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高校生・大学生

社会人講座、工夫いろいろ 大学「生き残り策」国も支援

温室を見学する農業系の社会人向けプログラムの受講者=愛知県豊橋市の豊橋技術科学大で

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 「人生百年時代」とされ、生涯教育や働く人のキャリアアップが注目される中、社会人が大学などで学び直す「リカレント教育」があらためて脚光を浴びている。大学は生き残りもかけて内容に工夫を凝らし、国も制度の見直しや費用補助などで後押しする。

◆豊橋技科大 地元支援で農業系充実

 二月初めの土曜、午前九時すぎ。国立の豊橋技術科学大(愛知県豊橋市)の教室で、農業経営学の講義が始まった。午後五時すぎまで熱心に聴講していたのは、二十〜六十代の社会人学生十四人。IT技術を使った土地利用型農業や植物工場について学んでいる。

 西山晴邦さん(40)は元会社員。農家を継ぐため約二年前に同県田原市に戻った。「時代が変わる中、親と同じ方法で農業を続けるのがいいのか。新たな知識を得たい」と通う。今は二週に一度の講義のほか、農作業の合間や夜にeラーニングの授業を受ける。「毎週リポートを出し、負担は大きいが、刺激もあり充実している」。講義をした竹谷裕之・名古屋大名誉教授は「社会人は経験や問題意識があり質問のレベルも高い。真剣勝負の授業」と話す。

 豊技大では従来、企業の技術者向け講習などを行ってきたが、三年前に社会連携推進センターを発足。今は国の支援も受け、学内外の講師陣で十三の「社会人向け実践教育プログラム」を開く。昨年度の受講者は計百九十二人で、五年前の三倍以上に。特に農業系の三プログラム(四カ月〜一年四カ月)は、地元の企業や自治体の支援もあり、三万〜五万円の破格値で実施。県外から来る人もいる。

 「少子化で学生数が減る中、リカレント教育は大学の生き残り策になる。地域への還元も重視し、人材を育てる事業に力を入れている」と井上隆信副学長。防災の担い手の育成を目指す「東三河防災カレッジ」も地域を意識した内容で、勤務先で災害時の対策を担う会社員加納弘恵さん(58)は「実際に役立つ知識が学べてためになる」と語った。

精神・発達障害者の生きづらさについて討論した日本福祉大の講義=名古屋市中村区で

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◆日本福祉大 通信制に力を入れる

 私学の日本福祉大(愛知県美浜町)は、二〇〇一年にネットを使った日本初の通信教育をスタート。一八年度の学生数は約七千三百人で、九割が社会人。通学の学生数五千四百人を超える。費用は基本授業料などのほか一単位ごとに五千四百円。対面の講義も土日完結型で全国各地で開く。

 一月の週末、名古屋駅近くであった講義では、約四十人の学生が精神・発達障害者の生きづらさについてグループ討論していた。「社会人の学生さんは熱心で、教室の前の方から席が埋まる」と担当教官。

 鳥取県から通う精神科病院職員の青木美紀さん(44)は、子育てしながら通信教育で精神保健福祉士の資格を取得。昨春に再入学し、今後は社会福祉研究のため大学院を目指す。社会人の学びは孤独で挫折しやすいというが「同じ分野に関心を持つ仲間とつながれて励みになる。学べる環境があって幸せ」と笑った。

 安倍政権は「人づくり革命」の一環で、リカレント教育を重視。文部科学省は社会人や企業のニーズに応じた教育内容を「職業実践力育成プログラム」に認定する制度を一五年度に始め、教育の機会拡大や企業の理解を促す。「費用が高い」「時間がない」といった社会人の悩みに合わせ、教育訓練給付金を一部で受けられるようにし、今年一月末にはプログラムの短期化も認めた。来年度の関連予算案に約九十三億円を計上するなど、一五年度に約四十九万人だったリカレント教育受講者の増加をねらう。

 井上副学長は「質の高いリカレント教育には、教員や費用の確保が欠かせない。地域貢献事業と考えるのか、ビジネスとして成り立たせるのか。国の手厚い支援を求めたい」と語った。

 (芦原千晶)

 

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