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高校生・大学生

<スタッフが聞く> 絵本作家・みやこしあきこさん

みやこしあきこさん(左)に絵本の成り立ちを聞く高校生スタッフ=東京都渋谷区で

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 ひとたびページをめくると、現実とは違う世界へ連れていってくれる絵本。小さい頃、夢中になって読んだ記憶がある人も多いはず。絵本に思い入れのある高校生スタッフが、海外でも作品が出版される絵本作家のみやこしあきこさんに話を聞いた。

 都内の静かな住宅街にあるアトリエを訪れると、窓際の仕事机の上にある一枚の白黒の絵が目に入った。「個展で使う絵です。木炭で描きました」。広い野原にウサギが二匹たたずみ、足元からは長い影が伸びる。野原の先には空が広がる。写真のような緻密な原画を前に息をのむスタッフ。「色が付いているみたい」。一人のスタッフがつぶやくと、周りもうなずいた。

 物語は一枚の絵から紡ぎ出されることが多い。「関係ない絵から、『次はこういう絵本を作ろうか』という感じ。場面場面のアイデアからストーリーにする。絵が先にある」。スタッフが、物語をひらめく瞬間を尋ねると、独特の間合いを取ってこう返ってきた。

 机の周りに飾られた絵は、写実的な風景の中で擬人化された動物たちが暮らす様子が描かれる。「風景は、旅行先で見たものの中で後で浮き上がってきたシーン、記憶に残っている場面」。これまでにヨーロッパやインド、アメリカなどを旅して回った。最新作「ぼくのたび」にも、旅で出合った場面が登場する。

 自分の記憶に残っている風景と、映画の一場面を組み合わせることもある。「なるべくリアリティーのある世界にして、『本当にこういう世界があるんじゃないか』と見た人が想像できるように描いています。細かい所もいいかげんにしないで、『この世界ではこうなっている』と作り込む。絵を描く上で楽しいポイント」。季節や時間帯、天気を細かく決め、頭の中に浮かんだ情景を描き出し、一枚の絵を生みだす。

 小さい頃から絵を描くのが好きだったと話す。絵を描くことが仕事になった今、「趣味で絵を描くことはあるのか」とスタッフが尋ねた。「境がない。絵を描くのが仕事って感じでもないし、遊びって感じでもない」。こう続けた。「絵本作家って最高だよ。好きなことを純粋に追求できる。毎朝起きて、何描こうか考える」

 将来、デザインの道に進むことを考えているスタッフからは切実な質問が飛び出た。「どうやって大学を決めたのか」。小学生時代、絵を描いては友だちに送っていたみやこしさん。「自分の好きなこと、得意なことができるから」と美大へ進むことを決め、高二の夏期講習から美術系の予備校に通い始めた。

 絵本作家という職業を意識したのは偶然の出合いだった。高校三年生の時、書店でたまたま立ち読みした「よあけ」という絵本に心ひかれた。ポーランド生まれの作家ユリー・シュルビッツの作品で、日本では一九七七年に初版が出た。

 「絵と文があり、ページをめくっていく。絵本ならではの表現に、映像でもなく、小説でもない良さがある」。何十年も読み継がれている作品が今も本屋に並び、めくるたびに幼い頃に感じた気持ちを呼び起こす力に「絵本の普遍的な良さ」を感じた。

 みやこしさんの作品は現在、英語やフランス語、スウェーデン語に翻訳され、世界中の子どもや大人の心を捉える。「自分の好きなことを深く追求してほしい」。「絵が好き」という直感に従い、絵本の道に進んだみやこしさん。その言葉がスタッフの背中を未来へ後押しした。

 (構成・大沢悠)

「ぼくのたび」一場面。みやこしさんが南ドイツを旅した時に出合った情景から生まれた(ブロンズ新社提供)

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 <みやこし・あきこ> 1982年埼玉県生まれ。武蔵野美術大卒業。在学中から絵本を描き始める。2009年「たいふうがくる」(BL出版)で第25回「日産童話と絵本のグランプリ」大賞を受賞し絵本作家となる。12年「もりのおくのおちゃかいへ」(偕成社)で第17回日本絵本賞大賞。「よるのかえりみち」(偕成社)でボローニャ・ラガッツィ賞特別賞など。最新作「ぼくのたび」(ブロンズ新社)を今月発表。

◆スタッフ感想

 望月 良輔(高1・名古屋市名東区) 「絵を描くということが『仕事』だという意識はあまりない」と言っていました。高校生のうちに自分の「好き」なことを見つけ、それを「仕事」につなげるための勉強の大切さを感じた。

 伊藤 志織(高3・名古屋市中川区) 「自分が描きたいものを描いている」と聞いた時、だからメッセージ性があって温かみのある絵が本になっているんだと納得した。好きなことを仕事にするには、ほれこみ突き詰めてこそ成立するのだと感じた。

 棚橋 実千瑠(高2・岐阜市) 私たちの目線を理解しようとしながら話をしてくれた。だから優しさで包み込むような絵本ができるのだと納得した。何年たっても自信を持って自分の仕事の良さを下の世代に伝えられる大人になりたいと思った。

 岩田 浩空(高2・名古屋市名東区) 本離れが叫ばれる中、絵本には未来があると思った。「絵本の普遍的な良さ」は、実際に手に取って読んでみないと分からない。本を読む機会が減った人にも、まずは絵本の世界に触れてほしいと強く思った。

 

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