トップ > 特集・連載 > 高校生・大学生 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

高校生・大学生

<スタッフが聞く> パティシエ・辻口博啓さん

辻口博啓さん(左)に質問をする高校生スタッフ=東京都目黒区で

写真

 みんなには「夢」があるだろうか。受験や進学、就職と選択を迫られる場面が多い高校生活を送るスタッフが今回迫ったのは、パティシエの辻口博啓さん。洋菓子職人を目指し、十八歳で故郷の石川県から上京、東京や三重で人気店を営む辻口さんを後押しした「夢の力」とは何だろうか。

 辻口さんが洋菓子職人を目指したのは小学三年生の時。友達の家で食べたショートケーキの味が忘れられなかった。「人を感動させるスイーツを作りたいと思った。授業中は勉強せずに、ケーキのデザインを描いたり、お店のレイアウトを描いたり。そんなことをしている少年だった」

 二〇一五年に放送されたNHK連続テレビ小説「まれ」では製菓指導を担当。物語は自身の半生と重なる部分も多い。主人公の希(まれ)は夢が嫌いな女の子。夢を追い掛けて家を出た父親のせいで、家族の生活は困窮していた。けれどパティシエになるという夢が芽生え、いったんは就職した市役所を辞め、横浜のフランス菓子店で修業に励む。

 「希のお父さんが失踪していたでしょ。うちのお父さんも十四年くらい失踪していた」。父親が知人の借金の保証人になり、実家の和菓子店は家とともに銀行管理に。東京へ修業に出ていた十八歳の辻口さんは母親に呼び戻され、初任給が高い地元のかまぼこ店への就職を提案された。悩んだ時に背中を押したのが「夢の力」だった。「自分は感動を与えられるケーキ屋さんになりたいって思ったんだ、と強く感じた。母に言いました。家はないけど、東京に出て修業したいと。三年で一人前になるからと」。アルバイトでためたお金で、布団と片道切符を買い、再び東京へ向かった。

 スタッフが「修業時代に苦労したことは」と尋ねると、こんな答えが。「トイレ掃除とかごみ出しとか菓子作りとは関係のないことをやらされて、いつになったらお菓子を作らせてくれるんだろうと悩んだ。けど、そういう体験をしていなかったら、お店を一からつくるオーナーシェフにはなれなかったんじゃないかな」。そして「その時は先が見えなかったけど、我慢して仕事をして本当に良かったなと思う」と続けた。

 常に自身の仕事に疑問を持ち、新しいお菓子を作り続ける。地域特産の食材を使った菓子作りもその一つ。三重県菰野町の温泉施設内に展開する洋菓子店「コンフィチュールアッシュ」では、町の特産品マコモダケを使ったパウンドケーキを作ったこともある。「そこでしか採れない自然の大切な恵みがある。ちゃんと使うことで付加価値が付く。その場所に行ったら、そこでしか採れないものを食べたいと思うじゃない」

 砂糖を使わないチョコレートを使ったケーキも開発した。食生活の欧米化で、国内で増えている糖尿病の人たちが血糖値を気にせず食べられる。「死ぬまでお菓子に感動できるような世の中をつくっていきたい」

 地産地消は地方に人を呼び込み、病気への配慮は患者さんを和ませる。そうして「世界中の人を笑顔にするお菓子を作ること」が、辻口さんの夢だ。最後に、高校生の背中を押す言葉を贈ってくれた。「自分がどうなりたいのか、大いなる夢を持って。一文無しでも、志と夢と行動力があればなんとかなる。ぼくは東京へ出る時、『店なんか持てるわけがない』と周りから言われた。どう思われようが、自分が思い描いた夢は大きければ大きいほどいい。そういう生き方をしてもらいたい」

 (構成・大沢悠)

 <つじぐち・ひろのぶ> 1967年、石川県七尾市で和菓子店「紅屋」の長男として生まれる。高校卒業後、上京。国内最大級の大会「全国洋菓子技術コンテスト大会」で史上最年少の23歳で優勝。世界的に有名な大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」あめ細工部門で最年少記録の29歳で優勝。1998年、東京・自由が丘に「モンサンクレール」を開く。

◆スタッフ感想

 村田 結子(高2・愛知県春日井市) 辻口さんに「あなたの夢は何?」と聞かれた。辻口さんは「夢の力」でつらい時も乗り切れたと話していた。私も辻口さんのように夢のために頑張って胸を張って夢を語れる人になりたいと思った。

 黒田 桃花(高3・名古屋市千種区) 美術や伝統文化を学び、日本がどのように世界に映っているのかを知ることは、お菓子作りのヒントになっているという。自分には関係がないと思っていることでも、今後の人生においてヒントになり得るのだと感じた。

 大津 桃花(高3・愛知県稲沢市) 修業時代の話を聞き、自分の夢とは関係のないことかもしれないと思っても、全てはつながっているのだと思った。「仕事が大好き」という思いがひしひしと伝わり、夢が持つ無限大の力を感じた。

 大山 祐輝(高2・愛知県岡崎市) 「ケーキ作りは人生の縮図」と話していた。慣れてしまえば単純作業でも、常に疑問を持つことで、より良い物を作ることができるという。そのような思いが込められているので、人を感動させるケーキができるのだと思った。

 

この記事を印刷する

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索