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舌はないけど

(42)仲間とお遍路 夢が実現 無理せず歩く

 今、四国八十八カ所のお遍路に挑戦しています。

 一回目は、昨年十二月の初め。一番札所・霊山寺(徳島県鳴門市)を始まりに、十一番札所の藤井寺(同県吉野川市)まで約四十キロを二日間で踏破しました。

那津さん(右)とお遍路の幸せな時間=1月31日、徳島市の16番札所・観音寺で

写真

 二回目は先週末の二泊三日。体力的に難しい部分はレンタカーに頼りましたが、二十三番の薬王寺(同県美波町)まで。徳島県内の霊場をすべて回ったことになります。

 道連れは、名古屋市在住で四歳年下の加藤那津さん。私と同様にステージ4のがん患者さんで、抗がん剤治療中ですが、運動嫌いの私と違って登山やマラソンの経験者です。互いに無理はしないことを約束して、挑戦をスタートさせました。

 ひたすら歩く道中は頭がからっぽになり、山や川、道ばたに咲く花に癒やされ、地元の方にミカンをいただくなどして、幸せな気持ちで巡礼しています。那津さんとの体力差は歴然で、初回の四番札所のあたりから私は脚が痛くなり、必死に付いて歩きました。

 でも、それがつらくありません。一時はあきらめていた目標を実現できたことがうれしくて、その日の宿坊で、脚に湿布をはりながら「本当にお遍路に来たんだ、夢みたい」とつぶやきました。

 八十八カ所を回ったら(結願と言います)、その後、和歌山県の高野山にお礼参りをする習わしがあります。お寺巡りが趣味の私にとって、それは長年のあこがれでした。がんになり、舌を失って食べることに障害が出て、手術後しばらくは旅行すらあきらめていました。リハビリのかいあって、外食ができるようになり、退職して時間の余裕ができ、旅行と食事という共通の趣味を持つ那津さんに出会えたことで、実現できました。

 屋久島が大好きで、屋久杉にパワーをもらうという那津さん。五番札所で出会った大イチョウに感激し、満面の笑みで抱きついていました。行程の立案もすべてやってくれて、本当に頼もしい相棒です。

 病気だからとあきらめず、上手にがんと付き合って、無理せず楽しく、やりたいことをやっていく。この経験がこれからの闘病に向き合う自信にもつながっています。今年中に、那津さんと一緒に、お礼参りに行きたいと思います。その時にどんな気持ちになるのか、今からワクワクしています。(荒井里奈)

 

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