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高校生・大学生

つながり育む校内カフェ NPOが「居場所」を開設

ボランティアの大人とゲームをする高校生。たわいもない会話の中で信頼関係が生まれる=横浜市青葉区の田奈高で

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 高校を中途退学したり、卒業後に就職ができなかったりして、社会との接点が切れてしまう−。そんな若者を減らそうと、NPOなどが校内に生徒の「居場所」をつくる動きが広がっている。横浜市の県立田奈高校では毎週木曜日、図書室が「カフェ」に変身。大人が生徒の抱える課題に気付き、手だてを講じる場にもなっている。

 昼休みのチャイムが鳴ると生徒が次々と図書室に集まってきた。中央の机には菓子や飲み物、インスタントみそ汁が並ぶ。「今日はクッキーばっかりだね」。生徒がおしゃべりをしながら菓子に手を伸ばした。

 田奈高は二〇〇九年度、神奈川県のクリエイティブスクール(CS)に指定された。CSは入試に学力試験がなく、面接と各校が定めるスピーチなどの検査を受ける。県教育委員会は「中学時代に十分に力を発揮できなかった生徒を受け入れる学校」と説明する。

◆有志の大人も参加

 居場所カフェ「ぴっかりカフェ」は一四年、横浜市で若者支援に取り組むNPO法人パノラマと同校が協力して開いた。就職や進路の決定がうまくいかない生徒も多く、同校は「学校だけでは無理。いろいろな支援のチャンネルが必要だ」と考えていた。カフェにはパノラマのスタッフ二人と学校司書の松田ユリ子さん(58)が常駐。着付けのできる女性や地元企業の社長、アナログゲームに詳しい男性らボランティアも参加する。生徒は友達とふざけ合ったり、一人で本を読んだり、自分の部屋にいるようにくつろぐ。三年生の男子は「ここが憩いの場だよ」とソファに寝っ転がりながらつぶやいた。

◆文化的経験重ねる

 生活保護の家庭や親が病気の家庭も少なくないという。誕生日を祝ってもらったことがない生徒もいる。ここではボードゲームやミルでコーヒー豆をひくなど初めての経験が多い。パノラマ代表の石井正宏さん(49)は「経験の少なさが劣等感になる。文化的な経験から漏れている子が多い」と指摘。ささやかな経験でも重ねることで、他人とつながる「フック」を増やす。それが人間関係を豊かにすると石井さんは考える。

ぴっかりカフェに集まる高校生とボランティア。石井さん(右から3番目)はカフェ内をぶらぶらする=横浜市青葉区の田奈高で

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 利用する生徒は一日に約百五十人。次第にスタッフらと信頼関係が生まれ、自分の問題を打ち明けることも。「カフェは子どもたちの課題を発見する場になっている」と松田さん。終了後の振り返りでは教員らと生徒の課題を共有し、必要があれば児童相談所や病院などの専門機関につなぐ。

 文部科学省によると、今春の高校卒業生のうち、進学者や就職者を除いた人数は五万二千九百三十七人で、この一部に「進路未決定者」も含まれる。ひきこもり支援の経験がある石井さんは「若い時に社会と切れないようにする予防支援が大事」と強調。同校では、生徒が有給で地元企業の研修を受け、企業が認めれば卒業後に正社員になる「バイターン」の仕組みもある。

◆社会で生きる力を

 校内に居場所をつくる取り組みは北海道や大阪、静岡など三十校ほどに広がる。北海道で「校内居場所」を設け、中退防止や就労支援をするさっぽろ青少年女性活動協会の松田考さん(43)は「地域住民らが関わるコミュニティ・スクールも含め、『学校だけで生徒を育てようとしなくていい』という考えが社会に定着してきたのでは」と言う。

一歩入るとカラフルな本が目に飛び込んでくる「ぴっかり図書館」=横浜市青葉区の田奈高で

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 愛知県でも名古屋市内で九月、石井さんらを招いた講演会があり、県内の高校教員ら六十人が参加した。主催者で、若者の相談支援に取り組む「草の根ささえあいプロジェクト」(名古屋市)の上原悦子さん(40)は「生きづらさを抱える子は多い。田奈高のような取り組みができたら、子どもに社会で生きる力が身につくのではないか。広がってほしい」と期待を寄せる。

 (大沢悠)

 

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