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高校生・大学生

滝学園が「株式会社」の教育機関 教員と契約、クラブ活動も受託

平日の部活後に設けられている講座。物理では動画を見ながら波の動きを確認=愛知県江南市の滝教育研究所で

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 私立の進学校滝中学、高校を運営する滝学園(愛知県江南市)が、授業の枠にとらわれない学びを提供する教育機関「株式会社滝教育研究所」をつくり、学校と連動した本格的な実用化を進めている。2020年度の大学入試改革や、新学習指導要領などへの対応を視野に入れ、教員の働き方改革にもつなげる考えだ。

 「縦波は固体でも液体でも気体でも伝わる。授業でやったよ」。午後六時すぎ、名鉄江南駅から歩いて五分ほどの研究所で物理の講座が開かれ、同高校一年生の二十人ほどがプロジェクターに映された波の動きを見ながら、講師の声に耳を傾けていた。

 研究所では、学校の部活が終わった時間帯の平日午後六〜七時半、一こま九十分の講座を設ける。講師を務めるのは、主に同学園の教員。講座は前期、後期、通年があり、基礎から、大学レベルの高度な学びを意識した内容までさまざま。受講料は一こま三千円。同校の中三〜高三は好きな講座を選んで受講できる。

 同学園が、創立九十周年を迎えた一六年九月に設立した。きっかけは、授業時間外に学びたいと訴える生徒たちと、それに応えたいと考えた教員の声だった。放課後に学校で場を設けたこともあったが、部活と重なり、閉校時間も決まっていることなどから、生徒も教員も思うように参加できないという課題があった。

 「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」などが求められる二〇年度の大学入試改革や、「学びに向かう力、人間性」などを柱にした新指導要領も視野に入れる。

 国語を担当する安藤裕司教諭(28)は、古文の講座で情報通信技術(ICT)を活用し、大学の講義のように生徒に考えも発表させる。「いきなり、入試改革に合わせて授業を切り替えようとしてもできない。研究所は学校と違い、制約がない。実験的な取り組みができる」と話す。

 一方、働き方改革にも一役買う。学校で補習や講習をすると、長時間労働や時間外手当の問題にぶつかる。研究所は学園から講座の業務委託を受け、講座を持ちたい教員と契約を結び、講座数に応じて給料を支払う。物理の講座を持つ三輪篤教諭(43)は「通常業務より負担は増える。ただ好きでやっているので楽しい。新しいことにチャレンジしたい先生にとっては力が出せる場」ととらえる。

 一八年度からは休日のクラブ活動の業務も研究所が担う。同学園は、平日の活動時間を減らした上で、休日の活動を年間六十日までと決めた。それまでは九十日活動する教員もおり労働の実態が不透明だった。家庭の事情で定時に帰りたい教員もいれば、生徒により深く広く関わりたい教員もいる。研究所は生徒と教員の需要に合わせた仕組みとして動き始めている。

 中島政彦校長(66)は「働き方改革をする中で、教育の質が下がってはいけない。適正な労働時間で働き、きちんと休みを取ることで教職員が生き生きと働くことができる。そうでないと、子どもたちも生き生きしない」と教育の質の維持と働き方改革の推進の両立を掲げる。研究所の所長を務める田中秀幸・東京大教授(55)は「株式会社化は先進的な取り組み。学校と研究所が連携して新たな教育のあり方を提案し、実践することを期待したい」。県内の私学からの視察や県外での講演の依頼もあるという。

 名古屋大教育学部長の植田健男教授(63)は「教員の働き方改革は労働時間を減らすだけではない。授業も部活もと丸抱えし煩雑な作業に追われる現状を見直し、あらためて『教育とは何か』を考えていかなければいけない」と指摘した。

 (大沢悠)

 

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