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高校生・大学生

<疲弊する大学教員>(下)原因と対策 学生確保で業務雪だるま

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 多くの大学教員が業務に忙殺され過労に陥っている問題。今回は私立大の状況を紹介し、多忙化に拍車がかかる最近の背景と、対策について考える。

 「春からオープンキャンパス、秋からは入試業務にも駆り出され、週末の休みがつぶれていく。週十こまの授業があり、平日の代休も取れない」。愛知県内の私立大に勤める四十代の理系の教授は、苦笑いしながらつぶやいた。

 十八歳人口が減少する時代、特に私立大はブランド力や競争力を高めて学生を確保しようと躍起だ。一人でも多く集めようと、入試の回数を増やし、その方法も多様になった。「AO、推薦、一般入試など年に十五回はある」と教授。入試問題の作成や監督などの業務を負わされ、教員の負担は増加。大学をPRする出前授業なども課されているという。

 学生へのサービスも欠かせない。多くの大学が担任制を導入し「面倒見の良さ」を掲げる。「今の大学生は、頻繁に相談に来る。勉強の質問はもちろん、バイト、友人関係、下宿のこと…。メンタルの弱い学生も増え、ケアしないと退学や不登校につながりかねない。夜に保護者に電話して状況を伝えるのも仕事。授業料未納の連絡もしますよ」。教育と運営業務だけで、週の労働時間は四十時間を超えるという。

 別の私立大の文系の准教授(38)は「最近は地域貢献も求められ、さらに時間が取られる。研究して論文を書く時間はなく、不慣れな仕事がどんどん増え、体調を崩す先生もいる」。

◆収入減で人件費抑制

 教員の業務量が増える背景には、お金の事情もある。授業料が収入の大半を占める私立大では、学生数の減少が経営に響く。国立大の場合は、運営の根幹を支える国からの運営費交付金が十四年間で約千四百億円減らされてきた。収入減を、教職員の人件費を抑えてカバーする大学は多い。

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 実際、地方の国立大の准教授(42)は「定年で退職した教員を補っておらず、学科の教員数がこの十年で八割弱になった」と明かす。「格段に増えた運営業務をいかに減らすかが課題。教員一人あたりの授業数や学生数も増え、倒れた先生もいる。どう自衛するか仲間と話し合っている」

 国の科学技術・学術政策研究所の調べでも、大学教員の業務のうち、運営や社会貢献が占める割合がこの間、国公私立、分野を問わず増えている=グラフ(左)。研究の時間を増やす有効策として、教員は大学運営業務や学内の事務手続きの効率化、教育専任教員や事務職員の確保などを回答している=円グラフ。

◆入試監督は外部委託

 運営業務を減らす試みもある。近畿大は全国で入試を実施し監督業務は教員を派遣して行っていたが、二年前から外部委託を始めた。今秋からの入試では教員約三百人の負担を減らす予定。今年から高校訪問の担当を教員から職員に切り替えた関西の私立大もある。しかし関係者の多くは「業務量を減らすには教職員の数を増やせばいいが、お金がない今は本当に難しい」とする。

 大学の運営や実情に詳しい本間政雄・大学マネジメント研究会長(70)は「少子化で大学経営は厳しさを増す一方、入試改革やグローバル人材の育成など大学の課題は多い。その中で教員の仕事は増え、多様化している」と指摘。「限られた経営資源を効率的、効果的に配分するなど、大学経営の責任を持つ理事長や学長のマネジメント力が問われている。事務職員の能力を高めるとともに、企業や行政から多様な専門人材を登用し、教員が教育・研究に専念できるようにしないと、大学の教育力も研究力も低下してしまう」

 (芦原千晶)

 

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