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高校生・大学生

<スタッフが聞く> 伝説の「少年ジャンプ」編集者・鳥嶋和彦さん

鳥嶋和彦さん(中)に漫画編集について話を聞く高校生スタッフ=東京都千代田区で

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 子どもたちが熱中する作品を次々に生み出してきた「週刊少年ジャンプ」。とりわけ一九八〇〜九〇年代の黄金期を支えた伝説の編集者で、現在は白泉社会長の鳥嶋和彦さん(66)に、漫画好きを自負するスタッフが迫った。「学校はつまらない」「漫画は興味なかった」。歯に衣(きぬ)着せぬ言葉の裏にある哲学は。

 緊張した面持ちのスタッフが、椅子に座るやいなや矢継ぎ早に質問を浴びせられた。「名前は?」「得意科目、何?」「将来は?」。どぎまぎしながら返事をする高校生を、微笑を浮かべ見つめる。が、その目は鋭い。

 高校の頃は弁護士を目指していた。「大学一年で憲法の授業に出た時、『だめだ』と思った。全然面白くない。こんなの四年間勉強して、なおかつ一生こんなのやりたくないと思った」。そこで「何が人より優れているか」を書き出していった。最後に残った一つが「人より本をたくさん読んでいる」こと。本を書くか、本を作るか。「文章を書くには思いが強くないといけない。ぼくは嫌なことがあっても次の日天気がいいと忘れちゃうんだよね」。残ったのが編集者だった。

 大学卒業後、集英社に入社。「興味のなかった」ジャンプ編集部に配属された。資料室で漫画を読みあさり「読みやすい漫画」とは何かを考え続けた。担当についた漫画家は、その人となりを見抜き才能を引き出すことに尽くした。人を育てる時に大事なことは何だろう。「相手を好きになる。興味を持つこと」。スタッフが「でも本当に嫌いな子は…」とつぶやくと、「分かる。でも自分がどうしても嫌だって子にも友達はいるよね。その子に、あなたが嫌いな子のどこがいいのか聞いてみたら?」。

 例えば編集でも「好きな人を集めていい本が作れる? 好きな人と嫌いな人って何が違う? 好きな人だけだと自分と似た集まり。違う個性がないと広がりがなくなる。自分と違うものは意図的に入れていった方がいい」。

 その姿勢はジャンプ編集長時代も貫いた。「ONE PIECE」の連載を決める会議で、意見が割れ、三時間ほど議論した。「意見が割れるものは売れる」。鳥嶋さんは「かけた」。結果的に売り上げが低迷していたジャンプを救う大ヒットにつながった。

 どんな高校生だったのだろうか。「大学に入るまで人生が楽しくなくて。周りに話が合う人がいなかったの」。スタッフが尋ねると、こう返ってきた。「我慢して人と遊ぶのが嫌で。だからずっと本読んでたね。特に高校は最悪。授業が全部つまらない。東京に来て初めて自由に息をすることができたっていうのかな」

 十代の頃は一日に一冊本を読む本の虫だった。「高校生は感性が鋭い時期。いろんなものを見て、読んでおいた方がいい。財産になる」。話は「言葉」の役割にも及んだ。「言葉がなければ空想もできない。言葉の数がある人とない人では考える深さ、精度が違う。一つの刺激に対して君たちが言葉をどれだけたくさんもっているかで感じ方がほかの人と違ってくる」

 インターネットの発達や少子化、終身雇用制度の崩壊などで、「当たり前」と思っていた社会の姿が変わり始めている。「グローバルというのは聞こえがいいけど、境がなくなる。国籍とか無駄になる」。高校生はどうしたら…。

 「自分の頭で考えてほしい。世界で君一人の個性でなかったら君でいる意味がない。好きなものがあるなら、何で好きなんだろうと考え詰めてほしい。考えることをやめたら、そこから年を取るから」

 (構成・大沢悠)

 <とりしま・かずひこ> 1952年、新潟県生まれ。慶応大卒業後、76年、集英社に入社。週刊少年ジャンプ編集部で「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」を描いた鳥山明さん、「電影少女」などの桂正和さんら多くの漫画家を見いだし、80〜90年代の「黄金期」を支えた。96年から同誌編集長。「ボツ!」が口癖の「鬼の編集者」として有名。自身がモデルになった漫画のキャラ「Dr.マシリト」が愛称。2015年11月より白泉社社長。18年11月より同社会長。

◆スタッフ感想

 那須 優花(高1・岐阜県美濃市) 鳥嶋さんのような底なしの好奇心を持った大人になって、自分の経験を自信を持って話せるようになりたい。何かを始めたくて仕方がないような、わくわく感でいっぱいになったので、自分の興味にもっと貪欲になりたい。

 丹羽 彩樺(高3・愛知県一宮市) 最初は弁護士を目指していたが、合わないと感じ、自分ができることを考え、編集者の道を目指したと話していた。自分も目指しているものが違うと感じたら、思い切って方向を変えるのも一つの方法だと思った。

 奥村 樹(高1・名古屋市中川区) ジャンプ再興の戦略は興味深かった。子ども心を忘れていない人柄に、衝撃を受けた。鳥嶋さんが大切にしているものは「好奇心」であり、それは鳥嶋さんが、私たち高校生に大切にしてほしいと思っているものである。

 馬場 遥香(高1・愛知県一宮市) 高校生と同じ目線で話してくれていると感じた。周りにいる大人とは違う。「ワンピース」をジャンプに取り入れたエピソードを交えて教えてくれた「自分と違うものは積極的に取り入れる」という言葉が印象に残っている。

 

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