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高校生・大学生

<スタッフが聞く> ミュージシャン・悠々ホルンさん

子どもから寄せられた声をもとに作ったオリジナル曲「おかえり」を歌う悠々ホルンさん=名古屋市中区の中日新聞社で

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 親や友人、先生ら周りにいる人たちと、うまくコミュニケーションが取れず悩んだ時、音楽が支えになったという人は少なくないはず。家族との不和や不登校など自身の経験と、子どもたちから寄せられた相談を基に曲を作るミュージシャン悠々ホルンさん(32)に、高校生と大学生のスタッフが話を聞いた。

 ギターケースを手にした悠々さんが、スタッフの待つ部屋に入ると、拍手が起こった。車座になって囲むと、自己紹介を兼ね、これまでの道のりを語ってくれた。

 両親と三人暮らしの「ごく普通の家族」として過ごしていた。それが変化したのは小学二年。十四歳上の「姉」を名乗る女性が近所に引っ越してきた。その姉は出産を機に、毎日家に訪れるようになった。「この人は一体何なんだろう」。両親は「まるで昨日まで一緒に住んでいたかのように」迎え入れた。違和感があった。「両親は『姉』の親であって、本当は自分の親ではないのかもしれない」

 疑念にとらわれ、「家族の輪からはじき出されているかのよう」。父親からは「おまえはだめだ」などと存在を否定するような言葉をぶつけられ、家に居場所がないと感じるようになった。心の状態が影響してか、不眠や頭痛、腹痛、湿疹に悩まされた。せきが止まらなくなり、「症状がまた起きたら…」と学校へ行くことが苦痛になった。それでも学校以上に家にいるのがつらかった。「家にいるだけで発狂しそう」。追い詰められ「この苦しみから解放されたい。死ぬことで解放される」との思いが膨れ上がった。小学六年の時に自殺を試みた。

不登校や子どものサポートの方法について、悠々ホルンさんと意見を交わす高校生と大学生のスタッフ=名古屋市中区の中日新聞社で

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 命はつないだが、中学、高校に進んでも苦しみは変わらなかった。唯一、音楽に接している時は忘れることができた。高校三年の時、身体の症状が悪化。様子を察した先生から「休んでもいいんだよ」と声を掛けられ、夏休み明けから不登校に。音楽を聞き、作ることに没頭した。

 高校卒業後、作った音楽をインターネットのサイトに上げると、ほめてくれる人たちが現れた。自分の存在を受け入れてくれるように感じた。二〇一〇年からは「悠々ホルン」の名で活動を始めた。音楽を聴いた人から、悩みを打ち明けられることが増えた。それが今の活動につながる。

 一時間ほどの自己紹介が終わると、実際に子どもから聞いた話を基にした曲「おかえり」をアコースティックギターで弾き語りしてくれた。

 黙っていても そばにいればそれだけで 安心できる場所 帰りたいな 憎んでたこと 誰にも言えずにいたこと 荷物を降ろしたら 素直になれたら 時間を取り戻せるかな

 後半は、スタッフ十三人が一人ずつ質問した。

 福祉を学ぶスタッフが人を支援する方法について尋ねると、「誰が子どもを守るんだってなった時に、一番は親。でも苦しんでいる子どもと同じように、苦しんでいる親がたくさんいる」。苦しむ親が、余裕のない中で子どもを虐待してしまう状況があると指摘。心の余裕ができるよう、親を支援する必要性を説いた。「地域、国がどうサポートできるかも課題」

 教師を目指すスタッフは「子どもにどう声掛けをしたらいいのか」と相談。「同じ言葉でも言われる先生によって全然違う受け止め方になる。上っ面なことは生徒は感じ取る。信頼関係をつくる中で、ありのままの自分が出せたらベスト」と助言した。

 学校生活になじめず不登校になった経験やいじめられた体験を明かすスタッフも。

 「突然学校に行けなくなった子にどう接したらいいか」の質問には、「多くの人が疲れ、エネルギーが切れてしまっている」と教えてくれた。「少しでもその子のエネルギーがたまるように、一緒にお出かけするでもゲームをするでもいい」と勧めた。

 最後にこんな言葉を贈ってくれた。「人生はいくらでも変わる」。中学高校時代は「人生どうなってもいいや」と思っていた。しかし、家と学校以外の世界があることを知り捉え方が変わった。「いろんな人や価値観、場所があるんだって気付くほど、人生は考えてたものと違うんだなと。今がもし死ぬほどつらかったとしても、『人生って面白い』って感じる前に命が絶えてしまったら悲しいですよね」

 中学時代にいじめに遭い、不登校を経験し、親子関係でも悩んでいたスタッフが提案してくれた今回の取材。数日後にこんな感想が届いた。

 安心感の塊のような方でした。そんな方が味方でいてくれるのならリラックスして毎日過ごしていけるように思います。

 (構成・大沢悠)

 <ゆうゆうほるん> 1986年生まれ、千葉県在住。2010年に活動開始、10代の女子を中心に支持が広がる。子どもや親から家族関係やいじめ、虐待などの相談が手紙やメールで寄せられるように。自身の体験や寄せられた声を基に作った曲や、子どもの思いを代弁した動画などを動画投稿サイトYouTubeで公開。代表曲「おかえり」の視聴数は9万回を超える。「悠々ホルン」で検索。

 

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