当に支援の必要なつらい人ほど、SOSを出せない。ましてや子どもは声を上げられない。大変な状況で孤立しているのに、とても深刻です」。小河さんは、自身の生い立ちやこれまで出会った人々の話から、実感を込めてそう語る。

 小河さんは愛知県小牧市で生まれ育った。八歳の誕生日に父親が交通事故にあい、植物状態に。家計は苦しくなり、母親が「夜逃げするか、ガス栓をひねって一家心中するしかないか」と口にしたこともあった。

 「なぜこんな目にあわなければならないんだ」。理不尽でやりきれない思いを抱いた。「親戚や先生に話しても解決しない」と、悲しみや苦しみを打ち明けられなかったという。

 中三の時に父親が亡くなるが、交通事故の遺児への奨学金制度で、東京の私立大に四年間通えた。「やりたいことができたのは本当にありがたかった」。その体験を基に「お金のせいで進路の選択肢が狭まることはなくしていくべきだ」と願う。卒業後は病気や災害などで親を亡くした子どもを支援する「あしなが育英会」に勤めた。

 二〇〇九年、厚生労働省が初めて「子どもの貧困率」を発表。平均的な所得の半分を下回る家庭で暮らす十八歳未満は14・2%、七人に一人だった。あしなが育英会で募金活動をしていた学生らが国に対策を訴え始め、一三年、議員立法の「子どもの貧困対策推進法」が成立。「学生たちの思いに一人の大人として突き動かされた」と小河さん。子どもを貧困から救うには、行政の制度拡充とともに民間の支援が必要と感じ、あすのばを一五年に創設した。

 あすのばでは、政策提言から、子ども食堂や学習支援教室などの中間支援、子ども同士の分かち合いのキャンプの運営、当事者への「入学・新生活応援給付金」の支給まで、幅広く活動している。子どもが困っていることに耳を傾ける「子ども委員会」を設置し、理事の半数は学生。子どもの視線を大切にしている。

 給付金は寄付で賄い、約二万人から一億一千万円ほどが集まる。昨年は二千八百人に三万〜六万円を渡すことができた。「自分のことをこれだけ多くの人が応援してくれていると子どもたちが実感し、新生活へのエールになれば」と小河さんは語る。

 今年で法律の施行から五年。最新の一五年で十八歳未満の貧困率は依然13・9%だ。「今も、本当はお金に困っていないのではないかとか、自己責任だとかバッシングは多く、困っている人がSOSを出せない状況を生んでいる」と憂う。学習の意欲が低い子どもに奨学金を渡すことに批判もあるが、「お金がなくて進学をあきらめている子に夢を与えることができる」と訴える。

 「あすのば」の「あす」には「us(私たち)」の意味も含まれているそうだ。子どもたちに「一人じゃない。私たちがついている」と伝え、同時に貧困問題は私たち一人一人が考えるべき問題だと社会に訴え掛けるためだという。「子どもは社会の宝であり私たちの未来を担う存在。社会全体の課題として問題意識を持つことが大切」

 小河さんは、大学生は子どもと「斜めの関係」を築ける貴重な存在という。「横」の同世代でも「縦」の大人でもなく、少し先を生きる大学生だからこそ、気軽に話せて子どもたちのロールモデルにもなりうる。「地域の子ども食堂や学習支援教室に顔を出し、たわいない会話をするだけでも子どもにとって大きな支えとなる」

 今年は統一地方選や参院選もある。「子どもの貧困対策に力を入れる政治家に一票を入れることも貧困撲滅に向けた大きな一歩になる」と助言した。

 (法政大一年・高橋克典、愛知県立大一年・坪井佑介)

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◆給付先の世帯はバイトで学費、生活費

 貧困の実態はどうなのか。あすのばは「入学・新生活応援給付金」を届けた世帯を対象に調査。保護者と子ども、計約千五百人の声を昨年六月にまとめた結果は深刻だ。

 86%の世帯が年間三百万円未満で暮らし、高校一年の三人に一人はバイトをしていた。高校・大学生のバイト代はスマートフォン・携帯代のほか学校の費用や家庭の生活費などに使われていた。

 高校・大学生の世代に、経済的な理由であきらめた経験を尋ねたところ、約五割が「洋服や靴などのおしゃれ用品」、約三割が「スマホや携帯」「塾に通うこと」「スポーツや習い事」と回答=表。若者の“日常”を我慢していた。

 改善策は、約八割が「教育や進学の費用負担を減らす」と答えた。「無料の学習支援など勉強を教えてくれる支援」「安心して暮らせる経済的な福祉制度」も多かった。

 貧困世帯が多様化していることも分かった。体調が悪くて親が満足に働けず生活保護を受ける家庭、非正規でダブルワークをしてもギリギリの生活を余儀なくされるシングルマザー世帯、二人親だが子どもが多くて支援の少ない家庭も。「家庭全体を支援していかなければ、子どもの貧困の根本的な解決につながらない」と小河さん。

 就学援助制度の利用は65%にとどまり、利用していない世帯の78%が利用法や制度を知らなかった。保護者の約六割が「支援の情報を分かりやすく届けてほしい、手続きを簡単にしてほしい」と望んでもいる。

 貧困に苦しむ子どもたちのために、必要な支援を充実させ情報を確実に届けることが求められる。

 (上智大短期大学部二年・平野朝陽)

◆支援届く社会に 法政大1年高橋克典さん

 本当に困っている人がいる、との言葉は重かった。多くの人は自分のことで精いっぱい。境遇の違いに知らぬふりをし「自己責任」で片付ける一因かと思う。子どもに何の罪があるのか。必要な支援が届きにくい居心地の悪い社会を変えたい。

◆考えを深めたい 愛知県立大1年坪井佑介さん

 以前から関心を持っていた子どもの貧困問題。取材を通し、もっと考えたいという思いが深まった。地域の子どもと接する、貧困に関するニュースに関心を向けるなど、自分を含め一人一人が社会の一員として向き合うべきだと思う。

 <学生スタッフ募集> 春から記者とともに企画から取材、原稿の執筆までを担う学生スタッフを募ります。学生や学校の今を伝えてみませんか。名前、学校名、自己PR、取材したいテーマを記入し、koudai@chunichi.co.jpまで応募してください。

 

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